首都圏で中学受験熱が高止まり
中堅校人気で受験率が過去最高を更新!
昨年2023年入試で受験者数、受験率共に過去最高となった首都圏の中学入試。日能研の推計では、直近24年入試の受験者数は6万5600人と、昨年から減ったものの過去2番目。そして、15年から右肩上がりの受験率は22.7%で過去最高となった。
注目は総応募者数だ。35万0734人で昨年から1万人以上増加した結果、平均併願校数は昨年の5.1校から5.3校へ上昇した。日能研の井上修入試情報室室長は、総応募者数の増加について「1月に行われる埼玉県の入試での受験者増が大きな要因で、主に東京からの越境による『腕試し受験』がデフォルト化。加えて、2月1日の午後入試も定着し、同日午前の入試を受けた受験生の7割弱が午後に別の学校を受けている。首都圏の中学受験の成熟化が進んでいる証しといえる」と語る。
森上教育研究所の森上展安代表は、「御三家など難関校で特に男子の安全志向が強まり、麻布や武蔵、海城などが受験者を減らした。昨年はコロナ禍が下火に向かうことで難関校回帰が起きたが、その反動とみている。ただし、易化したというよりチャレンジ受験の学力層が減っている」と話す。
また、首都圏模試センターの北一成教育研究所長は、「中堅~中堅下位校の大半で受験者が増えた。6年生になって受験準備を始めたような駆け込み受験も増えている」と指摘。加えて、「昨年から男女別学の人気が復活したが、24年入試ではそれがより鮮明になり、また近年の『大学付属校バブル』の収束も特徴」とみる。
安全志向と中堅校人気に加え、SAPIXの広野雅明教育事業本部本部長は、入試制度の変化に着目する。「東京私立中学高等学校協会が24年入試から『帰国生入試』の受験資格を厳格化し、24年度は11月10日、25年度以降は11月20日が帰国生入試の解禁日となった。また国内インターナショナルスクールの在籍生は都内の私立中学校の帰国生入試を受験することができなくなった」。
また、24年入試の注目校として駒場東邦と早稲田の2校を挙げるのは、アップ執行役員で進学館ルータス統括の吉田努氏だ。「駒東は東京大学と京都大学への合格者数を着実に伸ばしている数少ない学校として、また早稲田は早稲田大学への内部進学を担保しつつ、難関国立大学への進学実績も良いことから、それぞれ受験生を増やしている」。
加えて、24年入試では、これまでにない事態も発生した。男子の最難関中の最難関、筑波大学附属駒場を震源に起きた「筑駒ショック」だ。
通学区域の拡大に高校無償化で
最強国立一貫校の合格辞退者が続出
「筑駒の合格者が他の併願校に流れた結果、例年5人以下の筑駒の繰り上げ合格が、24年入試は数倍に跳ね上がった。逆に、開成の繰り上げ合格は例年60人ほどだが24年入試はほぼ半減。トップ校の繰り上げ合格の影響は大きく、各校で玉突きが起き、2月下旬まで男子は各学校で繰り上げを出すことになった」(首都圏塾幹部)。そこで、取材を基に、基本的に非公表である主要難関校の繰り上げ合格者数リストを作成した。
筑駒ショックの最大の原因は、同校が24年入試で通学区域を拡大したことにある。千葉県や神奈川県埼玉県などの合格者が結局、自宅から通いやすい開成や聖光学院、渋谷教育学園幕張(渋幕)などに流れたためだ。
ただし、“筑駒離れ”に別の副次的要因を指摘する声もある。「付け加えれば、東京都の高校授業料の実質無償化も少なからず影響しているだろう」と、四谷大塚の岩崎隆義情報本部本部長。
東京都は昨年12月、24年度からこれまで年収910万円未満の世帯が対象だった高校授業料助成の所得制限を撤廃、私立を含めた全高校の「実質無償化」を打ち出した。
「国立校と私立校のインフラの差や私立校の面倒見の良さを考えれば、私立高校3年間の授業料が実質無料になるインパクトは無視できない。今後、特に子どもが複数人いるような家庭にとって、私立中学を選ぶ追い風になるだろう」(岩崎氏)。
では、10カ月後に迫る25年入試はどうなるのか。全体的には、首都圏塾関係者は皆、25年入試も今年と同程度の激戦を予想する。そして、受験校選びで考慮すべきなのは、いわゆる「プチ・サンデーショック」だ。
「25年入試では2月2日が日曜日に当たり、例年この日が入試日となるプロテスタント系の青山学院の入試が翌3日にずれる。結果、3日に入試を行う慶應義塾湘南藤沢や立教池袋(1)、学習院(1)、明大明治(1)などの他の大学付属校の人気が上がる可能性が高い。逆に、青学と入試日がバッティングする明大明治(2)や学習院(2)、学習院女子Bが少し挑戦しやすくなるとみている」と広野氏。例年以上に受験校選びに頭を悩ませる親子が増えそうだ。
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