記事一覧:野口悠紀雄「超」整理日記 経済・メディア・情報を捌く376件
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野口悠紀雄「超」整理日記 経済・メディア・情報を捌く
雇用情勢の好転でなく 労働力不足の顕在化
2014年9月20日号日本の労働市場に構造的な変化が生じている。有効求人倍率の推移を見ると、リーマンショック後、1を下回る状況が続いていた。しかし、2013年11月に季節調整値が1を超え、その後、継続的に上昇している。14年7月には1.1であった。
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異常に低い長期金利は 過度の金融緩和による
2014年9月13日号先進諸国で長期金利が著しく低下している。10年国債の利回りがアメリカでは2.5%を割り込んでおり、ドイツでは1%割れになった。金利低下は、日本で特に顕著だ。10年国債の利回りは、2010年から12年初めには1%から1.5%程度の間にあったが、13年6月以降ほぼ傾向的に低下し、最近では0.5%を割り込むまでになった。これほどの金利低下が何を意味するのか、それに対して何をなすべきかについて、さまざまな議論が行われている。
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長引く停滞の可能性を示す GDPの予想外の落ち込み
2014年9月6日号2014年4~6月期の実質GDPの対前期比は、1.7%減(年率6.8%減)となった。財貨サービス純輸出の伸びがプラス1.1%となったため、GDPの落ち込みが緩和されている。ただし、純輸出のプラスの伸びは、輸出が増えたためでなく、消費が増えないので輸入が減ったためだ。
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自然利子率の低下は 米国より日本で問題
2014年8月30日号アメリカの元財務長官ローレンス・サマーズが述べた長期停滞論が論議を呼んでいる。彼は、リーマンショック後のアメリカ経済の成長率が2007年ごろに想定されていた成長路線よりかなり低くなっていることを重視し、自然利子率が低下しているとの仮説を提示している。そして、従来行われていた自然利子率推定作業を最近まで引き延ばすと、10年ごろ以降の自然利子率はマイナスになっているとの結果を示した。
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英米経済成長の原因は 製造業の復活ではない
2014年8月23日号2014年第2四半期のイギリスの実質GDPは、リーマンショック前のピークであった08年第1四半期の水準を0.2%上回った。アメリカの実質GDPは、11年にリーマン前のピークを上回っている。こうした英米経済の復活について、製造業の回帰が原因だとする報道が見られる。以下では、この説明は事実とまったく違うことを指摘したい。
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スタグフレーションに 突入しつつある日本
2014年8月9日号政府は、経済財政諮問会議で、2014年度の実質GDP成長率を0.2ポイント引き下げ、1.2%に修正した。日本銀行も、7月の金融政策決定会合で、14年度の実質経済成長率の見通しを0.1ポイント引き下げ、1.0%とした。これらに先立ち、7月の月例経済報告は、基調判断を引き上げた。個人消費の落ち込みが和らいだからだという。しかし、以下に述べるような経済の実態を考えると、判断引き上げは信じられないことだ。
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異常な低金利から 日本は脱却できるか
2014年8月2日号FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)が量的緩和政策の縮小を進めている。FOMC(連邦公開市場委員会)は、6月18日に、債券購入額を月350億ドルにする方針を発表した。これで5会合連続で100億ドルずつ縮小した。
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史上最高値の米株価は 緩和策終了でどうなる?
