記事一覧:連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』98

  • 第三章 破綻前夜[第38回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第三章 破綻前夜[第38回]

    2016年08月06日号  

    鷲津の無茶な提案が飛び出しても、前島はすぐには答えずステーキを口に運んでいる。「違法ではないですが、難しくはあります」「最大の障害はなんだ?」「政府の後押しで首都電が回している奉加帳の対象は、首都電と取引のある銀行に限られています」つまり、部外者の参入を認めていないわけだな。「だが、拒絶もしていない」「と、思います」「政彦、サムライ・キャピタルが緊急融資に名乗り出たら、メディアが即行で鷲津、首都電買収かって騒ぐわよ」リンの懸念など承知の上だ。

  • 第三章 破綻前夜[第37回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第三章 破綻前夜[第37回]

    2016年07月30日号  

    奥日光・中禅寺湖の夕日に誘われて松平貴子は、中禅寺湖ミカドホテルの支配人室から湖畔に向かった。大地震発生時には、東京の六本木ヒルズで大きな揺れに遭遇した。その混乱の中でなんとか日光に戻ってきたのは、一三日の夜だった。

  • 第三章 破綻前夜[第36回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第三章 破綻前夜[第36回]

    2016年07月23日号  

    原子炉建屋が白煙を上げて爆発する様子が、大モニターに映し出された。さらに、別の建屋が爆発して破壊される瞬間も映し出された。実際には、連続して起きたわけではなく、二つの爆発には、二日の時間差がある。「既に、事故の発生から五日も経とうとしている。なのに、日本政府からも、あなた方からも、事故の詳細や原因、さらには収束の目処についても一切の情報がない」ベトナム政府の原子力開発担当補佐官となったチェットは、怒りを隠そうともしない。

  • 第三章 破綻前夜[第35回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第三章 破綻前夜[第35回]

    2016年07月16日号  

    朝食を済ませると、鷲津は日課の散歩にでかけた。サム・キャンベルが屋久島に自宅を構えたのに合わせて、鷲津も屋久島に別荘を所有した。これまでは年に数日滞在する程度の利用だったが、今回ばかりは長期滞在となりそうだ。本土と異なる南国の風に当たり、体まで青く染まりそうな海を眺めていると、同じ日本の地で悲惨な震災と甚大な原子力発電所事故が起きていることすら忘れてしまいそうだった。

  • 第二章 運命の日[第34回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第34回]

    2016年07月09日号  

    バッテリーが接続できたことで、一部の計器が復旧したという報告が各管理棟から相次ぎ、免震重要棟内にも活気が戻ってきた。串村所長の不穏な話で動揺していた秀樹も、ようやく落ち着きを取り戻した。「三号機の中央制御室で一部の計器に通電」「一号機、バッテリーが復旧して、格納容器内の圧力計が作動!」串村から渡されたICレコーダーに状況をしっかり記録するため、秀樹は耳にした情報をすべて復唱していた。

  • 第二章 運命の日[第33回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第33回]

    2016年07月02日号  

    官邸地下の危機管理センターでは、原子力安全委員会の藤倉達之助(ふじくら・たつのすけ)委員長の事故分析と解説が続いていた。原子力の専門家ではあるが、実務的な経験がなく、原発事故への対応について詳しいとは思えない。にもかかわらず、役職としては政府の事故対応に適切なアドバイスをする立場にある。

  • 第二章 運命の日[第32回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第32回]

    2016年06月25日号  

    電源車による電力供給は不可能という事態が明らかになって、免震重要棟内の所員の我慢が限界を超えた。誰もが苛立ち、浮き足立っている。

  • 第二章 運命の日[第31回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第31回]

    2016年06月18日号  

    総理秘書官室では、地下の危機管理センターから戻った湯河を、首都電力原子力発電所本部管理部長の森上が待ち受けていた。 「電源車の到着で、事態は収拾しましたか」 「ちょっと別室で話せませんか」 顔つきだけで、ろくでもない話だと推測できた。

  • 第二章 運命の日[第30回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第30回]

    2016年06月11日号  

    免震重要棟内の緊急対策室は静寂に包まれていた。秀樹がブタの鼻の確認から戻ってから、約三時間が経過していた。当初は、緊迫した指示と報告が飛び交っていた室内も、手を尽くし、後は結果を待つしかない状況になっている。そして沈黙が多くなった。

  • 第二章 運命の日[第29回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第29回]

    2016年06月04日号  

    枯淡楼には、太平洋を一望できる露天風呂がある。鷲津は久しぶりに、その贅沢を一人で味わっていた。海風が強く肌寒かったが、岩風呂に体を沈めると、すぐに血行が良くなった。長旅の疲れと地震による緊張が徐々にほぐれていく。しばらく目を閉じ、頭と体が弛緩するに任せた。頬を撫でる冷たい風も心地良い。

  • 第二章 運命の日[第28回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第28回]

    2016年05月28日号  

    秀樹が報告する間、精神を集中させるためか能登は目を閉じていた。 「そうか、良かった……。本当に良かった。郷浦君、谷原、ご苦労さん」 「お役に立てて嬉しいです」 能登と目が合った瞬間、秀樹は大事な使命を全うした充実感を覚えた。ただ、一つ小さな蟠(わだかま)りがある。それを伝えるべきか迷いながら、結局は口に出せなかった。

  • 第二章 運命の日[第27回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第27回]

    2016年05月21日号  

    鷲津が熱海の旅館・枯淡楼に到着したのは、午後六時頃だった。建設されたのは戦前で、当初は旧財閥の迎賓館だった。戦後は旅館として利用され、バブル経済崩壊後に鷲津が購入した。施設の半分は従来通りの旅館業を続け、残りを自身の隠れ家的施設として利用していた。

