記事一覧:野口悠紀雄「超」整理日記 経済・メディア・情報を捌く376件
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野口悠紀雄「超」整理日記 経済・メディア・情報を捌く
マイナス成長は構造的 需要拡大策は解でない
2015年12月5日号2015年7~9月期の実質GDPは、前期比0.2%減(年率換算で0.8%減)となった。4~6月期(年率換算で0.7%減)から2四半期連続のマイナス成長だ。4~6月期のマイナス成長は、一時的なものと考えられた。そして今回は、単に景気回復の遅れと捉えられている。いずれも、時間がたてば回復するから、真剣に心配することはないという理解だ。しかも、株価が堅調なので、日本経済に大きな問題はないだろう。多くの人はこのように考えている。
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ペイパルの不在に見る 日本型金融規制の問題
2015年11月28日号アメリカのオンライン送金サービス提供会社ペイパルは、今年7月、親会社のイーベイから独立して再上場。時価総額が約6兆円になった。これは、みずほフィナンシャルグループのそれとほぼ同じだ。
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フィンテックは 銀行業を変えるか?
2015年11月21日号いま金融業に大きな変化が起きている。それは、フィンテックと呼ばれる技術革新だ。モバイル決済やインターネットを通じた資金調達などの新しいサービスの提供が始まっている(詳細は、ダイヤモンド・オンライン連載の「新しい経済秩序を求めて」を参照)。また、ビットコインの基礎技術であるブロックチェーン技術を送金サービスに用いる実験に銀行が取り組んでいるし、ナスダックがその技術を証券取引に導入しようとしている。
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携帯料金の引き下げで 物価が下がるのを歓迎
2015年11月14日号安倍晋三首相は、9月の経済財政諮問会議で、携帯電話料金の見直しを求める発言を行った。これを受け総務省に9月末に設置された「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」は、年内の結論を目指して検討を始めている。携帯電話料金の引き下げはいいことだ。政府は、物価を上げようとする日本銀行とは明らかに異なる路線を歩みだした。このような変化を、歓迎したい。
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増大する社会保障費を 支える消費税制度とは
2015年11月7日号消費税の軽減税率をいかに導入するかが問題となっている。この背後には、社会保障関係費が今後増大せざるを得ず、従って消費税の税率を今後も高めなければならないという事情がある。
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「新しい3本の矢」 という奇妙な経済政策
2015年10月31日号安倍晋三首相は、2015年9月の記者会見で、「新しい3本の矢」の構想を打ち出した。以下では、果たして目的が達成できるかどうかを中心として、この構想を検討する。第1の矢は、14年度では491兆円である日本の名目GDPを、20年度に600兆円にするというものだ。この目標は、内閣府が15年7月に公表した「中長期の経済財政に関する試算」の計数と同じなので、それを参考にすることができる。
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音声認識の劇的進歩で 仕事が大きく変わる
2015年10月24日号コンピュータの音声認識能力は、ここ18カ月間に劇的に向上した。これは、過去15年間の実績を上回る進歩といわれる。アップルは、2015年6月に、Siriの音声認識精度が「業界最高」になったと発表した。単語誤認率を40%低減させて5%にしたそうだ。グーグルは、グーグル・ナウの単語誤認率が13年に23%であったものを8%に低下させたと発表した。これほど短期間で、これほど急激な進歩を示した技術はいままでなかった。
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人工知能が作る社会で 創作者の地位は?
2015年10月17日号前回、音声認識入力機能を使って文章を書くことについて述べた。音声認識はパタン認識の一種だが、これは極めて難しい技術だ。パタン認識は、コンピュータが人間に比べて最も劣る分野であるとされてきた。一昔前まで、音声認識のためには、自分の声をコンピュータに教え、調教しなければならなかった。5年前でさえ、この技術は、実用的にならなかった。人工知能的な方法を用いることにより、音声入力が実用的になってきたのだ。
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人工知能を利用して 文章を簡単に書く方法
2015年10月10日号人工知能は、すでにわれわれの身近な生活を変えている。私の場合について言うと、文章の書き方が大きく変わった。実際、この文章は人工知能を使って書いた。といっても、巨大なコンピュータが現れて、私の代筆をしてくれたわけではない。私がスマートフォンを使って書いたのだ。
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大企業の不正会計は どうすれば防げるか
2015年10月3日号東芝の室町正志社長は、不正会計問題に関する9月7日の会見で、「株主などのステークホルダーの皆さま方に心から謝罪する」と述べた。これを聞いて私は心の底から驚いた。なぜなら、株主はステークホルダーではないからである。ステークホルダーとは利害関係者のことであって、顧客、取引先、従業員などがそれに当たる。
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IoTで繋げるだけでは いいトーストはできない
