記事一覧:Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」225件
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
著名な経済学者が将来を洞察 欧州経済の致命的欠陥を喝破
2016年12月3日号英国のEU(欧州連合)離脱やドイツ銀行の経営問題、再燃するギリシャ問題など、欧州経済にくすぶっていたリスクが顕在化しつつある。『ユーロから始まる世界経済の大崩壊』は、危機の根本原因から世界経済への影響、そして解決の糸口までを詳細に分析している。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
実際に起きた事故を題材に現代の病理に迫る警告の書
2016年11月26日号“ながらスマホ”を危険だと感じる読者は多いと思う。実際に米国のユタ州で、こんな事故が起きている。2009年9月。自動車を運転しながら携帯メールをしていた19歳のレジー・ショーは、中央線(センターライン)を越えて対向車と接触、そのあおりで対向車は後続のトラックに衝突して乗員2名が死亡した──。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
密度が濃いのに読みやすい 通説を覆す信玄論の決定版
2016年11月19日号群雄割拠の戦国時代を生き抜いた武将のエピソードは、多数のライバルと市場シェア争奪戦を繰り広げる企業の参考になる。そこで、ビジネス書でもよく取り上げられる。しかし、その基となる資料の多くはフィクションである。事実であっても断片的で、誇張・変形がなされ、誤った行動を生む危険をはらむ。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
良い映画のように飽きない “核兵器”を巡る米ソの物語
2016年11月12日号核兵器の廃絶を目指した米オバマ大統領のレガシー(遺産)づくりや、北朝鮮の核実験など、核を巡る議論があらためて注目を浴びている。それでも、人類はすでに70年以上、核戦争による破壊から免れてきた。核戦争が現実視された米ソ冷戦の最中、さらに核拡散の可能性があった冷戦終結時、二大核保有国の指導者や軍人、科学者は、何をどう認識し、考え、行動し、破壊を回避しようとしたかの克明なドキュメンタリーが本書だ。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
誰が次の米大統領になっても 米中は接近から離反へ向かう
2016年11月5日号世に、日米関係や日中関係を扱う2国間問題の本は多々あれど、日米中の“三角関係”となると、極端に少なくなる。「頂点から斜辺を見る」ようなもどかしさがあるからか。その数少ない例が、大手経済紙の記者として、米国と中国の両国に駐在経験のある秋田浩之記者による著作である。前作の『暗流』は、米ブッシュ政権の時代(2001~08年)を描いたが、新刊の『乱流』ではオバマ政権の時代(09~16年)をまとめている。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
トクヴィルの思想を軸にして 21世紀の政治の可能性を探る
2016年10月29日号民主主義は、長期的な視点で考えるのが苦手だ。社会保障問題や地球温暖化問題など、目先を取り繕い、費用を先送りする近視眼的な政策を繰り返す。民主主義の内部に自らを制御して自省する能力を組み込むことはできないのか──。19世紀のフランスで、この問題に取り組んだのがトクヴィルだった。『政治哲学的考察』は、トクヴィルの現代的な意義を問い続ける気鋭の政治哲学者の論考集だ。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
多数決には致命的欠陥がある 経済学的に考察する“決め方”
2016年10月22日号随分昔の米国映画に、ヘンリー・フォンダ主演の「十二人の怒れる男」がある。父親殺しの少年の罪をめぐり、蒸し暑い閉め切られた部屋の中で、12人の陪審員が侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を行う。最後は、無罪の評決に至るというストーリーである。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
長期投資がデフレ脱却への道 安倍首相が推薦する“方向感”
2016年10月15日号政府が8月2日に閣議決定した「事業規模28兆円の経済対策」は、国の財政措置が約6兆円、本年度の補正予算に計上されるのが約4兆円ということで、デフレ脱却を目指す初年度の財政拡大策として十分かどうかは賛否が分かれている。こうした中、『国民所得を80万円増やす経済政策』は、経済対策に先立ってアベノミクスに対する五つの提案を行ったものだ。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
機密資料の開示で明かされた 冷戦下の超大物スパイの実像
2016年10月8日号「スパイ」という言葉にワクワクした思い出を持つ読者は、多いだろう。パラシュートを着けた気になって塀の上から飛び降りたり、暗号を使ったメモを仲間と交換したり。映画やテレビで活躍するスパイと実物は違っている。本書には、自動的に消滅するテープも特殊装備の自動車も登場しない。小型カメラは出てくるが、手ぶれや露光不足で使い物にならないこともある。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
