記事一覧:Book Reviews オフタイムの楽しみ418

  • 【スポーツ・ホビー】スポーツの快楽に迫る尋常じゃない著者の思い入れ

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    【スポーツ・ホビー】 スポーツの快楽に迫る 尋常じゃない著者の思い入れ

    2013年7月13日号  

    今回の3冊はいずれも半端じゃないというか、テーマや対象に対する著者の思い入れが尋常じゃないものを紹介させていただこう。まずは『ボールピープル』。この本好きだな。というかズルい。洒脱なエッセーに加えて、その状況を一瞬のうちに理解させる写真が、時間と空間を超えて読者を現場に連れ去ってしまう。しかもいつでもボールが転がっている地球の隅々までがフィールドだ。ドラッグの売人もお坊さんもマサイ族もサッカーをやっている。

  • 【ファッション】ファッション写真で読み解く着こなし上達のコツ

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    【ファッション】 ファッション写真で読み解く 着こなし上達のコツ

    2013年7月6日号  

    トレンド優先の販売手法を百貨店が取り入れて好評だが、『大人の男のオシャレ塾』は、そんな新百貨店のスタイリストが監修したノウハウ本である。装いを上達させるには、ファッション写真を上手に読み解くのが鍵。その辞書の役割を果たすのが本書である。ジャケットの項ではパンツやニットなどの基本組み合わせを紹介。次に色や素材を変化させての応用を実例写真を多く挙げてわかりやすく解説している。色相環表やトーン表を使って色合わせを理論的に解いているのも画期的だ。解説文が少し言葉足らずになってしまった点が惜しい。

  • 【料理・食文化】「人間味」という味が結局一番おいしい

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    【料理・食文化】 「人間味」という味が 結局一番おいしい

    2013年6月29日号  

    昨秋、レストランで客をもてなすサービスの世界一を決めるコンクールが日本で開かれ、その大会で優勝したのが恵比寿の名店で働く宮崎辰さんだった。その本人がサービスの極意を説き明かしたのが『世界一のおもてなし』である。コンクールに臨むまでの様子をたどりながら、「人をもてなす」とはどういうことかをわかりやすく述べている。コンクールでは、制限された時間内で桁違いのプロフェッショナルの技術が要求されるが、サービスの基本は「人間が好き」という意外なほどシンプルな答えに思えた。

  • 【読書】本の世界に革命を起こした出版界のミケランジェロ

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    【読書】 本の世界に革命を起こした 出版界のミケランジェロ

    2013年6月22日号  

    私たちは文庫本や新書といった小型の本を持ち歩き、読書を楽しみとしているが、これができるのもある人物のおかげである。その人の名は、アルド・マヌーツィオ。16世紀のヴェネツィアで活躍した人で、もっぱら祈祷や勉強のためにあった本を娯楽の対象とし、重い本を小型化してくれた「出版界のミケランジェロ」である。当時のヴェネツィアは世界の出版の中心地で、多言語の書物、楽譜、料理本など多様な本を作っていたそうだ。『そのとき、本が生まれた』は、ヴェネツィアで起こった「本の革命」についての知られざる歴史を語ってくれる。電子書籍が登場した今、本と読者の関係を考えさせられる一冊だ。

  • 【酒・酒文化】ソムリエ世界一を決める過酷で非情なたたかい

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    【酒・酒文化】 ソムリエ世界一を決める 過酷で非情なたたかい

    2013年6月15日号  

    レストランで客の要望に応じてワインを選定・提供するワインの専門職ソムリエ。昨今、日本でも知られるようになった職業だが、世界各地から選び抜かれたソムリエたちの世界一を決める大会は過酷で非情だ。『たたかうソムリエ』は、2010年にチリで開催されたソムリエ世界大会のドキュメント。中でもブラインドテイスティングによって、ワインの産地や銘柄だけでなく、製造年やブドウの品種までをも探り当てようとする様は圧巻だ。

  • 【ミステリー】緊迫感あふれるアクションに物語の面白さを加えた冒険小説

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    【ミステリー】 緊迫感あふれるアクションに 物語の面白さを加えた冒険小説

    2013年6月8日号  

    まったくうまい。東野圭吾『夢幻花』だ。まずプロローグが二つ。一つは夫婦が街を歩いているときに暴漢に襲われる話。もう一つは、台東区入谷の朝顔市で同い年の孝美と知り合った中学生の蒼太が、彼女と会えなくなるまでの話。ここから始まる物語だが、メインストーリーが始まっても最初のうちはなかなか全貌が見えてこない。

