記事一覧:Book Reviews オフタイムの楽しみ418件
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Book Reviews オフタイムの楽しみ
【ファッション】 真のサスティナビリティは デザインの多様化を進める
2014年10月4日号世界の環境に影響を与えているのは、エネルギー、食料、ファッションの三つ。『循環するファッション』は、「サスティナビリティ(持続可能性)なんてデザインの自由を奪うものだ」と考えているデザイナーや企画者にこそ読んでもらいたい。
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【料理・食文化】 猟師料理の野生の味わいを 冒険小説級の面白さで活写
2014年9月27日号『猟師の肉は腐らない』は、食べ物を大きく扱った読み物として、近来まれに見る傑作である。著者は自ら「発酵仮面」と名乗る、東京農業大学名誉教授で発酵学の権威、小泉武夫。渋谷の酒場で偶然出会った阿武隈山地の猟師を「先生」が訪ねることから話が始まる。それがノンフィクションにもかかわらず、冒険小説のような面白さ。2人は酒飲みだから、随所に「粕取焼酎」から「濁酒」まで登場する。「焼酎は、一本の熱い線のようになって食道から胃袋まで下がって行き、その辺りでピタリと納まると、今度は周りを一気に熱くさせた」など、酒飲みには堪らない表現だ。
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【酒・酒文化】 「テロワール」を通して問う おいしいワインの真実
2014年9月20日号映画「モンドヴィーノ」の監督ジョナサン・ノシターが、今度は『ワインの真実』を書いた。副題の「本当に美味しいワインとは?」が示す通り、頻出する「テロワール」(気候や地形、土壌といった地域環境など)という言葉を通して、飲み手のみならず、造り手や業界関係者に対し、おいしいワインとは何かを問い掛ける。中でも、ワインの試飲を通じての醸造家や業界人たちとの会話には迫力があり、読み応え十分だ。
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【ミステリー】 圧巻のラストまで一気読み 浮かび上がる死刑囚の真実
2014年9月13日号圧倒的に読ませる、早見和真『イノセント・デイズ』。死刑囚、田中幸乃の死刑が執行されるところから、この物語は始まっていく。さまざまな人の証言を積み重ねて、この死刑囚の人生をその誕生からたどっていくのだ。すると、無知な17歳のホステスが母親だったとか、養父から虐待を受けていたとか、不良仲間に入って窃盗をしていたとか、そういう外側から見た「駆け足の紹介」が彼女の真実を何一つ伝えていないことが浮かび上がってくる。
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【映画(DVD)】 縁談話が極上のエンタメに 敬遠したら大損の傑作
2014年9月6日号スクリーンと観客が一緒に歌うというイベント性で大ヒットの『アナと雪の女王』。作品は中ぐらいの出来で今回は員数外(いんずうがい)。後は3本とも共通するのは〈大家族〉。『ダウントン・アビー』は中世の大僧院(アビー)に由来する英国荘園貴族の継嗣問題と財産相続の話。時はタイタニック号沈没から第1次世界大戦の勃発まで……これで敬遠したら大損の傑作。3人の娘の縁談話という通俗の素材が、徹底的な当時の風俗の再現と練り上げられた台本、家族8人と使用人が執事以下10人の個性ある配役(名女優マギー・スミスら)でこんなにも極上のエンターテインメントになるものか。ドラマの魅力とはこれだろう。まずは第1シーズンの7本をご覧あれ。
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【科学読み物】 目にしたことがない美しさで 残暑の脳の疲れを取る
2014年8月30日号自然界には、万能のデザイナーや演出家がいるのではないかと思ってしまう。自然淘汰の原理だけでは、これほど多様で、見る目を驚かせる造形は不可能だろう。『世界で一番美しいイカとタコの図鑑』には大判カラーの270ページに、浅海から深海のイカとタコの生きた写真が満載だ。巻頭には全長7メートル近いダイオウイカの魚拓を6分の1に縮小したとじ込み付録も付いている。日本にも生息する世界最小のヒメイカは胴の長さが2センチ未満。避難用に二枚貝やココナツの殻を抱えて歩行するメジロダコもいる。深海の400度になる熱水噴出孔の脇で、ゆでダコにならずに暮らす仲間もいて、無類の奇想天外度に満ちている。手元に置いて損はない。
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【子育て・教育】 多種多様な実例に学ぶ PTAや親子関係の改革法
2014年8月23日号何かと話題のPTAだが、「そもそも必要か?」「意味ある活動にするには?」など、少しでもPTAについて考えてみたい人にとって必読なのが、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』だ。
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【音楽・演劇・演芸】 芸能の世界の達人に学ぶ 人生という舞台での輝き方
2014年8月9日号人生そのものを「舞台」と捉えるならば、芸能の世界での成功論には、ビジネスやプライベートシーンに応用可能な要素が多いのかもしれない。AKB48など数々のアーティストを指導してきた振付師・夏まゆみによる『エースと呼ばれる人は何をしているのか』は、自分の実力や魅力を発揮するべき場所で十分に引き出すための「正しい成長方法」の指南書。
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【医療・健康】 医療は常に“壮大な人体実験” 間違いだらけの健康常識
2014年8月2日号イグ・ノーベル賞をご存じだろうか? 「人々を笑わせ、そして考えさせる業績」に対して贈られる賞である。2013年度に「オペラを聞かせると心臓移植を受けたマウスの生存期間が延びる」という研究で受賞したのが帝京大学医学部外科准教授の新見正則氏。
