即戦力持つ人材を
育てる大学に
文理融合型も誕生

 9月、福島県の会津大学の学生が、黙々とパソコンのキーボードをたたいていた。彼らが取り組んでいたのはスマートフォン向けアプリの開発。10日間という期限を設けて開発に邁進していた。

 プログラマーがチームを組んで短時間で新しいサービスを開発する「ハッカソン」という手法がIT企業ではやっているが、会津大の学生も取り組んでいる。

 1993年に、日本初のコンピュータ理工学に特化した公立大学として誕生した会津大。1学年250人程度で、外国人教員が全体の4割を占め、国際色も豊かだ。

 産業界では、IT化が進んだことでソフトウエアエンジニアが枯渇し、あらゆる分野で人材獲得競争が起きている。そうした中、実践を積んできた学生たちはまさに“注目株”。大学が主催するセミナーに120社もの企業が参加する盛況ぶりで、就職率は大学院で98%と極めて高い。

 就職率の高さでは、企業との結びつきの強い大学も負けてはいない。その代表格が、愛知県名古屋市の豊田工業大学で、トヨタ自動車が、81年に社会貢献活動の一環として設立。大学院の就職率はなんと100%だ。

 当然、就職先はトヨタやデンソー、アイシン精機といったトヨタグループ企業が中心。といっても全体の3割にすぎず、7割はホンダなどのライバル企業をはじめ、製造業大手に進んでいる。

 強みは何といっても1、3年生で必修とされているインターンシップ。1年生のときは、工場の生産ラインで1カ月ほどライン作業を経験。3年生になると1カ月半ほど企業に出向き、その企業が抱える技術的な課題を学生が解決するといった実習に取り組む。

 こうした経験を通し、会津大同様、「即戦力」を持った学生が育ち、トヨタグループ以外の企業にも評価されているのだ。

 理系学部に対する評価の高まりは、リーマンショック後、顕著になった。真っ先に職を失ったのは、替えの利く文系出身の金融マンたち。しかし理系出身者はしぶとく生き残った。

 さらに、スマートフォンの普及など新たな産業が生まれたことにより、理系人材のニーズがさらに高まりを見せているというわけだ。

 こうした流れを受け、文理の壁さえ取っ払った大学にも注目が集まる。08年に新設された青山学院大学の社会情報学部は、理系でありながら文系の学生も入ることができる「文理融合学部」だ。

 就職率は約90%と、いわゆる「早慶上智」「MARCH」の中でも医学部などに次ぐ高さ。ソフトバンクグループなど、トップ企業への就職を果たしている。

 文系だからといって容赦はされない。統計学とプログラミングが必須で、基礎的な知識をみっちりとたたき込まれる。文系の発想力を持ちながら、理系の知識を持つ学生は希有な存在だけに、企業からは重宝されている。

「企画力のある技術職、一方で技術のわかる営業職、そのいずれも育ててきたことで、就職先は理系だけでなく、金融など文系の職種まで幅広い」と稲積宏誠・社会情報学部長は言う。