  • 【映画(DVD)】異ジャンルの作品で考える“日本的とは何だろう”

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    【映画(DVD)】 異ジャンルの作品で考える “日本的とは何だろう”

    2013年6月1日号  

    忘れていけないのは1960、70年代に“帰国(還)事業”という運動が盛んに行われたことだ。在日朝鮮人が北朝鮮に帰って祖国建設に従事するのを支援しよう、かの国は社会保障完備の理想国家をつくりつつある──わが国の進歩的文化人、メディアはこぞって声をそろえ、10万人近い人が、少なくとも7000人近くの日本国籍の妻子を連れて帰った。その後のことは言うまでもない。家族の一部だけが帰鮮した例もある。映画『かぞくのくに』では主人公(話題の新人、安藤サクラ)の兄がそうだ。その兄が脳腫瘍の治療を受けに十何年ぶりに日本に来た。北朝鮮の監視員を連れて──。

  • 【コミック】本格派からパロディ派まで注目のSF系新人たち

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    【コミック】 本格派からパロディ派まで 注目のSF系新人たち

    2013年5月25日号  

    読み応えのあるSFを描く新人が登場した。庄司創『三文未来の家庭訪問』は、短編3本を収めた作品集。SFといっても分野はいろいろあるが、この著者が描くのはアイデアの「センス・オブ・ワンダー」で正面から勝負する本格派の作品だ。絵柄はおとなしく、表現もかなり地味だが、だからこそ内容の面白さや構成の妙が際立つ。SF的な展開が人間ドラマときちんと結びついており、感銘深い読後感を残す。かつて藤子不二雄が得意にしたSF短編シリーズなどが好きな人には、ぜひお薦めしたい。

  • 【科学読み物】生物学と数学の融合が進み素粒子やウイルスに迫る科学

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    【科学読み物】 生物学と数学の融合が進み 素粒子やウイルスに迫る科学

    2013年5月18日号  

    『数学で生命の謎を解く』は、数学者の手になる生物学の啓蒙書だ。生物学の知の体系に数理の発想を絡めたことで、読者の思索力を刺激する読み物となっている。生物学は、顕微鏡の発明やDNAの構造の発見など五つの大革命を体験してきたと著者は言う。そのいずれにも数学が関係しているが、現在は一段と生物学との距離が縮まり、第6の革命に向かっているという位置付けだ。

  • 【子育て・教育】「叱る・たたく」はナンセンス問いかけて考えさせる時代に

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    【子育て・教育】 「叱る・たたく」はナンセンス 問いかけて考えさせる時代に

    2013年5月11日号  

    体罰問題を契機に「叱る・たたく」の従来型指導が根本から問い直されている。一方で「スポーツでは叱る・たたくも必要」という考えも根強い。それに異議を唱えるのが池上正著『叱らず、問いかける 子どもをぐんぐん伸ばす対話力』だ。氏は京都サンガなどで長年ジュニア指導をしてきたプロのコーチだ。

  • 【音楽・演劇・演芸】脈々と受け継がれる伝統と創造初代・歌舞伎座誕生の舞台裏

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    【音楽・演劇・演芸】 脈々と受け継がれる伝統と創造 初代・歌舞伎座誕生の舞台裏

    2013年5月4日号  

    2013年4月2日、5代目となる歌舞伎座が開場した。現在の地に歌舞伎座という劇場が誕生したのは1889年。以降、老朽化や戦災などによる改修、建て替えで姿を変えながらも、歌舞伎の殿堂として歴史を育んできた。そもそも120余年前、歌舞伎座はいかに誕生したのか? 『歌舞伎座誕生』を読むと、明治の演劇改良運動の流れを受けて、新聞記者として名を成した福地櫻痴と金融業者の千葉勝五郎の共同経営で、歌舞伎座が開設された経緯、その後の変遷がよくわかる。

  • 【健康・医療】自分の歯を残すポイントは「TCH」の改善にあり

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    【健康・医療】 自分の歯を残すポイントは 「TCH」の改善にあり

    2013年4月20日号  

    顎関節症の原因は「かみ合わせ」とされてきたが、その原因の多くはTCH(Tooth Contacting Habit、上下歯列接触癖)。多くの人は静かにしているときは上下の歯が接触していると思っているが、実はそうではない。会話、そしゃく、嚥下などを集計しても接触時間は1日20分以内。ところが、TCHのある人の中には1日4時間以上も接触させていることが──。このTCHを治すことで顎関節症が改善するという。

