記事一覧:Book Reviews 知を磨く読書292

  • 努力を楽しむ才能がある人

    Book Reviews 知を磨く読書
    努力を楽しむ才能がある人

    2016年6月4日号  

    印南敦史著『遅読家のための読書術』は、ビジネスパーソンを想定した優れた読書の指南書だ。「遅読」とは、逆説的な表現で、基本となる本をゆっくり精読することで、多読が可能になり、読書の技法をストックからフローに転換することができる。

  • 何が個性で、何が障害か

    Book Reviews 知を磨く読書
    何が個性で、何が障害か

    2016年5月28日号  

    大隅典子著『脳からみた自閉症』は、脳の発達障害という観点から、自閉症について解説している。〈そもそも、身体であれ精神であれ、何をもって「障害」や「疾患」とするかは一般的にも難しい問題でしょう。人間の健康状態が正常なのか異常なのかは、そう簡単に線を引けることではありません。

  • 英才教育という神話

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    英才教育という神話

    2016年5月21日号  

    橘玲著『言ってはいけない』は、人間の成長は遺伝と環境の双方の要因によってなされるということを、生物学的知見を援用しつつ興味深く物語っている。〈19世紀末は、どのような子どもでも正しい訓練によって天才に育てることができると信じられていた。

  • 資本主義の内在的論理

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    資本主義の内在的論理

    2016年5月14日号  

    カビール・セガール著『貨幣の「新」世界史』は、古代貨幣から現代のビットコインに至るまでの知的刺激に富んだ貨幣史に関する作品だ。セガール氏は、〈デジタルな仮想通貨は、貨幣の将来の姿なのかもしれない。しかし広く社会に普及して、主要な基軸通貨を脅かす存在になるのは容易ではない。

  • 格差問題、貧困問題の起源

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    格差問題、貧困問題の起源

    2016年4月30日号  

    アンドリュー・クレピネヴィッチ、バリー・ワッツ著『帝国の参謀』は、2015年に93歳で現役を退くまで、米国の戦略策定に多大な影響を与えたアンドリュー・マーシャルについて詳しく紹介した本だ。〈マーシャルの知的貢献が十分理解されていないのは、彼が自己宣伝を極端に嫌うからだ。

  • 気負いから解き放たれた言葉

    Book Reviews 知を磨く読書
    気負いから解き放たれた言葉

    2016年4月23日号  

    米原万里著『偉くない「私」が一番自由』は、10年前に惜しまれつつ亡くなった米原氏のアンソロジーだ。米原氏は、学生時代に19世紀のロシア詩人ネクラソフの研究をした。その精神が彼女の中で生き続けていたことがよく分かる。

  • 正真正銘の「地方創生」

    Book Reviews 知を磨く読書
    正真正銘の「地方創生」

    2016年4月16日号  

    大原悦子著『フードバンクという挑戦』を読むと、ラベルの印字ミスや規格に合わないなどの理由から大量に生まれる食品ロスを、困窮する人々に分配するフードバンク活動の重要性が分かる。〈日本のフードバンクは、どちらかと言えば「もったいない」、つまり食品ロス削減の立場からスタートすることが多かった。

  • 日本の政治エリートと「天佑」

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    日本の政治エリートと「天佑」

    2016年4月9日号  

    波多野澄雄著『宰相鈴木貫太郎の決断』を読むと、硬直した日本政府が戦争を止めるためには、外圧が不可欠だったことがよく分かる。当時の首相・鈴木貫太郎は、原爆投下とソ連参戦を外圧として最大限に利用した。

  • ユダヤ人の歴史を学ぶ

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    ユダヤ人の歴史を学ぶ

    2016年4月2日号  

    駒崎弘樹著『社会を変えたい人のためのソーシャルビジネス入門』は、大金持ちになることは望まないが、名誉と尊厳を維持できるレベルの生活を確保しながら社会的に意義のある仕事をしたいと考えている人に向けた、実用性の高い内容が満載されている。駒崎氏は、ソーシャルビジネス型のNPO(民間非営利団体)や株式会社を成功させる重要な要素として人事を挙げる。

  • 第三次世界大戦の可能性

    Book Reviews 知を磨く読書
    第三次世界大戦の可能性

    2016年3月26日号  

    山内昌之著『中東複合危機から第三次世界大戦へ』は、中東情勢だけでなく現下の国際情勢の基本構造を理解するための基本書中の基本書だ。山内氏は、〈二〇一五年十一月のパリ大虐殺は、ISを媒介に中東複合危機と不可分に結びついている。

  • 司馬遼太郎の語られざる本音

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    司馬遼太郎の語られざる本音

    2016年3月19日号  

    森史朗著『司馬遼太郎に日本人を学ぶ』は、司馬遼太郎の日本人観を掘り下げて考察した名著だ。司馬がノモンハン事件について作品を書きたいと思いながら頓挫した理由が興味深い。

  • 著名神学者のもう一つの顔

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    著名神学者のもう一つの顔

    2016年3月12日号  

    深井智朗著『パウル・ティリヒ』は、ナチスに抵抗してドイツから米国に亡命したプロテスタント神学者で、哲学者テオドール・アドルノの指導教授として現代思想にも無視できない影響を与えたパウル・ティリヒ(1886~1965年)の生涯と思想について、日本語で読むことができる最良の概説書だ。

  • 最も説得力があるテロ対策

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    最も説得力があるテロ対策

    2016年3月5日号  

    常井健一著『小泉純一郎独白』には、小泉純一郎元首相の興味深い見解が記されている。例えば、国会議員を辞めてから靖国神社に一度も参拝していない事実とその理由だ。〈靖国参拝した時なんて、俺を支持してくれる人たちが「総理の間は靖国参拝するな」と言うんだ。逆だよ。総理だから行くんだって、わかってないんだよ。外交問題になるから行かないっていうのはどうかしている〉