2014年7月26日号ダウ平均株価は、2009年2月ごろの7000ドル程度からほぼ継続的に上昇してきたが、7月3日に1万7000ドルを超えた。これは、リーマンショック前の最高値(07年夏の1万4000ドル程度)を2割以上超える史上最高値だ。
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人と資本の開国に 背を向ける再興戦略
2014年7月19日号政府は6月24日に、「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)と「日本再興戦略」改訂版(新成長戦略)、規制改革の実行手順を盛り込んだ「規制改革実施計画」を閣議決定した。その中心は、法人税実効税率引き下げと雇用制度改革である。これらに共通する問題は、生産性の高い新しい産業が登場するのでない限り、施策が成長に結び付くことはないということだ。
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ジョン・ローのスキームに 突き進む日本の金融・財政
2014年7月12日号日本銀行の資金循環統計(速報)によれば、2014年3月末の日銀の国債(国庫短期証券、国債、財投債の合計)保有残高は、1年前から73.1兆円(57.2%)増えて、201兆円となった。国債残高に占める日銀の保有割合は20.1%となり、最大の保有主体となった。この比率は、08年秋から量的緩和を行ってきたアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のそれを0.1ポイント上回るものだ。
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金融緩和策の大失敗 300年前からの警告
2014年7月5日号ジョン・ローは、17世紀から18世紀に生きたスコットランド人。財政家とか経済思想家といわれることもあるが、「いかさま師」と呼ばれることの方が多い。決闘で人を殺し、スコットランドを逃げ出してフランスに渡った。ルイ15世の摂政であったオルレアン公爵にうまく取り入って、財務総監になった。
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雇用情勢は改善せず スタグフレーションに
2014年6月28日号雇用情勢が好転しつつあるとの報道が、今年の春ごろから数多くなされた。春闘で賃上げを行う企業が相次いだこと、大学新卒者の求人倍率や、有効求人倍率が高まったことなどが報道された。さらに、「人手不足」が深刻化し、そのために閉店に追い込まれた事例などが報道された。最近では、トヨタ自動車も人手不足のために生産拡大に支障が生じているとされる。
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反動減から回復しても 成長が続くわけではない
2014年6月21日号今年の1~3月期における経済指標は、かなり顕著な伸びを示した。実質GDP(6月9日に発表された速報値)は、季節調整済前期比年率で6.7%増となった。内訳を見ると、実質家計最終消費支出が前期比年率で9.4%増だ。これは、1994年以降で最高の伸びである。
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益金不算入なければ 実効税率は26.6%に
2014年6月14日号現在の日本では、法人税を払っていない法人がほとんどだ。このことは、よく知られている。それを理由として、「だから、法人税を減税しても効果がない」といわれることがある。しかし、これは、いささか荒っぽい議論だ。事態をもう少し詳しく見る必要がある。以下ではそうした観点から、現在の日本の法人税を見よう。なお、以下の計数は、全て2012年度のものである。
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欠損法人の配当が もたらすゆがみ
2014年6月7日号法人税論議において、課税ベースを広げることによって法人税率を下げるべきだとの議論がある。その一環として、配当の益金不算入措置の見直しが問題になっている。私は見直しに賛成だ。この措置は、特別措置ではなく、法人税制の本来の措置である。それが必要とされる理由として、次のような説明がなされる。
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法人税率に関する 最重要論点は何か
2014年5月31日号法人税率論議の中で、「法人税のパラドックス」に言及されることがある。これは、EU諸国で法人税率を下げたにもかかわらず、法人税収が目立って減少しなかった現象を指す。これについて、次の3点を述べたい。
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国債の貨幣化は どこまで続くか?
2014年5月24日号国債の残高は増え続けているので、常識的に考えると、利回りが上昇するはずだ。そうなれば、国債の市中消化は難しくなる。そのため、増税や歳出削減を行わざるを得なくなる。つまり、歳出を国債で賄っていたとしても、際限なく財政赤字を拡大できるわけではなく、それを抑制するようなメカニズムが働くはずだ。
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送金コスト引き下げは 重要な成長戦略
2014年5月17日号国際送金に関する世界銀行の調査によれば、日本から海外に送金するコストは極めて高い。2013年にはコストが送金額の14.4%だが、数年前まで17%を超える場合が多かった。G20諸国の中では南アフリカ共和国が19.8%であるのに次いで高い。アメリカからの送金コスト率が5.8%であるのに比べると、異常に高い。世界全体の平均が8.4%であるのに比べても高い。日本から韓国や中国に送金する場合のコスト率は、30%を超える。これは、世界で最もコストが高い送金経路であるとされる。
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新しい技術の意義は 過小評価される
2014年5月3日号前回述べたように、経済学者や投資家、経営者は、ビットコインに対して否定的だ。これを見ていると、インターネットが普及し始めたころのことを思い出す。FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の元議長アラン・グリーンスパンの回想録『波乱の時代』には、ビル・クリントン大統領がIT革命に期待を寄せ過ぎているので、当時の財務次官ローレンス・サマーズが懸念していたと記されている。
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重要なのは基本構造 ビットコイン改善提案
2014年4月26日号ゴールドマン・サックスは、3月11日に発表したビットコインに関する報告書の中で、「ビットコインは通貨ではない。その信奉者は頭を冷やして出直すべきだ」と述べた。この報告が問題視しているのは、ビットコインの価格変動が激しく、価値保存手段として適切でないことだ。