  • 【旅行・乗り物】通勤電車でも楽しめる桜、鉄道、京都の100景本

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    【旅行・乗り物】 通勤電車でも楽しめる 桜、鉄道、京都の100景本

    2013年4月13日号  

    日本百名山、富嶽百景、名水百選というように、あるテーマに沿って100個のものを集めて称賛したり、優劣を論じる試みは多く見られる。今回は、旅や乗り物関係のそうした本から、最近出版されたものを取り上げてみた。桜前線が北上中。満開の桜の木の下で、宴会をしたり、静かに感傷に浸ったりと、楽しみ方は人それぞれであるが、日本の春の象徴として桜は欠かすことができない。全国の桜の名所をまとめた『ニッポンの桜100選』は、オールカラーだけあって、眺めるだけでも楽しい本である。西日本では、すでに散ってしまった場所もあるけれど、来年以降いつかは行ってみたいとチェックするだけでもウキウキしてくるのが桜の美しさのなせる業なのだと思う。

  • 【映画(DVD)】青春の喜怒哀楽が詰まった脚本、演出が光る大人の映画

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    【映画(DVD)】 青春の喜怒哀楽が詰まった 脚本、演出が光る大人の映画

    2013年4月6日号  

    『桐島、部活やめるってよ』。この新鮮で魅力的なタイトルに負けず内容が素晴らしい。一昔前、阿久悠が「青春時代(曲・森田公一、歌・森田公一とトップギャラン)」で〈青春時代が夢なんてあとからほのぼの想うもの〉で、その真ん中では〈道に迷っているばかり〉だと言った通り、青春には明と暗がある。その両方を描くのに珍しく成功して、高校生の喜怒哀楽がすべてここにある。

  • 【スポーツ・ホビー】昭和天皇とゴルフの関係から世界情勢と激動の時代を読む

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    【スポーツ・ホビー】 昭和天皇とゴルフの関係から 世界情勢と激動の時代を読む

    2013年3月30日号  

    昭和天皇はゴルフを楽しまれていた。しかも皇太子時代には、英国のデイビッド皇太子(当時)と駒沢ゴルフ倶楽部で世紀の日英対決を演じられた。『昭和天皇のゴルフ』(田代靖尚著)には、このときの様子が、写真と共に掲載されていて実に興味深い。ハンチングにニッカーボッカーズスタイルで決めた皇太子が、スイング後にボールの行方を見つめている。すぐ横にデイビッド皇太子のスイング写真も載っている。贔屓(ひいき)目なしに昭和天皇の一打は、ナイスショットだ。ただ、このときは英国側が1アップで勝ったそうだ。

  • 【ファッション】装いで世の中を元気にする80年代ファッション復活の気配

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    【ファッション】 装いで世の中を元気にする 80年代ファッション復活の気配

    2013年3月23日号  

    ツーブロックという刈り上げヘアの復活。そして最新モードは過飾なポストモダン調が流行半歩手前。さらに経済はアベノミクス。時代の風向計は1980年代を指しているように思える。そんな“にわかバブル”の風潮を先取りするかのように登場したのが『Tonyさんの優雅な生活』。著者は、上場企業の創業者にして関西一おしゃれだといわれた父を持ち、商社マンからNGO事務局長までさまざまな経歴を持つ神戸の高等遊民。身銭を切って着倒し会得したおしゃれ哲学には、服飾雑誌にありがちなうんちくや教条主義がいっさいない。代わりに語られるのは、足し算のデザインによって生まれるファッションの楽しさと深さ。そして抱腹絶倒のおしゃれな小話と、業界をネタにした毒舌の数々。

  • 【料理・食文化】ミシュランより面白い東京レストランガイド3冊

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    【料理・食文化】 ミシュランより面白い 東京レストランガイド3冊

    2013年3月16日号  

    この5月に『ミシュランガイド』が広島編を出版するという。北海道編は企業が本を買い上げることを保証に、1年限りの条件で出たといううわさがしきりで、従来のミシュランらしからぬ商業主義に堕したガイドになってしまった。一度きりでは、三つ星を与えられなかった店は、リベンジすることができない。反対に、三つ星をもらった店は永久に最上級の店として評価され続ける。広島編はその轍を踏んでほしくないが、どうなるだろう。レストランガイドは、網羅性と継続性が何より大事であることは言うまでもない。

