記事一覧:Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」225件
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
日本の近代史を「人種体験」で 精神分析するユニークな著作
2014年11月22日号痛い。読んでいて、何度も胸をかきむしりたくなる。努めて忘れようとしていた過去を、これでもかと見せつけられるからであろう。本書は、明治時代以降の近代日本の歩みを「人種体験」という視点で描いた精神分析の試みである。近代日本のエリートたちにとって、洋行(欧米への留学)は必須科目であった。しかし渡航先では、背が高く、色の白い人たちに劣等感を抱く。今日よりも平均身長が低く、言葉でも苦労が多く、さらに人種的偏見も強い時代だった。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
保守を統治の思想へ高める その有効性を示す骨太の書
2014年11月15日号近年、フランス革命を保守の立場から批判したエドマンド・バークが注目されている。理由の一つは、バークが真の社会契約を世代間のパートナーシップだと喝破していた点だ。社会や国家は、現在生きている人だけの共同事業ではなく、祖先とわれわれ、そしてわれわれと子孫の間の共同事業なのである。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
書き手が抑制を効かせて綴る 超大国の実像をめぐる群像劇
2014年11月8日号その厚みにおいて書店でもひときわ目立つ本である。実に687ページ。多忙なビジネスパーソンにとって、とても読んでいる時間などないのではないかと思わせる。しかし、目次を見ると、気になって仕方がない。1970年代から2010年代にかけて、米国の人々が辿った道が語られる。その中には、ニュート・ギングリッチ(政治家)、レイモンド・カーヴァー(作家)、サム・ウォルトン(ウォルマート創業者)、ロバート・ルービン(元財務長官)、ピーター・ティール(ペイパル創業者)らのビッグネームが含まれる。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
経済の初心者でも理解できる 欧州リスクの未来を描く好著
2014年11月1日号ギリシャショックにより、市場が混乱した2009年の秋以降、ユーロ圏の悲観論を語る欧州関連の経済書が次々と出版されている。こうした流れの中で出版された本書だが、いたずらに悲観論に終始することなく、実務的な観点から欧州経済の行方を詳細に分析している。主に二つの内容から構成されている。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
日本国憲法をアイドルに講義 勘所を押さえた優れた入門書
2014年10月25日号ぱっと見の印象は、AKB48の人気に便乗した際物、だろう。『憲法主義』というタイトルも耳慣れないし(実際、そういう専門用語はない)、帯でも、著者の表記でも、高校生(現在は慶應大学生)の内山奈月さんを前面に押し出している。書店では、アイドル本のコーナーに並んでいることも多い。