記事一覧:連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』111

  • 第一章 崩壊前夜[第11回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第11回]

    2016年1月23日号  

    「鷲津さん、気を悪くしないで戴きたいのですが、さすがにそれだけの額の増資を即決する権限は私にはありません」賀一華率いる上海プレミアムファンド(SPF)による日本電力(Jエナジー)株大量取得に対抗する措置について、社長の竹原は額に汗を滲ませながら言った。

  • 第一章 崩壊前夜[第10回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第10回]

    2016年1月16日号  

    「ニントゥアン第一原子力発電所については、ロシアにお願いすることが正式に決まりました」それを聞いた途端、湯河は思考停止に陥った。我々は、こんな残酷な通告を聞くために呼ばれたというのか。「逆転できる可能性はあるんですよね」芝野はやけに落ち着いている。

  • 第一章 崩壊前夜[第9回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第9回]

    2016年1月9日号  

    鷲津率いるサムライ・キャピタル一行は、社長室に案内された。電力会社のトップの部屋としては、地味で殺風景な部屋だ。迎え入れた竹原宗一郎社長も、地味で印象の薄い人物だった。もちろん、出先からもどったばかりというふうにも見えなかった。短身で恰幅の良い竹原は、黒縁めがねの奥で、鷲津を吟味してから名刺を差し出した。

  • 第一章 崩壊前夜[第8回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第8回]

    2015年12月26日号  

    大会議室(ウォールーム)には、日本電力(Jエナジー)買収チームのメンバー全員が顔を揃えていた。アンソニー一人が部屋の隅で携帯電話で通話中だった。話す声に苛立ちが滲んでいる。

  • 第一章 崩壊前夜[第7回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第7回]

    2015年12月19日号  

    「よし、あかね! イケぇ~」フィールドを疾走する萩本あかねに向かって、郷浦秀樹は拳を振り回した。一〇月に開催された内定者の懇親会で、磐前県への女子サッカー応援旅行があると聞いて、秀樹はその場で参加を決めた。秀樹は高校までサッカー部で、大学に入ってからはサークルでサッカーを続けた。残念ながら、首都電力には男子サッカーチームがないのだが、女子はなかなかの活躍を見せている。

  • 第一章 崩壊前夜[第6回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第6回]

    2015年12月12日号  

    ベトナム原発プラント輸出日本交渉団は、ヒルトン・ハノイ・オペラに投宿している。同ホテルは、ハノイの商業地区の一つであるバディン区にあるが、市街地では珍しい閑静なエリアだった。フランス統治時代に建てられたオペラハウスと隣接していることにちなんで、その雰囲気をホテルも踏襲している。

  • 第一章 崩壊前夜[第5回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第5回]

    2015年12月5日号  

    ベトナムが暑いというのは、思い込みだった。朝、ホテルの周囲を散歩していた芝野は、薄着だったことを後悔した。ベトナムの国土は南北に細長く延びている。総延長は約一六五〇キロメートルで、その形は、どことなく日本列島にも似ている。地形の関係で温帯から熱帯まであるのだが、芝野でなくても「暑い」というイメージがある。

  • 第一章 崩壊前夜[第4回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第4回]

    2015年11月28日号  

    投資ファンド、サムライ・キャピタルの本社は、東京都千代田区大手町の大手町ファーストスクエア・イーストタワー二一階にある。M&A(企業の合併・買収)に特化した投資ファンドとしては、日本最大の投資額を誇るが、社員は一〇〇人に満たない。少数精鋭なのは、鷲津が「それ以上は、社員の顔や性格を把握できない」からだ。

  • プロローグ(承前)[第3回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    プロローグ(承前)[第3回]

    2015年11月21日号  

    退屈で死にそうだった。ハドソン川上流の古城風ホテル“鷲の巣城”に、鷲津政彦は既に二ケ月も滞在し、無聊な日々を送っている。この日も、昼近くに起きると遅い朝食を摂り、ポロシャツにジーパンという適当な服装で、敷地内の広大な庭を散歩した。

  • プロローグ(承前)[第2回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    プロローグ(承前)[第2回]

    2015年11月14日号  

    「加地さん、つまり私に、ベトナムへの原発プラント輸出交渉で要の役をやれと?」「その通り。政府代表として、日本チームを纏めるだけではなく、厄介なハードネゴシエーターであるベトナム政府とやり合って欲しいんです」とんでもないビッグプロジェクトだった。そもそもなんで、こんな国家プロジェクトに買収ファンドが絡むのかが解せなかった。

  • プロローグ[第1回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    プロローグ[第1回]

    2015年11月7日号  

    生きながら鬼といはれりゃ死んだ後 仏となりいてうめあはせせむ 郷浦秀樹(ごうのうら・ひでき)は、その歌に釘付けになった。「ヤバかぁー!」郷土の英雄と知られる人物の自伝の中の一語に、秀樹はつい方言(おさとことば)を漏らした。

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記者の目

  • 副編集長 千本木啓文

    農協から届いた「抗議文」を読んで、しばし感傷に浸る

     JA全中から毎年、抗議文をもらうのですが、今年は雑誌の発売前に届きました。特集の一部を「組合長165人が“辛口”評価 JA上部団体の通信簿」としてダイヤモンド・オンラインで先に配信したからです。
     抗議文は、「19万人の農協役職員の0.2%の意見で記事が構成されており、(中略)偏った先入観を植え付ける意図があった」として、続編の配信中止を求める内容でした。
     組合長ら幹部200人超を含む役職員434人の声には傾聴する価値があるはずです。抗議文を読み、自分は若いと思い込んでいる人が鏡に映った老いた姿を見て、こんなはずはないと怒っているような印象を持ちました。自戒を込めて、鏡のせいにしてはいけないと思いました。

  • 編集長 浅島亮子

    ロングセラー第9弾でも攻め続ける農業特集

     今年も人気企画「儲かる農業」特集の第9弾が刷り上がりました。身内ながら感心するのが、毎年新しいコンテンツを加えて特集構成を刷新していることです。今回の新ネタは農協役職員アンケート。ロングセラー企画の定番を変えるには勇気が必要ですが、果敢に新機軸を打ち出しているのです。
     昨年、千本木デスク率いる農協問題取材チームは、共済の自爆営業などJAグループの不正を暴いたことが評価され、報道実務家フォーラム「調査報道大賞」優秀賞を受賞しました。訴訟に屈することなく、問題の本質を突く取材活動を貫いた結果と受け止めています。今回の特集でも粘り強い取材は健在。取材チームの熱量を存分に感じていただければ幸いです。

最新号の案内2024年5月11日号

表紙

特集儲かる農業2024

いよいよ儲かる農業が実現するフェーズに入った。「台頭する豪農」と「欧米のテクノロジー」と「陰の仕掛け人」が”令和の農業維新”というムーブメントを起こしている。他方、農業を牛耳ってきた旧来勢力である農協と農水省は、存在意義を問われる”緊急事態…

特集2家計・住宅ローン・株が激変! 金利ある世界

日本銀行が17年ぶりの利上げで金融政策の正常化に踏み出した。”金利ゼロ”に慣れ切った家計や企業経営、財政はどうなるのか。日本は「成長期待が持てない経済」から抜け出せるのか。それとも低金利は続き、物や資本が余った経済への道を歩むのか。「金利あ…