記事一覧:野口悠紀雄「超」整理日記 経済・メディア・情報を捌く376件
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野口悠紀雄「超」整理日記 経済・メディア・情報を捌く
ハイエクの理想が 現実化しつつある
2014年4月19日号フリードリッヒ・フォン・ハイエクは、1976年に刊行したDenationalisation of Money(『貨幣の非国家化』)において、貨幣発行の自由化を主張した(本書の90年版は、Ludwig von Mises Instituteがウェブに公開しているので、全文を読むことができる。以下、ページ数は90年版)。
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財政ファイナンスを 仮想通貨が阻止する
2014年4月12日号異次元金融緩和政策が導入されてからほぼ1年がたった。この間に、マネタリーベースは著しく増えた。しかし、マネーストックはほとんど増えなかった。長期的な傾向からすると伸び率は若干高まっているが、それは、消費税増税前の住宅駆け込み需要によって住宅ローンが増えたためであって、マネタリーベースが増加した結果ではない。消費税が増税されれば、反動で減少するだろう。
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ビットコインが持つ 経済価値はどの程度か
2014年4月5日号昨年12月に、バンク・オブ・アメリカ=メリルリンチは、ビットコインに関するレポート(以下、「BAレポート」)を公表した。大手金融機関による最初のレポートであり、しかも、ビットコインの経済価値についての定量的な分析なので、興味深い。
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ビットコインは 地球通貨の夢を見るか?
2014年3月29日号ビットコインを用いれば、地球上どこへでも、ほぼゼロのコストで送金できる。このことの意味は極めて大きい。これによってどのような変化が生じるだろうか? 三つの段階に分けて考えてみよう。
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ビットコインに関して 政府がなすべきこと
2014年3月22日号ビットコインについて、「騒ぎ過ぎ」と、「騒がな過ぎ」が見られる。ビットコインの外にある一両替所の閉鎖を大々的に報じるのは、明らかに「騒ぎ過ぎ」だ。しかし、「騒がな過ぎ」もある。それは、ビットコインが社会に与え得るインパクトの巨大さが認識されていないことだ。
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ビットコインに関する 深刻な誤報と誤解
2014年3月15日号「私が死亡したとの報道は、誇張された誤報だ」これは、マーク・トウェインの有名な言葉である(原文は、The report of my death was an exaggeration. 少し意訳してある)。死にかかっていたのは、彼ではなく、彼のいとこだった。
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GDP伸びは連続低下 一時しのぎは終わった
2014年3月8日号GDP速報によれば、2013年10~12月期の実質GDP成長率は1.0%となった(季節調整済み年率、以下同様)。7~9月期の1.1%から0.1ポイントの低下だ。1~3月期が4.8%、4~6月期が3.9%だったから、安倍内閣が発足し、異次元金融緩和が導入されて以降、成長率が低下し続けていることになる。
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ビットコインは 理想通貨か徒花か?
2014年3月1日号ビットコインとは、インターネット上で用い得る仮想通貨である。誰でも簡単に利用することができる。ウェブにいくつかの両替所があるので、そこで入手する。ビットコインを受け入れる店舗(大部分はネットショップ)で買い物をして、対価をビットコインで支払う。全世界での現在の残高は、約1兆円。利用者も店舗もアメリカに多い。
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短期的期待でなく 長期的期待が重要
2014年2月22日号世界の株式市場が大きく変動している。日本の株価も乱高下している。株価の今後の推移には、まだはっきりしないところがある。しかし、株価の上昇が基本的に円安だけに支えられたものであり、実体経済での革新に支えられたものではなかったことは明らかだ。生産性の高い新しい産業が生まれたために株価が上昇したのではないのである。その意味では、典型的なバブルだった。
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輸出立国に執着せず 所得収支に目を向けよ
2014年2月15日号2013年の貿易収支は11兆4803億円の赤字となり、年ベースで過去最大となった。貿易赤字が拡大した原因は、二つある。第1は、鉱物性燃料の輸入を中心として輸入が増えていること、第2は、円安が進行したにもかかわらず、輸出数量が伸びないことだ。いずれも一時的な要因ではなく、構造的な要因である。したがって、貿易赤字は、今後も継続するだろう。貿易立国、輸出立国の基盤はすでに崩壊していると考えざるを得ない。
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住宅貸し出しで高まった マネーストック伸び
2014年2月8日号2013年4月の異次元金融緩和導入時点において、日本銀行はマネタリーベースの目標値は示したが、マネーストックの目標値は示さなかった。金融政策の効果はマネーストックがどの程度増えるかにかかっているのだから、これについての目標値がなかったのは不思議なことだ。
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マイナスもあり得る 2014年度の成長率
2014年2月1日号2014年度の実質経済成長率は、マイナスになる可能性が高い。その理由は、GDP統計が示すデータに見いだせる。13年7~9月期の実質GDP成長率(季節調整済み年率。以下同)は1.1%だったが、公的固定資本形成(公共投資)の寄与度が1.2%あった。つまり、経済成長は公共投資に支えられたものだったのだ。実際、公共投資の成長率は、4~6月期から引き続いて30%近い異常な高さであった。仮にこれがなくなれば、7~9月期において経済はマイナス成長に落ち込んでいたはずなのである。
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米金融緩和縮小より ユーロの動向が重要
2014年1月25日号2013年末に、アメリカ金融緩和策の縮小が決定された。アメリカ株式市場はこれを歓迎し、株価が上昇した。日本の株価も追随した。円安がさらに進むとの見方もある。以下ではこうした動きの背後にある国際的投機資金の動きを分析し、日本経済への影響を考えることとしたい。
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オリンピック開催は 公共事業のためか?
