記事一覧:Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」225件
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
“米中関係”の淵源に踏み込む 古参記者の掛け値なしの仕事
2017年4月29日号日本人が米中関係を論じていると、時に三角形の頂点から斜辺を見下ろすような独善に陥りがちである。だが、日米関係よりも長い歴史を持つ米中の交流には、私たちの目に見えていない部分があまりに多いのではないか。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
部分と全体は全く異なる動き “ゲーム理論”を柔軟に学ぶ本
2017年4月22日号かつて、ミクロ経済学の教科書は、市場メカニズムの理論の解説にほとんどを割き、「個人の利己的行動が全体にとって満足のいく結果につながる」と教えていた。現在でも、人類が築いた市場という制度の機能を学ぶことは重要なのだが、市場の均衡を重視し過ぎるのは“経済学不信”を強めるだけだろう。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
「選択する自由」はどうなる? ビッグデータ時代に必読の書
2017年4月15日号評者の加入する確定拠出年金は、加入者全体の利回り分布をウェブサイト上で見られる。驚くべきことに、60%以上の加入者が利回り0%台にとどまっている。その理由は簡単だ。デフォルト(初期設定)での運用商品が、金利0.01%台の銀行の定期預金に設定されていて、その後、加入者は運用商品を変更していないからである。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
なぜ行政は信頼されないのか 官僚制を冷静に分析した良書
2017年4月8日号知っているようでよく知らない、頻繁に語られる割には実態がつかめない。日本の官僚制は、そうしたものの一つである。行政学と政治学で培った理論と国際比較を武器に、日本の官僚制の現状と将来像に切り込んだのが、本書である。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
デフレが問題の本質ではない 日本経済は劇的に復活できる
2017年4月1日号“バブル経済の崩壊”から20年以上経過しているが、日本経済はその後の“失われた20年”からも完全復活していない。こうした中で、『新・所得倍増論』は、失われた20年に関して徹底的なデータ分析をすることで、今も潜在能力を生かせない「日本病」の正体と処方箋をあぶり出す。人口が減っても、「昭和の常識」を打破すれば、平均年収は2倍、GDP(国内総生産)は1・5倍になると詳述している。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
米国の経営者に読み継がれる経営実践書のアップデート版
2017年3月25日号34年前に書かれた内容が中心であるとはいえ、今日でも十分に通用する。1968年、米国の半導体素子メーカーのインテルの設立に参加したアンドリュー・S・グローブが、長年の経験に基づいて83年に企業の中間管理者を対象に著した経営実践書があった。本書は2015年のアップデート版である。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
“米中”は衝突する運命にある 日本人は読むべき中国脅威論
2017年3月18日号毎年、正月にユーラシア・グループが発表する“世界10大リスク”(地政学リスクの予測)は、日本でも注目されているが、2017年は例年とは様子が違っていた。同グループを率いる国際政治学者のイアン・ブレマーは、発表に際したインタビューで「米国と中国が衝突する可能性が高い」と異様な警戒感を示していたからだ。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
計量分析でマクロに観察した産油国をめぐる“矛盾”の構造
2017年3月11日号最近では出光興産の創業者・出光佐三がモデルの小説『海賊とよばれた男』、古くはジェームズ・ディーン主演の映画「ジャイアンツ」で描かれたごとく、石油はいつの時代も人々の欲望を駆り立ててきたようだ。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
真っ当な仕事に唸らされるトランプ米大統領の「正史」
2017年3月4日号昨今は、書店に「トランプ本」があふれ返っている。多くは、昨年11月の米大統領選挙の結果後に慌てて準備されたもので、評者の目が届く範囲で有益なものは見出し難かった。あえて1冊ということになれば、米「ワシントン・ポスト」紙が突貫作業で仕上げ、文藝春秋が迅速に翻訳した『トランプ』しかあるまい。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
トランプ米大統領誕生で注目 「比較優位理論」の実証に学ぶ
2017年2月25日号若き日のことだった。後年、大経済学者となるポール・サミュエルソンは、同じく大数学者となるスラニスラフ・ウラムから「社会科学の中で、真実であるにもかかわらず自明ではない命題は何か」と問われた。サミュエルソンは思いつかなかったが、30年後にふと考えたのが、デヴィッド・リカードの「比較優位の法則」だった。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
