記事一覧:連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』82

  • 第二章 運命の日[第22回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第22回]

    2016年04月09日号  

    Jファームからイチアイ(1I、首都電力磐前第一原子力発電所)までは、二〇キロ足らずの距離だ。国道を北上した秀樹は、周囲の様子に気を配りながら、法定速度内で車を走らせた。道路や周辺に、地震による被害は見られない。交通量も普段と変わらない。民家から屋外に出て雑談をしている住民の姿は見えるが、さして緊迫感があるようには見えない。相変わらずラジオでは津波に警戒するように連呼している。

  • 第二章 運命の日[第21回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第21回]

    2016年04月02日号  

    揺れが落ち着いたので、鷲津は社用車に乗り込んだ。特別仕様のエルグランドは、リムジン並みの乗り心地に改良されており、モニターやワイファイ機能も装備してある。首都高速道路は通行止めになっていた。車載テレビで、地震の状況を眺めていた鷲津は、熱海に向かうよう運転手に命じた。そこには所有する温泉宿がある。

  • 第二章 運命の日[第20回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第20回]

    2016年03月26日号  

    あかねの左足がインステップで蹴り上げたボールは、三人の“壁”の頭上を軽やかに越え、ゴールの右コーナーに突き刺さった。秀樹は、目の当たりにした見事なシュートに素直に感動した。ボールがゴールネットを揺らした衝撃のせいか、前で撮影していたカメラマンがよろめいた。どんだけ凄いんだ、あかねのシュートは。そう思った矢先、体のバランスが崩れた。地面が揺れている。地震?

  • 第二章 運命の日[第19回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第19回]

    2016年03月19日号  

    「相談というのはだね、貴子ちゃんにもその審議会のメンバーに入って欲しいんだ」向坂は軽口のように振ってきたが、大変な依頼だった。「ご冗談を」「この審議会には、世界の観光事情を熟知している君のような若者が不可欠なんだよ」

  • 第二章 運命の日[第18回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第18回]

    2016年03月12日号  

    通信局兼自宅を出た途端、あまりの寒さに北村は身震いした。三月中旬だというのに、春の気配は微塵もない。花岡町は前任地の気仙沼市より一五〇キロ以上は南下しているのに、寒さは変わらない。

  • 第二章 運命の日[第17回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第17回]

    2016年03月05日号  

    鷲津はうっすらと夜が明け始めた太平洋上空にいた。眼下には海が広がっている。日本電力(Jエナジー)を買収しようとした際に米国政府の不穏な動きを知り、一年余りをかけて、もう一度身辺のガードを徹底した。その間、目立った動きも控えた。

  • 第一章 崩壊前夜[第16回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第16回]

    2016年02月27日号  

    タクシーがノイバイ国際空港に到着したと同時に、湯河の携帯電話が鳴った。またか。資源エネルギー庁次長の植田だ。無視してやろうかとも思ったが、そういう時に限って重大事であったりする。「湯河です」せめてもの抵抗で、留守電メッセージに切り換わる寸前に応対した。 「帰国は不要だ」 思わず、聞き返した。

  • 第一章 崩壊前夜[第15回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第15回]

    2016年02月20日号  

    経団連会館の廊下を歩きながら、鷲津は昨夜の電話について考えていた。どうやって調べたのか、濱尾本人が鷲津の携帯電話に直接かけてきて、「明日、お会いする時間を戴けないか」と言われた。何の用かと返すと「あなたが今、画策しておられる案件についてです」とだけ告げられた。しらばっくれても無駄だと判断して、濱尾と会うことにしたのだった。

  • 第一章 崩壊前夜[第14回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第14回]

    2016年02月13日号  

    次に見覚えのある記者を指名した。どこかで見た顔だが、誰かが思い出せない。「日本通信の八島です。日本電力(Jエナジー)を狙っているのは、あなたではないんですか、鷲津さん」今日の俺はどうかしている。よりによって、こんなくそったれを失念してたなんて。

  • 第一章 崩壊前夜[第13回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第13回]

    2016年02月06日号  

    「計器類のデジタル化は考えていないんですか」 気まずいムードを破りたくて、北村が尋ねた。「今のところはありませんね。念のために申し上げますが、デジタルが万能なわけではありません。たとえば、中央制御室の計器類は電気がなければ作動しませんが、原発内にあるバルブや圧力関係の計器の中には、最新鋭のデジタル装置を備えた六号機でさえも、停電時は手動で計測できるアナログタイプを使用しているところがあります。また、見た目は古めかしいかも知れませんが、たとえば、」

  • 第一章 崩壊前夜[第12回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第12回]

    2016年01月30日号  

    芝野の断言が、湯河には引っかかった。「鷲津氏の行動はすべてお見通しかのように聞こえますが」「まさか。それができれば、私は鷲津キラーとして大儲けできますよ。鷲津政彦という男と一戦を交えたことがあれば、誰でも知っていることを話したまでです」

  • 第一章 崩壊前夜[第11回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第11回]

    2016年01月23日号  

    「鷲津さん、気を悪くしないで戴きたいのですが、さすがにそれだけの額の増資を即決する権限は私にはありません」賀一華率いる上海プレミアムファンド(SPF)による日本電力(Jエナジー)株大量取得に対抗する措置について、社長の竹原は額に汗を滲ませながら言った。