  • 今後、起こりうる財政破綻

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    今後、起こりうる財政破綻

    2016年2月27日号  

    熊谷亮丸監修/大和総研編著『リーダーになったら知っておきたい経済の読み方』は、著名エコノミストの熊谷亮丸・大和総研執行役員の監修の下、第一線で経済情勢を分析する4人の専門家が書き下ろした優れた経済インテリジェンス分析だ。

  • 社会の価値観、退行する社会

    Book Reviews 知を磨く読書
    社会の価値観、退行する社会

    2016年2月20日号  

    増田ユリヤ著『揺れる移民大国フランス』は、テロのリスクを負いながらも難民を受け入れ続けるフランス社会に関する優れたルポルタージュだ。〈フランスのある裁判官は、私にこう言った。「不法移民の子どもを保護して、フランス社会で暮らしていけるように育てたとしても、同化できる子は六割、後足で砂をかける子が四割いる。

  • 安倍政権の内在的論理

    Book Reviews 知を磨く読書
    安倍政権の内在的論理

    2016年2月13日号  

    今回、芥川賞を受賞した本谷有希子著『異類婚姻譚』は、文学の力を再認識させる優れた作品だ。一緒に暮らしている夫婦の顔が似てくると言われると、何となく思い当たる節がある。

  • 情緒でなく合理と実証

    Book Reviews 知を磨く読書
    情緒でなく合理と実証

    2016年2月6日号  

    井出英策、古市将人、宮﨑雅人著『分断社会を終わらせる』は、新自由主義的価値観が世界的規模で拡大する中で、伝統的共同体を維持することはもはや不可能であるという前提に立って、社会を再構築することを提案する。

  • 21世紀の資本主義分析

    Book Reviews 知を磨く読書
    21世紀の資本主義分析

    2016年1月30日号  

    服部龍二著『中曽根康弘』は、1918年5月生まれで、現在97歳にして、なお政局に一定の影響を与え続けている中曽根康弘元首相についての優れた評伝だ。中曽根氏の思想が最も分かりやすく示されたのが拓殖大学総長を務めた時期(67~71年)だ。

  • 日本人の思考の鋳型

    Book Reviews 知を磨く読書
    日本人の思考の鋳型

    2016年1月23日号  

    井上章一著『京都ぎらい』は、京都の洛中の特殊性を語ることを通じて日本人の思考の鋳型について論じた秀逸な文化論だ。例えば靖国神社について井上氏は、以下の指摘をする。〈靖国神社の信仰を肯定的に語る論客は、しばしば保守派だと評される。否定的な立場の人には、進歩派というレッテルがはられやすい。それが、いわゆる論壇の通り相場になっている。

  • イノベーションの障害

    Book Reviews 知を磨く読書
    イノベーションの障害

    2016年1月16日号  

    戸田山和久著『恐怖の哲学』は、ホラー映画やドラマを通じて人間の心理を解析した意欲的な作品だ。戸田山氏は、〈怪物は、「世の中ってのはこんなもんじゃ」とメジャー文化が押しつけてくる枠組みの限界を示し、それにダメ出しをするのだと言えるかもしれない。

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記者の目

  • 副編集長 千本木啓文

    農協から届いた「抗議文」を読んで、しばし感傷に浸る

     JA全中から毎年、抗議文をもらうのですが、今年は雑誌の発売前に届きました。特集の一部を「組合長165人が“辛口”評価 JA上部団体の通信簿」としてダイヤモンド・オンラインで先に配信したからです。
     抗議文は、「19万人の農協役職員の0.2%の意見で記事が構成されており、(中略)偏った先入観を植え付ける意図があった」として、続編の配信中止を求める内容でした。
     組合長ら幹部200人超を含む役職員434人の声には傾聴する価値があるはずです。抗議文を読み、自分は若いと思い込んでいる人が鏡に映った老いた姿を見て、こんなはずはないと怒っているような印象を持ちました。自戒を込めて、鏡のせいにしてはいけないと思いました。

  • 編集長 浅島亮子

    ロングセラー第9弾でも攻め続ける農業特集

     今年も人気企画「儲かる農業」特集の第9弾が刷り上がりました。身内ながら感心するのが、毎年新しいコンテンツを加えて特集構成を刷新していることです。今回の新ネタは農協役職員アンケート。ロングセラー企画の定番を変えるには勇気が必要ですが、果敢に新機軸を打ち出しているのです。
     昨年、千本木デスク率いる農協問題取材チームは、共済の自爆営業などJAグループの不正を暴いたことが評価され、報道実務家フォーラム「調査報道大賞」優秀賞を受賞しました。訴訟に屈することなく、問題の本質を突く取材活動を貫いた結果と受け止めています。今回の特集でも粘り強い取材は健在。取材チームの熱量を存分に感じていただければ幸いです。

最新号の案内2024年5月11日号

表紙

特集儲かる農業2024

いよいよ儲かる農業が実現するフェーズに入った。「台頭する豪農」と「欧米のテクノロジー」と「陰の仕掛け人」が”令和の農業維新”というムーブメントを起こしている。他方、農業を牛耳ってきた旧来勢力である農協と農水省は、存在意義を問われる”緊急事態…

特集2家計・住宅ローン・株が激変! 金利ある世界

日本銀行が17年ぶりの利上げで金融政策の正常化に踏み出した。”金利ゼロ”に慣れ切った家計や企業経営、財政はどうなるのか。日本は「成長期待が持てない経済」から抜け出せるのか。それとも低金利は続き、物や資本が余った経済への道を歩むのか。「金利あ…