記事一覧:Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」225件
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
国民国家と民主主義とは何か 碩学による20世紀欧州の通史
2016年2月13日号20世紀前半の欧州の歴史は、大量殺りくと暴力に彩られている。少数派や「劣等者」は仮借なく弾圧され、民衆は総力戦に動員された。それは、戦後の落ち着いた文化になじんだ者には、想像がつきにくい。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
悩んで成長する過程が面白い 注目の経営者による中間報告
2016年2月6日号ユニークな社風の数々で知られるサイボウズの社長で、「イクメン」(積極的に育児を楽しむ男性)社長を実践したり、「夫婦別姓」を容認する論陣を張ったりと、何かとビジネス界に話題を提供してくれる青野慶久氏による近著が『チームのことだけ、考えた。』である。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
世界で「成功した」と見られる同族企業は何がどう違うのか
2016年1月30日号創業後、100年以上活動を続ける企業が“成功モデル”としてもてはやされている。その多くが同族企業であることを根拠に、優位性が強調される。しかし実際は、同族企業のほとんどが、一代で消え去る。何代も続く企業でも、多くが存亡の縁をさ迷っている。では、そうならずに、永続的に発展していくために心掛けることは何か。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
現代社会学の泰斗が著した “欧州”の将来を見据える書
2016年1月23日号「アヌス・ホリビリス(ラテン語で、ひどい年という意味)」。1992年、英国の女王エリザベス2世が戴冠40周年の演説で使ったこの言葉は、2015年の欧州にこそ相応しいものだったろう。パリのテロ事件で幕を開けた15年は、ギリシャのユーロ離脱危機、押し寄せる難民危機と続き、再びパリの同時多発テロで締めくくられた。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
衰退どころか世界を席巻する米国発ソフト・パワーの実態
2016年1月16日号表題は「沈まぬアメリカ」となっているが、おそらくは出版社が付けたもので、著者は「アメリカン・レガシー」という表題を望んでいたのであろう。ところが、レガシー(遺産、栄光、伝統)という言葉は、目に見えないものであるし、普通の日本人読者にはちょっと説明しにくい。それ故に、「“米国衰退論”への異議申し立て」的な表題を与えられている。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
金融政策の当事者が分析する 情勢を読み誤った“理由”
2016年1月9日号巧みな政策運営から“マエストロ”と呼ばれたFRB(米連邦準備制度理事会)のグリーンスパン元議長。1987~2006年の在任中は、世界経済が大いなる安定といわれた時期だ。しかし、06年春に住宅価格は下落に転じ、07年夏からサブプライムバブルは崩壊、08年秋以降はリーマンショックによる全面的危機に陥った。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
数学を通して「人間」に迫る 若き“独立研究者”の第一歩
2015年12月26日号経営や経済に関する調査やコンサルティングを行っていると、若い社員が「もっとエレガントな仕事がしたい」という言葉を残し、サイエンスの大学院へと戻っていく場面に何度か遭遇する。数学は、現実の世界とは距離を置いたエレガントなサイエンスの代表選手である。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
経済学は物理学で強くなる? 常識に切り込む平易な解説書
2015年12月19日号400年前から経済やファイナンス論の歴史では危機と崩壊が絶え間なく起こってきた。大小のバブルの発生とその崩壊を繰り返す金融現象について、主流派経済学者たちは解明に成功していない。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
病は進化と文化の“ずれ”から 人体の歴史を掘り下げた好著
2015年12月12日号600万年にわたる人類進化の歴史をたどって判明するのは、われわれの身体が、何よりも“狩猟採集生活”に適応していたということだ。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
ビッグデータの分析が“解明” 人間の集団が持つ普遍的性質
2015年12月5日号社会科学の最大の弱点は、「データをきちんと取れない」ということであった。心理学や行動経済学では実験できる場合もあるが、社会学や経済学では難しい。いずれにしても、自然科学や工学に比較すると、被験者に対するアンケートや参与観察では大雑把過ぎて、包括性、信頼度、再現性に欠ける。しかも測定できる変数が限られているため、想定される研究対象の全体像は自ずとモデル(研究者の信念)に依存する。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
コカ・コーラの“成長を支える” 100年企業のデザイン戦略