  • 第一章 崩壊前夜[第10回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第10回]

    2016年01月16日号  

    「ニントゥアン第一原子力発電所については、ロシアにお願いすることが正式に決まりました」それを聞いた途端、湯河は思考停止に陥った。我々は、こんな残酷な通告を聞くために呼ばれたというのか。「逆転できる可能性はあるんですよね」芝野はやけに落ち着いている。

  • 第一章 崩壊前夜[第9回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第9回]

    2016年01月09日号  

    鷲津率いるサムライ・キャピタル一行は、社長室に案内された。電力会社のトップの部屋としては、地味で殺風景な部屋だ。迎え入れた竹原宗一郎社長も、地味で印象の薄い人物だった。もちろん、出先からもどったばかりというふうにも見えなかった。短身で恰幅の良い竹原は、黒縁めがねの奥で、鷲津を吟味してから名刺を差し出した。

  • 第一章 崩壊前夜[第8回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第8回]

    2015年12月26日号  

    大会議室(ウォールーム)には、日本電力(Jエナジー)買収チームのメンバー全員が顔を揃えていた。アンソニー一人が部屋の隅で携帯電話で通話中だった。話す声に苛立ちが滲んでいる。

  • 第一章 崩壊前夜[第7回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第7回]

    2015年12月19日号  

    「よし、あかね! イケぇ~」フィールドを疾走する萩本あかねに向かって、郷浦秀樹は拳を振り回した。一〇月に開催された内定者の懇親会で、磐前県への女子サッカー応援旅行があると聞いて、秀樹はその場で参加を決めた。秀樹は高校までサッカー部で、大学に入ってからはサークルでサッカーを続けた。残念ながら、首都電力には男子サッカーチームがないのだが、女子はなかなかの活躍を見せている。

  • 第一章 崩壊前夜[第6回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第6回]

    2015年12月12日号  

    ベトナム原発プラント輸出日本交渉団は、ヒルトン・ハノイ・オペラに投宿している。同ホテルは、ハノイの商業地区の一つであるバディン区にあるが、市街地では珍しい閑静なエリアだった。フランス統治時代に建てられたオペラハウスと隣接していることにちなんで、その雰囲気をホテルも踏襲している。

  • 第一章 崩壊前夜[第5回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第5回]

    2015年12月05日号  

    ベトナムが暑いというのは、思い込みだった。朝、ホテルの周囲を散歩していた芝野は、薄着だったことを後悔した。ベトナムの国土は南北に細長く延びている。総延長は約一六五〇キロメートルで、その形は、どことなく日本列島にも似ている。地形の関係で温帯から熱帯まであるのだが、芝野でなくても「暑い」というイメージがある。

  • 第一章 崩壊前夜[第4回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第4回]

    2015年11月28日号  

    投資ファンド、サムライ・キャピタルの本社は、東京都千代田区大手町の大手町ファーストスクエア・イーストタワー二一階にある。M&A(企業の合併・買収)に特化した投資ファンドとしては、日本最大の投資額を誇るが、社員は一〇〇人に満たない。少数精鋭なのは、鷲津が「それ以上は、社員の顔や性格を把握できない」からだ。

  • プロローグ(承前)[第3回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    プロローグ(承前)[第3回]

    2015年11月21日号  

    退屈で死にそうだった。ハドソン川上流の古城風ホテル“鷲の巣城”に、鷲津政彦は既に二ケ月も滞在し、無聊な日々を送っている。この日も、昼近くに起きると遅い朝食を摂り、ポロシャツにジーパンという適当な服装で、敷地内の広大な庭を散歩した。

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記者の目

  • 編集長 深澤 献

    「寝付けない」というのは本当につらい

    「寝付けない」というのはつらいものです。深夜にまで及んだ編集会議の後とか、原稿がなかなか進まず「残りは朝起きてからにしよう」と区切りをつけた後とか、床には就くものの、頭がさえて眠れないことがあります。
     そんな夜は、脳が疲れても眠れないなら体を疲れさせればいいと、真夜中でも5㌔くらいランニングしてくるというバカな解決法を取っていた時期があります。走るのが趣味とはいえ、「これはまったく健康的ではないな」と思い、最近は控えています。
     走るといえば、初マラソンの前日、遠足前の小学生のように、興奮して眠れなかったのも困りました。翌朝は早いし体力も必要なのに……。ホントに「寝付けない」というのはつらいものです。

  • 編集部 森川幹人

    草食系男子が増えているのは睡眠不足のせいだった

     睡眠特集の原稿を書く合間に読んでいた、とある脳科学者の本。なんでも、草食系男子の増加にも、睡眠が関わっているのだとか。
     太古から人類の先輩諸兄がしてきたように、日の出とともに起き、日中は獲物を追い掛け、夜は真っ暗闇の中で眠ってこそ、男らしさを育むテストステロンというホルモンが分泌されるというのです。
     ところが、現代にあっては、夜遅くまでスマホで脳を刺激し、睡眠時間は減る一方で、日中の運動も足りない。男子のテストステロン分泌量が減れば、優しいだけの草食系が増えて当然なのでしょう。
     さて、自分はどうかと振り返ってみて、取りあえず1日7時間の睡眠を目標にし、久々に筋トレでもしてみようかと決意したのでした。

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