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【旅行・乗り物】 登録はゴールではない! 世界遺産に必要な保存維持
2014年7月26日号富岡製糸場と絹産業遺産群が、めでたく世界遺産に登録となった。地元はもちろん日本全国で話題となり盛り上がっている。早速、書店店頭でも富岡製糸場を中心に世界遺産に登録された施設を紹介した書籍が並んでいる。その中でもコンパクトにまとめてあるのが『富岡製糸場と絹産業遺産群』である。
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【映画(DVD)】 “ひいき”の気分で楽しむ 好きな役者の出演作
2014年7月19日号ファン心理というか、ひいきの気分というか、気になって仕方のない俳優が居て、ついその出演作を見てしまう。いい例がレオナルド・ディカプリオだ。この、どうやっても賞を取れないスターはあがきにあがいて、やたらいろんな傾向の映画に出る。今度は『ウルフ・オブ・ウォールストリート』。ジャンク株を売り付けて巨富を得た男の薬(ドラッグ)まみれの狂騒の生きざまが(マーティン・スコセッシ監督だからすこぶる付きのハイテンションで)描かれる(実話だそうだ)。レオ様も熱演だが、どうして賞が取れないのかもよく分かった。彼自身が実は常識的でつまらないのだ。
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【スポーツ・ホビー】 「孤高の天才」の悲壮な戦いと 苦しみから解放される安堵感
2014年7月12日号武豊の騎乗姿勢は、なぜあんなに優雅で美しいのか? 馬群の中にあっても、彼の存在はすぐに分かる。それは彼の騎乗を見るたびに感じてきた素朴な疑問だった。『決断』を読み進めるうちに、その理由がどんどん明らかになっていく。「彼の体のなかを流れる時間の力が、彼だけが持つ強さにつながっているように感じられてならないのだ」と著者は、武豊のルーツをたどるところから、優雅な騎乗姿勢と強さの秘密に迫る。
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【ファッション】 服を哲学し音楽を文学する 定番を超える新しい価値
2014年7月5日号定番を着こなすことが共感を呼ぶ時代である。『ドン小西のファッション哲学講義ノート』は、その現象を単に衣料品が売れているだけと嘆く。ファッションは着回しなどの小技でなくイデアだと訴え、ときに異端ともいえる哲学を探求し、服を通じてそれを表現することがファッションの本流だと説く。だからこそデザインは人を感動させ、未来を予見し、活力を与えてきたのだという。
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【料理・食文化】 日本のフランス料理 50年の歩みをたどる3冊
2014年6月28日号日本のフランス料理の歩みを振り返るとき、忘れてはならないのが辻静雄である。1960年代、大阪の料理学校の校長に就任した彼は、本物のフランス料理の最前線を知ろうと貪欲にフランス中を食べ歩く。その見聞、体験が次々に本となり、若い料理人たちを刺激し続けた。
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【酒・酒文化】 言葉の魔力に魅せられた コピーライター・開高健の苦闘
2014年6月21日号「人間らしくやりたいナ」というコピーを覚えている方は多いだろう。サントリーの前身、壽屋の宣伝部員、開高健の作品である。『壽屋コピーライター開高健』には、開高がトリスのコピーを手掛けながら、小説家として大成していく過程が克明に描かれる。
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【ミステリー】 “冒険小説の神”が描く 監視システムvs目立たない男
2014年6月14日号若竹七海『暗い越流』は、日本推理作家協会賞〔短編部門〕を受賞した表題作を含む作品集だ。本来ならミステリーとしての評価を語らなければいけないのだが(切れ味鋭いことは言うまでもない)、何よりいいのは、この作家の文章が心地よいことで、だから読み終えてもしばらく本を離せない。凝っているわけではない。平易なのだ。
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【映画(DVD)】 深刻なのに人間味にあふれる 巧妙に構成されたシナリオ
2014年6月7日号『そして父になる』──。小学校のお受験。一粒種の長男が両親と一緒の面接で小さなうそをつく。「パパにほうぼう連れていってもらって、面白かった」。面接の場から出て来てこう言う。「塾でそう言いなさいって言われたんだ」。家族一同笑う。このすぐ後、この子が出生時、病院で取り違えられていたことが分かる……。導入部だけでもこの映画が優れていることが分かる。深刻な話なのに、いかにも現代の、人間味にあふれている。実際、観客は随所で笑うはずだ。是枝裕和監督(脚本も)会心の作だろう。現実にあった類似の事例を集めて巧妙に構成されたシナリオがいい。
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【科学読み物】 誕生から138億年 膨張を続ける宇宙の秘密
2014年5月31日号南極から宇宙を探る米国の望遠鏡によって誕生時の宇宙が急膨張したことを物語る原始重力波が観測された。今年3月の発表だ。
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【子育て・教育】 知っているか否かで大違い 子育てに役立つコーチング
2014年5月24日号日本にコーチングの手法が入ってきて15年ほどになるそうだ。ビジネスシーンでの実践が目立つが、実は子育ての場においても盛んに活用されている。
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【音楽・演劇・演芸】 ヒット曲には理由がある 時代とともに変化する音楽
2014年5月17日号「最近のJ-POPはなんだか似たような曲ばかり」という声を時々耳にする。その理由が、『すべてのJ-POPはパクリである。』を読むとある程度納得できる。