左翼またはリベラルの人々は 日本会議のやり方に学ぶべき
2016年10月1日号本年春まで、日本の主要メディアは、日本会議についてほとんど触れることがなかった(海外の主要メディアの中には日本会議を解説しているものもあった)。だが、『日本会議の研究』は、そんな流れを変えるきっかけとなった本である。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
学界の権威に糾弾され続けた 行動経済学の波乱万丈の足跡
2016年9月24日号昨年、行動経済学の旗頭である、シカゴ大学教授のリチャード・セイラー氏が、米国最古のアメリカ経済学会の会長に選出された。行動経済学とは、消費者、家計、企業などの行動を観察し、心理学の知見なども援用して理論化する学問だ。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
「ヒラリーの夫」が成功させた “中道政治”の余波を振り返る
2016年9月17日号かつて、「新書を5冊書けば悠々食える」という時代があった。30年ほど前までは、新書を出せたのは大家だけで、書店の棚には清水幾太郎氏の『論文の書き方』や、岡崎久彦氏の『戦略的思考とは何か』などのロングセラーが並んでいた。今日では、毎月、膨大な点数が世に送り出され、片っ端から忘れ去られていく。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
「自由」こそが社会を危うくする 民主主義の再生に向けた洞察
2016年9月10日号いつからか、世界はポピュリズム政治の大舞台になってしまった。米国の大統領選挙ではトランプがまさかの共和党指名候補者となり、英国では大方の予想に反してEU離脱が国民投票で決まった。欧州大陸では、ずいぶん前から極右政治家がアジェンダセッターになっている。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
資本主義、民主主義の急所? 自由の歴史についての考察
2016年9月3日号自由は掛け替えのないものだ。しかし、この世には、他にも重要な価値がある。例えば平等。自由民主主義体制は自由を優先するが、それがもたらす歪みを平等という視点で補正する。80年前に比べ、私たちは平等に重きを置く。自由の価値と重みは、時代によって大きく変わる。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
当代の専門家たちが振り返る 高坂正堯の仕事の今日的意義
2016年8月27日号元京都大学教授の高坂正堯氏が亡くなって今年で丸20年。田原総一朗氏が司会を務めたテレビ朝日系列の「サンデープロジェクト」では、にこやかな表情、柔らかな京言葉ながら、現実主義の国際政治学者として鋭い洞察を提示していた。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
マイナス金利政策は危ないか リフレ派の論客が俗論を正す
2016年8月13日号マイナス金利政策、すなわち民間銀行が日本銀行に預ける当座預金の一部にマイナス金利を導入する政策は、2016年の1月に導入された。その後、連日のネガティブな報道やマイナスという言葉が持つ印象により“不安”が抱かれている。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
100年前の「秘密協定」は本当に諸悪の根源だったか
2016年8月6日号中東の現在の秩序には、ちょうど100年前、第1次世界大戦中に英仏の外交官が締結した「サイクス=ピコ協定」が深く刻印されている。シリア、イラク、レバノン、ヨルダン、イスラエルといった諸国の国境線は、それに基礎を置いている。この協定は、ドイツに味方したオスマン帝国が大戦後に崩壊するのを見込み、英仏2国が秘密裏にこしらえた“領土分割案”だった。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
単語・フレーズの出現頻度で “文化”を計測する新しい方法
2016年7月30日号私たちの社会は、「社会物理学」を提唱したフランスの社会学者コントが考えたように、実証的に把握できるだろうか? 思想や文化は?「文化をビッグデータで計測する」という副題が付いた『カルチャロミクス』の2人の著者は、米グーグルが進めてきた図書館デジタル化プロジェクトの成果と、急速に増大化した計算力を使うことで、思想や文化の把握を試みた。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
プーチン大統領が立ち向かう 国家と軍隊の再生ストーリー
2016年7月23日号国家の安全保障を考える上では、仮想敵国の武力が問題になる。2014年3月、ロシアは、民兵に偽装した特殊部隊員、親ロシア派の住民、正規軍を組み合わせた「ハイブリッド戦」に乗り出し、クリミア半島を制圧した。その結果、にわかにロシア脅威論が燃え上がった。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
貧困・格差・社会的排除を扱う 欧州を代表する社会学の視座
2016年7月16日号古今東西、人類は“貧困”と縁を切ることができなかったことを認めないわけにはいかない。それは貧困の基準や分類、もっと言えば、私たちがこれに投げ掛ける目線が常に変化してきたからだ。つまり、貧困は、形を変えて普遍的に存在してきた。