2015年11月28日号持続的に発展している企業は、“決定”と“実行”のスピードに優れている。「企業格差は人材格差」と言われるが、「企業格差はスピード格差」でもある。ITの発達は、大企業にとっても、ベンチャー企業にとっても、そのチャンスとリスクを大きくしている。現在は、スピードアップがあらゆる企業において最重要課題となっている。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
“緊縮策”という危険な思想を 縦横無尽に読み解く考察の書
2015年11月21日号知られているように、ケインズは、経済学者の発想は想像以上に影響力を持ち、実務家は過去の経済学者の奴隷にすぎないとの名言を残した。『緊縮策という病』は、危機時において緊縮策こそ経済成長を可能にするという、「人類史上最大のおとり商法」を知的に読解する。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
「公共事業悪玉論」の中で 成長戦略のネタを考える
2015年11月14日号どうして公共事業は評判が悪いのか。新国立競技場くらい、将来は東京の観光名所として残るのだから、数千億円掛かってもいいじゃないか、と個人的には考えるのだが、今の世の中では少数意見のようだ。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
あらゆる領域で進行している “権力の衰退”を描く考察の書
2015年11月7日号中国への覇権シフト。新興国への成長の重心のシフト。これまでもパワーシフトが世界的潮流だという主張は多数見られたが、『権力の終焉』の視点は全く異なる。権力の所在がシフトし、拡散しているのではなく、権力そのものが脆弱になっているという。権力の維持も行使も難しくなっていると論じる。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
金融危機の現場を渡り歩いた 元米財務長官が書いた戦中記
2015年10月31日号「民主主義は金融危機の際には向いていない」。読後感を表せば、そうなる。著者のティモシー・F・ガイトナーは、2003年から米ニューヨーク連邦準備銀行総裁の地位にあり、その後、09年から13年まで米財務長官を務めた。まさにリーマンショックの渦中に政府の要職にいた人物が、回顧録を書いた。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
ユーロ圏危機の影響を分析 日本への波及も扱った好著
2015年10月24日号今年1月のギリシャ総選挙で、急進左派連合が政権を握って以来、同国の資金繰り支援をめぐって金融市場が混乱したことは記憶に新しい。こうした中で出版された『ユーロ圏危機と世界経済』の執筆者には、経済学者のみならず、EU法を専門とする法学者も加わっている。そして、ユーロ危機に対するEUの対応を、経済学的なアプローチと共に、法学的なアプローチからも考察している好著である。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
原爆開発戦争の全体像に迫る 科学と人間と政治の同時代史
2015年10月17日号通常の火薬を圧倒的に上回る破壊力を有する核兵器は、歴史を書き換えた。東西冷戦時代、その総量は地球上の全生物を何十回も殺すに足りるといわれた。今日でも、核拡散の恐怖は、人類を捉えて離さない。このような力を、人類はなぜ持ってしまったのか。発端は、物理学者の純粋な探究心だった。ウランに中性子線を照射すると原子核が分裂し、膨大なエネルギーを放出することがスウェーデンで解明されたのは、1938年のクリスマスだった。その発見は、直ちに全世界に伝わった。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
デジタル化社会の勝者は誰か 『機械との競争』の続編が登場
2015年10月10日号最近、仕事と社会のデジタル化は、すさまじい勢いで進行している。仕事のプロセスや組織の在り方に止まらず、産業構造から人間関係や価値観までじわじわと変えつつある。現在進行中の技術発展がどのような性格を持ち、その帰結がどうなるかについて、将来への不安もある。本書『ザ・セカンド・マシン・エイジ』は、前作『機械との競争』(原著は2011年。日本語版は13年5月18日号の書評欄で紹介)以降の研究成果を織り込んであり、論点が整理されている。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
米シリコンバレーで慕われる 著名投資家が記した激励の書
2015年10月3日号技術経営論は、イノベーションには三つの関門、すなわち(1)開発段階の「魔の川」、(2)事業化段階の「死の谷」、そして(3)販売段階でライバルが次々と出現する「ダーウィンの海」をクリアする必要を説く。しかし、いかにしてそれらの問題を克服するかについての論説には、断片的で、なじみのない新製品を売る難しさや、強力なライバルの出現を想定しないものもある。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
ナチ政権誕生の分岐点を詳述 政治小説のように読める好著
2015年9月26日号時代は定期的にヒトラー・ブームを呼び込む。1970年代の第1次ブームでは、ヒトラーの非合理さやナチズムのキッチュさ(俗悪ぶり)が注目された。近年のブームでは、ナチ政権が進めた社会政策や環境政策の革新性が指摘されている。ただし、ヒトラーとナチの強烈な個性が世界を征服したという歴史観は、その時代に生きた人々にあったかもしれない責任を免罪しかねない。彼が政権を奪取したのではなく、時の権力がヒトラーとナチスを招き寄せたのだとしたら──。ナチに凡庸という悪を見たのは哲学者アーレントだが、本書はその悪を招くのはまた別の凡庸な悪であったことを強調する。