  • 第二章 運命の日[第26回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第26回]

    2016年05月14日号  

    超満員のエレベーターから吐き出されて、貴子はようやく六本木ヒルズの一階に降り立った。建物は最新の免震構造が施されているらしいが、おかげで長時間揺れ続けたせいで、船酔いのような不快さがある。自家発電システムが作動したので停電はすぐに解消されたが、最上階にいた貴子がエレベーターに乗り込むまでには、長時間待たされた。しかも、我先に逃げようとする人のせいで、エレベーターホールは息もできないほどのすし詰め状態だった。

  • 第二章 運命の日[第25回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第25回]

    2016年04月30日号  

    携帯電話に着信があった。見ると、相手は東京本社社会部長とある。「越智(おち)だ。所長がSBOは収拾できると明言している根拠に心当たりはないのか」まず、記者の安否確認だろとは思ったが、北村は素直に応じた。

  • 第二章 運命の日[第24回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第24回]

    2016年04月23日号  

    串村所長は構外に急ぐ人の流れに逆らうように免震重要棟に向かっていた。彼に続く秀樹は、辺りが妙に静かなのに気づいた。一時(いっとき)鳴り響いていたサイレンがやんでいた。それに、すれ違う従業員の誰もが口をつぐんでいる。停電のせいだろうか。

  • 第二章 運命の日[第23回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第23回]

    2016年04月16日号  

    管理棟内は薄暗かった。地震の影響で停電したため、非常用電源の一部を利用して、最小限の明かりを灯しているからだ。ロビーに散乱している書類や横倒しになっている棚などに気をつけながら、秀樹は恐る恐る廊下を進んだ。

  • 第二章 運命の日[第22回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第22回]

    2016年04月09日号  

    Jファームからイチアイ(1I、首都電力磐前第一原子力発電所)までは、二〇キロ足らずの距離だ。国道を北上した秀樹は、周囲の様子に気を配りながら、法定速度内で車を走らせた。道路や周辺に、地震による被害は見られない。交通量も普段と変わらない。民家から屋外に出て雑談をしている住民の姿は見えるが、さして緊迫感があるようには見えない。相変わらずラジオでは津波に警戒するように連呼している。

  • 第二章 運命の日[第21回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第21回]

    2016年04月02日号  

    揺れが落ち着いたので、鷲津は社用車に乗り込んだ。特別仕様のエルグランドは、リムジン並みの乗り心地に改良されており、モニターやワイファイ機能も装備してある。首都高速道路は通行止めになっていた。車載テレビで、地震の状況を眺めていた鷲津は、熱海に向かうよう運転手に命じた。そこには所有する温泉宿がある。

  • 第二章 運命の日[第20回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第20回]

    2016年03月26日号  

    あかねの左足がインステップで蹴り上げたボールは、三人の“壁”の頭上を軽やかに越え、ゴールの右コーナーに突き刺さった。秀樹は、目の当たりにした見事なシュートに素直に感動した。ボールがゴールネットを揺らした衝撃のせいか、前で撮影していたカメラマンがよろめいた。どんだけ凄いんだ、あかねのシュートは。そう思った矢先、体のバランスが崩れた。地面が揺れている。地震?

  • 第二章 運命の日[第19回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第19回]

    2016年03月19日号  

    「相談というのはだね、貴子ちゃんにもその審議会のメンバーに入って欲しいんだ」向坂は軽口のように振ってきたが、大変な依頼だった。「ご冗談を」「この審議会には、世界の観光事情を熟知している君のような若者が不可欠なんだよ」

タブレット・スマートフォンでも誌面がそのまま読める
週刊ダイヤモンド電子版も好評発売中!

週刊ダイヤモンド 特別セミナーのご案内

記者の目

  • 編集部 宮原啓彰

    不惑を迎えた友人たちの「焦り」

     今年、不惑を迎えましたが、この2〜3年、同年代の友人で持ち家を持たない人たちが、駆け込むようにマイホーム購入へ動きだしました。できれば30代のうちに、という焦り(?)が背中を押したようです。
     共働き世帯が大半を占めるため、希望は「職住近接」物件。つまり都心のマンションでした。ですが、この高騰で、親の資金援助でもなければ、おいそれと買うことはできなかったようです。
     そして現在。都心を諦め郊外のマンションを買った人、都市部の建売戸建てにした人、値下がりを待ちつつ今も探している人と、答えが分かれました。どれが正しいのかは誰にも分かりませんが、特集が悩める住まい探しの一助になれば幸いです。(宮原)

  • 編集長 深澤 献

    多士済済の管理組合メンバー

     社会人になってからはずっとマンション暮らし。この生活に慣れ過ぎて、もはや庭付き一戸建てへの憧れもなくなりました。
     20年前に買った今のマンションは、21戸と小規模ながら、管理組合がなかなか多士済済。大型建造物に関わるエンジニア、理詰めの化学メーカー研究者、お金に厳しい国税局査察部のマルサもいたり、一時は夜のテレビニュースのキャスターもいて、彼が総会の司会だとスムーズに話が進んだものです。私も本誌のマンション特集で知識を仕入れ、情報提供役に回ります。
     こうした布陣で、大規模修繕工事を高品質・低コストで仕上げ、管理会社の変更による管理費の大幅削減もやってのけました。一戸建てではできなかった経験です。

全国書店リストバナー 「学割」 定期購読なら約57%オフ!
読者アンケート 書籍10冊の中から、お好きな1冊が抽選で毎号5名様に当たる! いますぐ資料請求!