全国で同時多発的に進む
大学の大型統合再編
北海道、名古屋、静岡、大阪といったエリアで、同時多発的に大学の統合再編が進みつつある。
しかも、ただの統合再編ではない。旧帝国大学である名古屋大学が岐阜大学との統合に踏み切ったのに加え、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、公立大学としては日本最大級となる新大学を発足させるのだ。
まさに大規模統合といえるスケールで、それらの大学が位置するエリアの大学序列に多大な影響を与えることは間違いない。
特集では、日本全国で進行中の統合再編劇に加え、これら統合再編が影響を及ぼすとみられる周辺大学についてもエリアごとにまとめている。
まずは、北海道から見ていこう。小規模ながらも歴史のある三つの国立の単科大学、小樽商科大学と帯広畜産大学、北見工業大学が統合を決めた。全国各地にある単科大学の生き残りが今後の焦点の一つになるとみられており、その試金石になるとして注目を浴びている。
次に、中部だが、こちらは2つの統合再編が行われることになる。
ひとつは、先述した通り、旧七帝大の一角を占める名古屋大と岐阜大が統合すること。詳細は、本誌の名古屋大学理事・副総長の杉山直氏のインタビューをご覧いただきたいが、今回の統合の狙いは旧帝大の最下位からの“序列逆転”を狙ってのことだ。
また、名古屋大と岐阜大を傘下に持つことになる東海国立大学機構が今後、周辺大学をいかに取り込んでいくかについても焦点になるだろう。
次に、静岡大学と浜松医科大学の統合だ。静岡大学の浜松キャンパスにある工学部と情報学部を浜松医科大に統合して再編するというものだが、同一県内ながらも静岡と浜松の経済圏が大きく異なることから、今後の波乱が予想される。
日本最大級の公立新大学が誕生
「京阪神」の序列異変は不可避
そして大阪。大型統合劇による最大の“序列激変”が巻き起こると予想される地域だ。大阪市立大学と大阪府立大学という2つの公立大学が統合し、学生数約1万6000人規模を誇る日本最大級の公立新大学が誕生するからだ。
しかも、大阪南部に位置する両大学のキャンパスは当面継続されるものの、2025年度には、大阪城にほど近い森ノ宮にメインキャンパスが完成することから、大阪は言うに及ばず京都や兵庫からの学生を獲得しやすくなる。
となれば、関西の大学ヒエラルキーの頂点に君臨する「京阪神(京都大学、大阪大学、神戸大学)」の序列を揺るがしかねない衝撃を与えるのは、想像に難くない。両大学の幹部たちは言う。
「神戸大学を超えねばなりません。それが、われわれの使命です」
仮に、そうなれば、関西のトップ私立大グループ「関関同立」の序列にも、大きな影響を及ぼすことになるだろう。
他にも、まだ明確な動きはないものの、統合再編に動きそうな大学群はそこかしこにある。
例えば、東北地区では、国際教養大学が動けば、東北大学に影響を与えることになるだろう。
九州地区については、九州大学に次ぐ地位を競い合っている熊本大学と長崎大学の熾烈な勢力争いに注目が集まっている。
最新版281大学「序列マップ」
入試改革「3つのポイント」
『週刊ダイヤモンド』9月7日号の第1特集は、「大学 激変序列」特集です。
毎年恒例の大学特集ですが、今年はひと味違います。というのも、大学の統合再編が本格化しはじめたからです。しかも、その主役となるのが、旧帝国大学や大規模公立大学であるため、そのインパクトは計り知れません。
となれば、同レベルの大学をくくった言葉、「早慶上理」「GMARCH」「日東駒専」「京阪神」「関関同立」「産近甲龍」……といった、昔ながらの序列が激変する可能性は十分にあります。
そういった視点をふんだんに盛り込んだ上で、281大学・386学部について最新の序列マップを作成しました。
もう一点忘れてならないのは、2021年の新入試までもう残すところ、あと1年半しかないという事実です。ご存知の通り、大学入試センター試験は「大学入学共通テスト」に衣替えし、英語4技能を測るために「英語の外部試験」を導入、さらには「個別試験のルール変更」も実施されます。
それぞれおおまかな方針は示されていますが、詳細について詰め切れていないのが実情です。現在の高校2年生がもろに新入試とぶつかるわけですが、どこの大学を選べばいいのか、併願はどうすればいいのか、悩みは尽きないのではないでしょうか。
そうした中で、複数の大手予備校などの取材を通じ、現段階で明らかになっているポイントについてコンパクトにまとめました。どういった点が変更になるのか、改めて確認していただければ幸いです。
(ダイヤモンド編集部 藤田章夫、宮原啓彰、西田浩史)