2015年9月26日号IoTという言葉が流行語になり、頻繁に聞かれるようになった。最初に、IoTに関する基礎的な事項を復習しておこう。これはInternet of Thingsの略であり、「モノのインターネット」という意味である。これまでインターネットに接続していたのは、PC(パソコン)やスマートフォンなどの情報機器だった。それを、「全てのモノ」に広げようとする試みだ。インターネットに接続する機器の数は、1975年には1万くらいだったが、2009年には約25億になった。いまは100億くらいだ。50年には1000億を超えると予測されている。そうなれば、あらゆるモノから情報が送られてくるので、それをさまざまな用途に活用することができる。
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ビットコイン技術が 金融業を大きく変える
2015年9月19日号ビットコインの基礎技術が、いまアメリカの金融業を根底から変えようとしている。金融機関がビットコインに関心を持ったのは、2013年の末だった。しかし、当時は、仮想通貨の価格変動の大きさと投機的な側面に注目が集まったため、金融機関はビットコインにネガティブな評価を下していた。例えば、JPモルガン・チェースのCEOであるジェームズ・ダイモンは、ビットコインはオランダのチューリップ球根バブルのようなものだと嘲笑した。
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世界的な株価下落は リスクオフの最終段階
2015年9月12日号世界各国の株価が大きく下落した。この原因として一般に指摘されているのは、中国経済の減速だ。確かに中国経済は減速しているし、中国の株価も下落している。これがもたらす心理的影響は大きいだろう。しかし、前回にも述べたように、中国株式市場は世界の金融市場から隔離されているし、中国への輸出減少が先進国経済に与える打撃も限定的だ。とりわけ、アメリカ経済は、対中輸出減で大きな影響を受けることはない。従って、中国の問題が世界株安の原因だという見方は、表面的なものだと言わざるを得ない。
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混迷を続ける世界経済 日本もマイナス成長に
2015年9月5日号世界経済は、リーマンショック後の新しい均衡に達していない。リーマン前の2007年を100として15年の実質GDP(IMFによる推計値)を見ると、アメリカ111.5、ドイツ106.7、イギリス106.5、日本101.7となっている。つまり、主要先進国の中でアメリカだけがずばぬけて高く、日本が低迷している。ヨーロッパがこれらの中間だ。主要先進国の中でアメリカだけがリーマンショックの経済的混乱から脱却したことが分かる。実体経済面でも、IT関連の技術革新が次々に生まれ、経済を活性化している。この連載でも指摘してきたように、こうした新しい技術は、従来の参入規制の抜本的見直しを要求しており、市場経済の姿を大きく変えようとしている。
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ウーバー型サービスが ビットコインにも登場
2015年8月29日号ビットコインは、新興国への送金手段として急成長している。その一つに、「ハロービット」(Hellobit)がある。これは、ビットコイン送金者と現地通貨の両替者を結ぶスマートフォンのアプリだ。ハロービットのホームページにある解説によると、次のように機能する。
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物価指数の操作でなく インフレ目標の撤廃を
2015年8月22日号消費者物価指数を見直そうという議論が行われている。一つは、昨年秋から原油価格が下落して消費者物価を押し下げているから、エネルギー関係を除く方がよいという意見である。日本銀行は、「金融経済月報」で、7月から生鮮食料品とエネルギーを除く新しい物価指数を掲載している。そして、この新しい指数は、1~2月をボトムに再び伸びが高まっていると指摘している。また、物価が上昇した品目数が増えていることを示すグラフも掲載している。
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年金機構の情報漏えいから 何を学ぶべきか?
2015年8月8日号日本年金機構の情報漏えい問題を検証する厚生労働省の第三者委員会は、中間報告を8月中旬に出すことを決めた。被害の全容解明や犯人の特定が難航しているため、最終報告ではなく、途中経過を公表する方針に転換したものだ。
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ギリシャがユーロ離脱を望まぬのはなぜか?
2015年8月1日号ギリシャ国民は、ユーロ離脱を望んでいない。世論調査では、約8割の国民はユーロ離脱を望んでいないという。ユーロを離脱すれば、増税や年金カットなどを実行しなくて済む。それなのに、そのオプションを取ろうとしない。なぜか?ユーロ情勢を考える際に最も重要な論点はここにあると思うのだが、報道はその点を十分解説していない。そこで、これについて考えることとしよう。
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日本を「ソ連化」する 安倍内閣の成長戦略
2015年7月25日号政府が6月30日に閣議決定した成長戦略(「日本再興戦略」改訂2015)を興味深く読んだ。興味深いと思った第1の理由は、「デフレ脱却による需要追加(第1ステージ)から、供給制約を乗り越える生産性革命(第2ステージ)に入った」としていることだ。
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フリーランスの増加で 大変化する米労働市場
2015年7月18日号アメリカでフリーランサーが増えている。これは、組織に属さず、個人ベースで仕事をする人だ。フリーランサーの数は、正確には分からないが、アメリカでは4人に1人といわれる(日本では40人に1人)。5000万人を超すとの報道もある。フリーランサーは、日本の非正規労働者やパートタイマーとは違う。