記事一覧:連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』88

  • 第二章 運命の日[第28回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第28回]

    2016年05月28日号  

    秀樹が報告する間、精神を集中させるためか能登は目を閉じていた。 「そうか、良かった……。本当に良かった。郷浦君、谷原、ご苦労さん」 「お役に立てて嬉しいです」 能登と目が合った瞬間、秀樹は大事な使命を全うした充実感を覚えた。ただ、一つ小さな蟠(わだかま)りがある。それを伝えるべきか迷いながら、結局は口に出せなかった。

  • 第二章 運命の日[第27回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第27回]

    2016年05月21日号  

    鷲津が熱海の旅館・枯淡楼に到着したのは、午後六時頃だった。建設されたのは戦前で、当初は旧財閥の迎賓館だった。戦後は旅館として利用され、バブル経済崩壊後に鷲津が購入した。施設の半分は従来通りの旅館業を続け、残りを自身の隠れ家的施設として利用していた。

  • 第二章 運命の日[第26回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第26回]

    2016年05月14日号  

    超満員のエレベーターから吐き出されて、貴子はようやく六本木ヒルズの一階に降り立った。建物は最新の免震構造が施されているらしいが、おかげで長時間揺れ続けたせいで、船酔いのような不快さがある。自家発電システムが作動したので停電はすぐに解消されたが、最上階にいた貴子がエレベーターに乗り込むまでには、長時間待たされた。しかも、我先に逃げようとする人のせいで、エレベーターホールは息もできないほどのすし詰め状態だった。

  • 第二章 運命の日[第25回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第25回]

    2016年04月30日号  

    携帯電話に着信があった。見ると、相手は東京本社社会部長とある。「越智(おち)だ。所長がSBOは収拾できると明言している根拠に心当たりはないのか」まず、記者の安否確認だろとは思ったが、北村は素直に応じた。

  • 第二章 運命の日[第24回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第24回]

    2016年04月23日号  

    串村所長は構外に急ぐ人の流れに逆らうように免震重要棟に向かっていた。彼に続く秀樹は、辺りが妙に静かなのに気づいた。一時(いっとき)鳴り響いていたサイレンがやんでいた。それに、すれ違う従業員の誰もが口をつぐんでいる。停電のせいだろうか。

  • 第二章 運命の日[第23回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第23回]

    2016年04月16日号  

    管理棟内は薄暗かった。地震の影響で停電したため、非常用電源の一部を利用して、最小限の明かりを灯しているからだ。ロビーに散乱している書類や横倒しになっている棚などに気をつけながら、秀樹は恐る恐る廊下を進んだ。

  • 第二章 運命の日[第22回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第22回]

    2016年04月09日号  

    Jファームからイチアイ(1I、首都電力磐前第一原子力発電所)までは、二〇キロ足らずの距離だ。国道を北上した秀樹は、周囲の様子に気を配りながら、法定速度内で車を走らせた。道路や周辺に、地震による被害は見られない。交通量も普段と変わらない。民家から屋外に出て雑談をしている住民の姿は見えるが、さして緊迫感があるようには見えない。相変わらずラジオでは津波に警戒するように連呼している。

  • 第二章 運命の日[第21回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第21回]

    2016年04月02日号  

    揺れが落ち着いたので、鷲津は社用車に乗り込んだ。特別仕様のエルグランドは、リムジン並みの乗り心地に改良されており、モニターやワイファイ機能も装備してある。首都高速道路は通行止めになっていた。車載テレビで、地震の状況を眺めていた鷲津は、熱海に向かうよう運転手に命じた。そこには所有する温泉宿がある。

  • 第二章 運命の日[第20回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第20回]

    2016年03月26日号  

    あかねの左足がインステップで蹴り上げたボールは、三人の“壁”の頭上を軽やかに越え、ゴールの右コーナーに突き刺さった。秀樹は、目の当たりにした見事なシュートに素直に感動した。ボールがゴールネットを揺らした衝撃のせいか、前で撮影していたカメラマンがよろめいた。どんだけ凄いんだ、あかねのシュートは。そう思った矢先、体のバランスが崩れた。地面が揺れている。地震?

  • 第二章 運命の日[第19回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第19回]

    2016年03月19日号  

    「相談というのはだね、貴子ちゃんにもその審議会のメンバーに入って欲しいんだ」向坂は軽口のように振ってきたが、大変な依頼だった。「ご冗談を」「この審議会には、世界の観光事情を熟知している君のような若者が不可欠なんだよ」

  • 第二章 運命の日[第18回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第18回]

    2016年03月12日号  

    通信局兼自宅を出た途端、あまりの寒さに北村は身震いした。三月中旬だというのに、春の気配は微塵もない。花岡町は前任地の気仙沼市より一五〇キロ以上は南下しているのに、寒さは変わらない。

  • 第二章 運命の日[第17回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第17回]

    2016年03月05日号  

    鷲津はうっすらと夜が明け始めた太平洋上空にいた。眼下には海が広がっている。日本電力(Jエナジー)を買収しようとした際に米国政府の不穏な動きを知り、一年余りをかけて、もう一度身辺のガードを徹底した。その間、目立った動きも控えた。

  • 第一章 崩壊前夜[第16回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第16回]