  • 【伝統芸能・文化】日本で最重要の修行目標当代の芸能人に学ぶ間のとり方

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    【伝統芸能・文化】 日本で最重要の修行目標 当代の芸能人に学ぶ間のとり方

    2013年3月9日号  

    能、狂言、歌舞伎、人形浄瑠璃、落語等々、日本の伝統的な芸能一般において重要とされるのが「間」である。日本の芸能は、間のとり方を体得することを、最も重要な修行目標としている。間の重視は日本文化全般に見られる現象であるが、間を言葉で説明しようとすると非常に難しい。

  • 【ミステリー】重厚なテーマを鮮やかに描く圧倒的に読ませる技巧

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    【ミステリー】 重厚なテーマを鮮やかに描く 圧倒的に読ませる技巧

    2013年3月2日号  

    天童荒太『歓喜の仔』は狭義のミステリーには入らない作品だが、圧倒的に読ませる。父親が多額の借金を残して蒸発、母親はアパートの窓から発作的に飛び降りて意識不明の寝たきり状態。仕方なく誠は高校を中退し、早朝は青果市場、昼から晩は中華料理店、深夜は覚醒剤のアジツケの内職と働きまくっている。父親の借金を返し、母親を介護し、小学生の弟を育てるためにはやむを得ない。そういう少年の日々が、圧倒的なリアリティで鮮やかに描かれていく。

  • 【映画(DVD)】プロを唸らせるカットが続く巨匠タル・ベーラの遺作

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    【映画(DVD)】 プロを唸らせるカットが続く 巨匠タル・ベーラの遺作

    2013年2月23日号  

    いまや一番万国共通(コスモポリタン)の芸術は映画だろう。どこの国の、どんな人でも映画を作る(そしてDVDで簡単に流通する)。今回の3本は米国産でも韓流でもない。ハンガリーの巨匠タル・ベーラの遺作になった『ニーチェの馬』。奇妙な題は「ツァラトゥストラはこう語った」の哲学者ニーチェが散歩に出た街で急に馭者(ぎょしゃ)の言うことを聞かなくなった馬を見た。彼はそのまま家に帰ると倒れて、2日後に死んだというこれも奇怪な逸話によるらしい。

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記者の目

  • 編集委員 藤田章夫

    新NISAを追い風にする保険業界のしたたかさ

     新NISAが1月からスタートし、保険の販売には逆風かな?と思っていたら、「むしろ追い風になっていますよ」との声が多数。
     資産運用の相談に来た人に、「投資信託は資産が減ることもありますが、変額保険の死亡保険金額には最低保証があります」と言えば、「保険の方がいいか」となるようです。
     本来は、資産を運用したいのか保障が欲しいのか、目的に応じて使い分けたいところですが、これがかなり難しい。
     そこで、保険ジャーナリストの森田直子さんとファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんに、保険と運用それぞれの立場から対談を行っていただきました。面白過ぎて、対談時間はあっという間に過ぎました。ぜひご一読ください。

  • 副編集長 名古屋和希

    “予定調和”の買収は今後減少?

     第一生命ホールディングスが3月に福利厚生代行のベネフィット・ワンを買収しました。この買収劇は異例の展開をたどりました。
     先に買収を表明したのは医療情報サイト運営のエムスリーでした。そこに第一生命が参戦したのです。結局、エムスリーよりも好条件を提示した第一生命が買収戦を制しました。大企業による対抗的な買収は極めて珍しいものです。
     従来、事業会社はイメージ悪化などを恐れ、「敵対的」な買収を控えてきました。ただ、近年はルール整備などを背景に「同意なき買収」が広がる機運が出ています。買収が活発になれば、企業・業界の新陳代謝も促せます。今後、“予定調和”の買収は減っていくかもしれません。

最新号の案内24年4月27日・5月4日合併特大号

表紙

特集保険vs新NISA 今「契約したい保険」は? 生保商品ベスト&ワーストランキング

保険とNISA、どちらに資金を振り向けるべきか──。新NISAをきっかけに投資熱が高まる中、多くの人が抱える悩みだ。そこで保険とNISAで迷ったときの考え方や保険の見直し方、保険のプロ29人が辛口採点した生命保険商品ランキングを、業界の深部…

特集2変局 岐路に立つNHK

NHKが大きな岐路に立たされている。今国会で放送法改正案が可決されれば、ネット視聴も受信料徴収の対象となる。一方で、今後、NHKの受信料収入は人口減やテレビ離れを背景に先細る可能性が高い。職員数1万人を誇る巨大公共放送機関は、「みなさまのN…