日米ともに「業績相場」入り
勝ち抜ける優良株を探し出せ!
「業績の強弱へ素直に株価が反応する傾向が見られた」──。本決算を終えた国内上場企業の株価の動きを巡り、JPモルガン証券の阪上亮太チーフ株式ストラテジストはこのように分析する。当然に思えるかもしれないが、実は、これは相場全体においては最近まであまり見られなかった現象だ。
従来と何が変わったのか。一口に言えば、株式市場が「金融相場」から「業績相場」へ移りつつあるということ。これは日本のみならず、世界の株式市場の本丸、米国についても同様だ。どういう意味か、下の図で説明しよう。
株式市場は、市場環境に応じて四つの相場サイクルを描く。コロナ禍で経済が打撃を受けたのに日米とも株高が続いた背景としては、FRB(米連邦準備制度理事会)などによる大規模な金融緩和を受け、市場に大量のマネーがなだれ込んできた影響が大きかった。
基本的に株価を左右する要因は、大きく分解すれば二つしかない。投資家の期待値(≒PER、株価収益率)と利益(正確にはEPS、1株当たり利益)の動向だ。
このうち、金融緩和に支えられ、先行き期待の改善(PERの上振れ)が株高をもたらす環境が「金融相場」。これが、景気悪化で企業業績が厳しいのに株高となる基本的なメカニズムだ。
最近まで続いたこの局面では、大量の緩和マネーの行方に市場全体が揺さぶられやすく、「会社ごとの業績動向があまり材料とならない場合も多かった」(阪上氏)。
一方、とりわけ直近の1〜3月期決算では、コロナの大ダメージを受けた1年前から日米とも業績の回復ぶりが鮮明となった。何しろ、5月7日までに決算を発表した2、3月期決算の東証1部上場企業(500社弱)の2020年度第4四半期(11〜2月期または1〜3月期)の経常増益率は前年同期比8割超に達する。
米国に至っては、S&P500種株価指数の構成銘柄が1〜3月期決算の発表シーズンを終えた中、そのうち約9割のEPSが市場予想を上回るという好調ぶりだ。
そのように、業績の回復期待へ徐々に実態が伴う「業績相場」に移行すると、PERがそのままでも利益見通し自体の上振れが株高につながる。この局面に移ると、金融相場と比べ個別企業の業績の行方を見極めることが重要となる。
ただし、株高につながるかを考える上で重要なのは、見掛け上の黒字の大きさや増益幅ではなく、市場の期待値を上回るかどうかだ。
例えば5月10日に決算を発表したパナソニックが3割近い今期の最終増益計画を示したものの、市場予想には届かず、翌日の株価は前日比6%安と売り込まれた。
阪上氏は日本企業全体で見ても、「今期の会社計画は保守的に見積もる企業が多い印象」と話す。実際、JPモルガン証券の集計では、7日時点で東証1部上場企業の21年度の予想増益率(経常利益)は会社計画が38・5%。市場予想(43・9%)と開きがある。
とはいっても、保守的な会社計画は投資戦略を考えると悪い話ではない。業績相場という環境下で今後焦点となるのは、21年度第1四半期決算での利益の進捗率だが、「慎重姿勢を崩したくないという理由で保守的な会社計画を出している会社は、第1四半期に計画対比の業績が上振れする可能性が高い」
(阪上氏)からだ。
相場全体で見ても、「緊急事態宣言が解除されて経済再開期待が高まったり、企業業績が上方修正されたりすることで、日経平均株価は再び3万円超に上昇する」(みずほ証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジスト)と、業績改善が日本株を底上げするとの声が聞かれる。
それでも、これから株式投資に挑む際、気を付けたい点もある。特に米国では、これまで株高をけん引してきたGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)などの大型ハイテク株に割高感が強まり、好決算をたたき出しても株価がほとんど反応しないケースが散見された。
このため大和証券の壁谷洋和チーフグローバルストラテジストは、米企業業績は今後さらなる改善が期待できるとしつつ、「目先は景気回復の恩恵を受けやすい景気敏感系の銘柄の方が株価の上振れ余地は大きい」と分析する。例えば景気敏感株の代表格の一つである米建機キャタピラーは、4月末に好決算を発表後、株価は上昇傾向だ。
金利上昇や米政権の増税、地政学リスクなど株価を冷やしかねない材料も常にくすぶるが、業績相場において最後にものをいうのは、企業ごとの業績動向。本特集では、最新決算も踏まえ日米の「最強株」を徹底的に取り上げたので、大いに銘柄選びの参考にしてほしい。
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業績相場入りした日米市場への投資の一助にしていただければ幸いです。