    2016年02月27日号  

    タクシーがノイバイ国際空港に到着したと同時に、湯河の携帯電話が鳴った。またか。資源エネルギー庁次長の植田だ。無視してやろうかとも思ったが、そういう時に限って重大事であったりする。「湯河です」せめてもの抵抗で、留守電メッセージに切り換わる寸前に応対した。 「帰国は不要だ」 思わず、聞き返した。

  • 第一章 崩壊前夜[第15回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第15回]

    2016年02月20日号  

    経団連会館の廊下を歩きながら、鷲津は昨夜の電話について考えていた。どうやって調べたのか、濱尾本人が鷲津の携帯電話に直接かけてきて、「明日、お会いする時間を戴けないか」と言われた。何の用かと返すと「あなたが今、画策しておられる案件についてです」とだけ告げられた。しらばっくれても無駄だと判断して、濱尾と会うことにしたのだった。

  • 第一章 崩壊前夜[第14回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第14回]

    2016年02月13日号  

    次に見覚えのある記者を指名した。どこかで見た顔だが、誰かが思い出せない。「日本通信の八島です。日本電力(Jエナジー)を狙っているのは、あなたではないんですか、鷲津さん」今日の俺はどうかしている。よりによって、こんなくそったれを失念してたなんて。

  • 第一章 崩壊前夜[第13回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第13回]

    2016年02月06日号  

    「計器類のデジタル化は考えていないんですか」 気まずいムードを破りたくて、北村が尋ねた。「今のところはありませんね。念のために申し上げますが、デジタルが万能なわけではありません。たとえば、中央制御室の計器類は電気がなければ作動しませんが、原発内にあるバルブや圧力関係の計器の中には、最新鋭のデジタル装置を備えた六号機でさえも、停電時は手動で計測できるアナログタイプを使用しているところがあります。また、見た目は古めかしいかも知れませんが、たとえば、」

  • 第一章 崩壊前夜[第12回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第12回]

    2016年01月30日号  

    芝野の断言が、湯河には引っかかった。「鷲津氏の行動はすべてお見通しかのように聞こえますが」「まさか。それができれば、私は鷲津キラーとして大儲けできますよ。鷲津政彦という男と一戦を交えたことがあれば、誰でも知っていることを話したまでです」

  • 第一章 崩壊前夜[第11回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第11回]

    2016年01月23日号  

    「鷲津さん、気を悪くしないで戴きたいのですが、さすがにそれだけの額の増資を即決する権限は私にはありません」賀一華率いる上海プレミアムファンド(SPF)による日本電力(Jエナジー)株大量取得に対抗する措置について、社長の竹原は額に汗を滲ませながら言った。

  • 第一章 崩壊前夜[第10回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第10回]

    2016年01月16日号  

    「ニントゥアン第一原子力発電所については、ロシアにお願いすることが正式に決まりました」それを聞いた途端、湯河は思考停止に陥った。我々は、こんな残酷な通告を聞くために呼ばれたというのか。「逆転できる可能性はあるんですよね」芝野はやけに落ち着いている。

  • 第一章 崩壊前夜[第9回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第9回]

    2016年01月09日号  

    鷲津率いるサムライ・キャピタル一行は、社長室に案内された。電力会社のトップの部屋としては、地味で殺風景な部屋だ。迎え入れた竹原宗一郎社長も、地味で印象の薄い人物だった。もちろん、出先からもどったばかりというふうにも見えなかった。短身で恰幅の良い竹原は、黒縁めがねの奥で、鷲津を吟味してから名刺を差し出した。

タブレット・スマートフォンでも誌面がそのまま読める
週刊ダイヤモンド電子版も好評発売中!

記者の目

  • 編集部 山本輝

    両親がもしものときは自分が……

    「ゆうちゃん、随分背が伸びたわねえ」
     祖母に会うと、よくそう言われます。ちなみに、身長はここ10年ほど伸びていませんし、そもそも私の名前は「ゆうちゃん」ではありません。
     祖母が認知症になってはや幾とせ。日に日に病状が進んでいるようです。独居の祖母の世話をしに、母は毎日のように実家へ足を運びますが、そのたびに、今日はあれをなくしただのこれを忘れただのという愚痴を聞かされます。
     私は長男なので、両親がもしものときは自分が面倒を見なければと考えていました。しかし、祖母と母の現状を見るにつけ、そう軽々しく言えることでもなさそう。
     お父さん、お母さん、どうか末永く健康でいてくださいね。ホント、切実に。

  • 編集長 深澤 献

    大人用おむつと乳幼児用おむつ

     ユニ・チャームが「大人用紙おむつの売り上げが乳幼児用を上回った」と発表したのは2012年のこと。日本の人口動態を考えれば当然かと思いつつ、衝撃を受けた記憶があります。
     その後、業界全体ではどうなっているのか、日本衛生材工業連合会の生産量統計(16年度)を調べたところ、乳幼児用の139億枚に対し、大人用は74億枚でした。あれ? 
     どうも原因は、中国人観光客の爆買いだったもよう。5年前の乳幼児用は87億枚だったので、ここ数年は異常値だったのかも。爆買いも一段落したというし、大人用市場の本格化はこれからでしょうか。そういえば最近、ネット上のターゲティング広告で〝ちょい漏れパッド〟が出てくるようになりました。

全国書店リストバナー 「学割」 定期購読なら約57%オフ!
読者アンケート 書籍10冊の中から、お好きな1冊が抽選で毎号5名様に当たる! いますぐ資料請求!