記事一覧:野口悠紀雄「超」整理日記 経済・メディア・情報を捌く376件
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野口悠紀雄「超」整理日記 経済・メディア・情報を捌く
原油価格の低下で 貿易赤字が減少する
2015年2月14日号「貿易統計」(速報値)によると、2014年の輸出は73.1兆円で対前年比4.8%増、輸入は85.9兆円で5.7%増、貿易収支赤字は12.8兆円で、過去最大(対前年比11.4%増)となった。輸入増加の大きな原因は、火力発電用の燃料の液化天然ガス(LNG)の輸入が増えたことだ(7.8兆円。対前年比11.2%増、寄与度1.0%)。なお、後述のように、原油の輸入が減少している。輸出では、自動車の増加が顕著だった(対前年比4.9%増、寄与度0.7%)。
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国民負担で支えられる 日本の異常な金利低下
2015年2月7日号日本の金利が低下している。10年国債の利回りは、2014年前半には0.6~0.7%程度であったが、15年1月には0.3%を割り込んでいる。さらに、マイナス金利が発生するようになった。2年債利回りは、14年12月初めにマイナスになり、中旬以降は継続してマイナスである。3年債利回りも12月下旬から継続してマイナスだ。5年債利回りもゼロに近づいている。これは、流通市場でのものだが、発行市場においてもマイナス金利が発生している。10月に、償還期間3カ月の国庫短期証券の平均落札利回りがマイナスになった。
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円安の賃金引き下げ効果 原油価格下落で明らかに
2015年1月31日号原油価格は、2014年夏には1バレル100ドル程度だったが、15年1月中旬には40ドル台にまで下がった。数カ月で半分以下になったわけだ。1年程度の期間で見れば、異常なことのように思われる。しかし、長期的趨勢を見れば、「下がっている」というより、ここ数年上がり過ぎていたのが元に戻ったのだということがすぐに分かる。
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株式の値上がり益に 課税しなくてよいか?
2015年1月24日号株価の上昇によって、株式保有者の金融資産額は、この数年間で大きく増えた。その状況は、日本銀行の資金循環統計によって知ることができる。それによると、家計の金融資産残高は、2012年9月期から14年9月期までの2年間で約141兆円増加した。増価総額中のシェアは、流動性預金が20.0%、投資信託受益証券が21.1%、株式・出資金が41.6%(うち株式が24.2%)、保険・年金準備金が13.4%だ。
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コストプッシュか 需要プルかが問題
2015年1月17日号日本銀行は、「消費者物価上昇率を2%程度にする」とのインフレ目標を掲げている。この目標は達成できるだろうか?シミュレーション分析を行うと、この答えはほぼ明らかだ。まず、期限とされている2015年4月の消費者物価上昇率は、0.4%程度になる。これは、輸入物価のこれまでの推移から、ほぼ確実に予測される。
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いまこそ財政再建に 正面から向き合え
2015年1月10日号総選挙を通じて明らかになったのは、「財政再建は絶望的」ということだ。安倍晋三政権は消費税増税を先送りしたが、それに対して異を唱える政党はなかった。驚くべきは、政権時代に消費税増税を決めた民主党が延期に反対しなかったことだ。
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際限なき円安期待を 煽った日銀追加緩和
2014年12月27日号円ドルレートは、2013年5月に1ドル=100円になってから1年半程度の期間、ほぼ99円から104円程度の範囲で安定的だった。ところが14年の9月以降、円安が進行した。そして、日本銀行が追加緩和措置を発表した10月末以降、特に顕著な円安が進行した。変化は、12年秋から13年春にかけての円安より急速なピッチだった。
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トリクルダウンは なぜ生じないか?