米国社会に警告を発し続ける元労働長官が語る社会改革案
2017年2月18日号結局、米国にはトランプ新大統領が誕生したが、2016年の大統領選挙を彩ったのはサンダース候補だったと私は考える。彼は、中間層の没落に危機感を抱く人々、低賃金にあえぐ若者層などの支持を受けた。そのサンダースを予備選挙で支援したのが、クリントン政権時代の労働長官だったライシュである。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
マイルドデフレ長期化を分析 最新の手法もカバーする好著
2017年2月11日号政府と日本銀行は2013年の初頭に物価安定目標を掲げ、大胆な金融緩和に踏み出した。以降、消費者物価の基調は上昇しつつあるものの、依然として足取りは重い。こうした中で出版された『慢性デフレ 真因の解明』は、執筆者に日銀のリサーチャーのみならず、ビッグデータの研究者も加わる。インフレ・デフレに対する日銀の対応について、多角的なアプローチで考察している好著だ。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
新進気鋭のロシア学者が洞察 プーチン大統領の苦悩の軌跡
2017年2月4日号「強い指導者」。それが、ロシアのプーチン大統領に対する大方のイメージだろう。米国のオバマ前大統領のもたつきを尻目に、国際政治での強硬ぶりと存在感は際立つ。「強いロシア」は、就任当初からのモットーであり、射撃の名手で柔道家、元KGB(国家保安委員会)の工作員という個人像も、そのイメージ形成を補っている。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
英国のビジネス思想家が説く 長寿社会を生き抜く指南の書
2017年1月28日号日本でも多くの読者を獲得した『ワーク・シフト』や『未来企業』で、技術や社会の変化が、仕事とキャリアや企業にどのような変化を起こすかを論じてきた英ロンドンビジネススクールの著名教授が近著で取り上げたテーマは、“長寿化”だ。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
住民主導でドヤ街を改革した経済学者チームの奮闘の記録
2017年1月21日号どこの地方・地域の改革でも、やるべきことは明確になっている場合が多い。しかし、改革は進まず、問題は悪化の一途をたどる。何をすべきかが分かっていることと、それらを実行に移すことは、全く次元の異なる話だ。そこで、改革に必要なノウハウ、テクニック、戦略・戦術、段取りを教えよう──。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
一般の読者に向けて書かれた “政策”を哲学的に考える好著
2017年1月14日号政策を考える場合、「エビデンス(証拠・根拠)」こそが重要との議論が根付いてきた。しかし、エビデンスがあるからといって、それが政策上の解をもたらすとは限らない。例えば、本書で議論されているように、鉄道事故による死者は年平均2人というエビデンスがあったとして、ではそれを防ぐために60億ポンドもの安全対策を講じる必然性はどこに求められるのか。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
失われた20年を経て振り返る 未来のためのバブル経済通史
2016年12月31日号「バブルの時代」というと、いつも出てくるのは東京・港区芝浦にあったジュリアナ東京で踊り狂うボディコン姿の女性たちの映像である。が、あらためて次の世代に対し、1980年代の「あの時代」のことをどう伝えたらよいのか。若い頃にバブルの一端に触れた世代としても、途方に暮れる宿題だ。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
“デジタル・カルチャー最前線” 今後30年間に起こる12の変革
2016年12月24日号仕事柄、海外に出掛けることが多い。今や、スマートホンのおかげで、どこの都市でも、迷わずに最も効率的な経路で目的地にたどり着ける。地元で話題のレストランの予約も、人気がある観劇のチケットの入手も、スマホ一台で可能だ。私たちは、10年前には想像できなかった“便利さ”を享受している。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
ビジネス界から最も縁遠い “芸術界の東大”の生態ルポ
2016年12月17日号東京藝術大学の学園祭「藝祭(げいさい)」は、毎年9月上旬に開催される。この本があと数カ月早く出版されていれば、私は絶対に見に行ったはずだ。東京藝大ほど有名で、ビジネスパーソンに縁のない大学はない。まさに「最後の秘境」といってもよいだろう。藝大生の妻を持つ著者が、学生たちへのインタビューを通して秘境の内側を探検する。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
現代人に特有の病気の原因は腸内微生物群にあったと説く
2016年12月10日号我々の身体は、よく分かっているようでいて、実は科学の“フロンティア”である。本書はまさしく衝撃的な近年の研究を興味深く紹介する。消化器系で栄養分の吸収という主要な機能を営むのは小腸であり、その後に続く大腸は効率の悪い脱水機のようなものだと考えられていた。