大学卒業後、どういった企業に進むことができるのか。今や、大学を受験する段階でほぼ決定づけられているといっても過言ではない。そこで、大学の就職の現状について見ててみることにしよう。
製造業で、東京証券取引所1部に上場している大手企業の人事担当者は、昨年来、ある悩みを抱えていた。
「もっと採用しなければならないのに、接触さえできない……」
この担当者は、全国の大学に出張しては学生対象のセミナーを開くなどしているが、なかなかお目当ての学生に巡り合えないと嘆く。
狙っている学生とは、理系の女子学生、通称「理系女(リケジョ)」。普段は、実験室や研究室にこもりっ放し、就職も大学の推薦枠で決めてしまうから、採用にこぎ着けられずにいるという。
しかもである。ここ数年、銀行や外資系金融機関といった、これまで文系の学生を中心に採用していた企業が、理系学生の市場になだれ込んでおり、小さなパイを奪い合う構図となっている。まさにリケジョ争奪戦の様相を呈しているのだ。
なぜリケジョが人気なのか。まず、企業が女性の登用を積極化させている流れがある。最近では、日立製作所が女性の管理職を2020年度までに1000人まで増やす方針を打ち出したほどだ。
「女性は柔軟性が高く、目まぐるしく変わるビジネス環境に対する適応能力が高い」(大手企業の採用担当者)ことも人気の秘密だ。
その上で、理系であれば「実験やゼミなどでしごかれているため、論理的な思考力など、素養がしっかりしている。しかも数学を勉強し、さまざまな分野で応用が利くことが強み」(同)だという。
就職という「出口」のよさを反映して、リケジョは確実に増えている。
神奈川県川崎市にキャンパスを構える明治大学農学部。都心に近い私立大学の総合大学としては珍しく農学部があることもあってリケジョが多く、農学科や生命科学科など四つの学科すべてで女性が半分以上を占めているほどだ。