2014年12月20日号トリクルダウンとは、「豊かな者がより豊かになれば、その恩恵は社会全体に及ぶ」という考えだ。自民党は、アベノミクスを正当化する論理としてこれを用いている。これまでは株価が上がって一部の富裕層が利益を得ただけだが、その恩恵はやがて貧しい者にも及ぶというのだ。
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早急に手当てが必要な 円安による分配の歪み
2014年12月13日号先般公表された7~9月期のGDP速報で実質GDPが2期連続のマイナス成長になった主な要因は、前回述べたように、一時的な需要が剥落したためだ。ただし、それだけではない。実質消費の減少も大きな要因だ。その原因としては、駆け込み需要の反動や消費税増税の影響の他、円安による消費者物価上昇もある。
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GDP統計が暴露した 日本経済の厳しい現実
2014年12月6日号実質GDPが2期連続のマイナス成長になった。これを受けて株価が暴落した。GDP統計は、「アベノミクス」と呼ばれるものの中身が何であるかを暴露した。
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増税是非判断に必要な 景気悪化の原因究明
2014年11月29日号消費税の税率は2015年10月に10%に引き上げることが法律で定められているが、安倍晋三首相は、この引き上げを延期ないし見送るために、衆議院を解散し、総選挙を行うこととした。増税延期の論拠は、現在の景気情勢が良くないということだ。景気状況が悪いのは事実だ。ただ、それを増税是非の判断材料とするには、どこがどう悪いのか、なぜ悪いのかを明らかにする必要がある。そうした検討なしに増税の可否だけを問えば、増税反対が多数となることは明らかだ。それでは、政治的にあまりに無責任である(なお、増税の是非を問う総選挙はすでに12年12月に行われている。今回再び同じ問題を問うことの意味も説明されねばならない)。
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追加金融緩和が広げる 金融市場と経済の歪み
2014年11月22日号日本銀行は、10月末の金融政策決定会合で、追加金融緩和を行うことを決定した。これまで、マネタリーベースを年間60兆~70兆円増やすとしてきたが、これを80兆円に拡大する。長期国債の買い入れ規模を、現在の年間約50兆円から80兆円に増額する。満期までの期間の平均も、最大3年程度延長して7~10年にする。
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蘇ったニューヨーク 成長は今後も続くか?
2014年11月15日号久しぶりにニューヨーク市を訪れて、その変貌ぶりに驚いた。空港のビルを出てまず、タクシーが全て新車になっているのに驚く。まさに文字通りの新車で、ピカピカに光っている。マンハッタン島に入るミッドタウントンネルは、壁のタイルがすっかり新しくなった。ごみだらけだった街から、ごみが消えうせ、代わりに、フラワーポットが目立つ。ホームレスは皆無ではないが、ほとんど見掛けない。
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産業構造の違いが 米と日欧の基本的な差
2014年11月8日号世界経済の停滞を指摘する声が多い。昨年末のローレンス・サマーズの長期停滞論に続き、国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事も、世界経済の成長が弱まっていることを指摘した。先般のG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)でも、先進国の経済下振れが表明された。原油価格も、世界経済減速の懸念から、下落している。ドイツの輸出も急減した。
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アメリカの問題は分配 日本の問題は産業構造
2014年11月1日号アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が金融緩和からの脱却を図りつつあるのは、経済が好調だからだ。実質GDPは、2010年ごろから継続して前年比2%程度で成長している。その結果、13年の実質GDPは、リーマンショック前のピーク(07年)に比べて5.6%ほど大きくなった。国際通貨基金(IMF)の予測では、今後実質GDP成長率は加速して、3%前後になる。
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人口構造の変化による 産業構造の大きな変化
2014年10月25日号大手予備校の「代々木ゼミナール」(代ゼミ)が、全国27カ所ある校舎のうち20カ所を来年3月末で閉鎖すると8月25日に発表した。これには、同ゼミに固有の事情もあると指摘されている。しかし、背後にある条件変化は、一般的なものだ。教育サービスに対する需要が、少なくとも量的な意味では減少しているのだ。
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求職減での賃金上昇で スタグフレーションへ
2014年10月18日号有効求人倍率が上昇しているが、これは労働に対する需要の増加よりは、労働供給の減少によるところが大きい。本連載の第725回(9月20日号)で、このように述べた。重要な問題なので、さらに詳しく論じることとしたい。
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円の購買力の大幅低下 その原因と影響は?
2014年10月11日号為替レートについての議論のほとんどは、名目の為替レートについて行われている。しかし、経済的な問題を考えるには、物価の変動を調整した実質為替レートを見る必要がある。さまざまな国との間の実質為替レートの加重平均である実質実効為替レートが、日本銀行によって作成されている。
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円安を放置するのは 危険な選択になった
2014年10月4日号2014年2月ごろから1ドル=101~102円程度の範囲にあった円ドルレートが、8月下旬から円安方向に動き、9月下旬には108円程度となった。これは、リーマンショック直後とほぼ同程度の水準だ。つまり、名目円ドルレートは、6年ぶりの円安になったことになる。
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地方を活性化するため 何を目標とすべきか?
2014年9月27日号改造後の安倍晋三内閣は、「地方創生」を打ち出し、「地方活性化を経済政策の最優先目標にする」とした。これに対する新聞投書欄等での反応には、「私の町にも国がさまざまの施設を造ってほしい」という類いの意見が見られる。「地方振興とは、国が地方に補助金を支出したり、地方で公共事業を行うことだ」と考えている人が、いまだに多い。