2014年1月18日号オリンピック東京大会が決まったときのマスメディアの反応は、「めでたいことだ。これが日本再生のきっかけになる」というものだった。ただしそれは、「これによって日本人の体力が向上する」という意味ではない。「大会準備のための投資が、日本経済に新たな需要をもたらすと期待される」という意味である。事実、オリンピックの経済効果に関する分析が、その後いくつも発表された。「アベノミクスの第4の矢になる」との意見も表明された。
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円安による費用増の 約7割は企業が負担
2014年1月11日号円安による輸入価格の上昇分は、どう負担されてきただろうか? 消費者物価の上昇で、消費者の負担が増えたことは、広く認識されている。しかし、実際にはもう少し複雑である。以下では、これについての分析を行おう。
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異次元金融緩和後に 企業利益は減少した
2013年12月28日号法人企業統計は、日本経済が陥りつつある困難な状況を、明確に示している。売り上げがあまり伸びず、設備投資も伸びない。それだけでなく、企業利益も減少し始めたのである。2013年7~9月期の季節調整済み経常利益の対前期比増加率は、全産業では▲1.6%、製造業では▲5.2%となった。利益が減っているという事実は、多くの人にとっては意外なニュースであろう。そう受け止められる理由は二つある。
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金利差が説明しない 為替レートの変化
2013年12月21日号今年の春以降ほぼ膠着状態にあった株価に、11月中旬以降動意が見られる。これは円安が進んでいるからだ。以下では、為替レートを変動させるメカニズムについて考えたい。これまで、為替レートは、内外金利差で説明されることが多かった。特に、2年国債利回りと為替レートの相関が高いと言われていた。実際、リーマンショック以前に進展した円安は、日米金利差の拡大によってほぼ完全に説明できる。また、2007年ごろからの急激な円高も、日米金利差の縮小によって説明できる。
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空回りを続けている 異次元金融緩和措置
2013年12月14日号マネーストックの対前年増加率は、10月にはM3で見て3.3%となった。これは、貨幣残高の定義がマネーストックに切り替えられて以来、最大の伸び率である。これを見て、「異次元金融緩和の効果が出てきた」との印象を持った人が多いだろう。しかし、その印象は、統計の数字の示し方によって生じる一種の錯覚にすぎない。実際には、マネーストック残高は、今年の6月以降ほとんど増加しておらず、金融緩和政策は「空回り」を続けているのである。この間の事情を以下に説明しよう。
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物価が上昇したため 実質成長率が下がった
2013年12月7日号2013年7~9月期のGDP(国内総生産)速報値の内容で最も重要なのは、実質消費の伸びが、物価上昇のために鈍化したことだ。これは、デフレ脱却を経済政策の目標に置く政府・日本銀行の考えが、基本的に誤っていることを意味している。そして、円安に起因する物価上昇を、早急に抑える必要があることを示している。
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企業利益は増加するが 正規雇用は増えない
2013年11月30日号2013年9月期の中間決算で、上場企業の利益増発表が相次いだ。問題は、利益増が経済全体の好循環を引き起こすかどうかだ。ここで「好循環」とは、次のようなプロセスを指す。企業が雇用を増やし、賃金が上昇する。労働者の所得が増えて消費が増える。また、企業が設備投資を増やす。こうしたことによって、経済全体の需要が増え、それが国内生産を増やす。そして、自律的な内需中心の成長が始まる。