「週刊ダイヤモンド」1月17日号の巻頭特集は「保険激変! 商品・生損保・代理店」。その中から、生保業界のガリバーとして君臨してきた日本生命保険が首位陥落したことによる波紋をお送りする。

「どうしてあんな発言をしたんだね」。総代会の重鎮にこんなお叱りを受けたのは、日本生命保険の児島一裕常務執行役員だ。

 その理由は、昨年11月28日に行われた2014年度上期の決算会見での発言だ。

「日本最大にこだわっている当社にとって、看過できない」

 生保のガリバーを自他共に認める日生が、売上高に相当する保険料等収入で、業界第2位である第一生命保険に逆転を許したからだ。その事態に児島常務は、思わず真情を吐露してしまったわけだ。

 ちなみに、総代会とは、生保特有の会社形態である相互会社にのみ、存在する制度。株式会社の株主総会に相当するといわれるが、200人から成る総代の肩書は、企業規模の差はあるものの、社長や役員のオンパレードだ。

 そういったお偉いさんが叱責しなければならないほど、日生には焦りが透けて見える。

 では、ガリバー日生が、第一の後塵を拝した理由は何か。答えは単純明快。第一の子会社である第一フロンティア生命保険が、みずほ銀行を中心に、外貨建て個人年金保険を売りまくったからだ。

 第一の銀行窓販での売上高は約1兆円に上るが、日生のそれは、約2200億円と第一の4分の1以下でしかない。

「銀行窓販は浮き沈みのリスクが高いので、あまり力を入れていない」(日生幹部)

 そういう面は確かにある。実際、上期決算が終わった後、窓販での売れ行きは少々鈍化しており、「通期では日生に抜き返されるのではないか」(第一幹部)との見立てもなくはない。

 とはいえ、7年前に第一は大手生保として初めて、本体から分離独立するかたちで銀行窓販専用子会社の第一フロンティアを一から立ち上げた。本体で銀行窓販を行うには、システムが巨大過ぎて機動性に欠けるためだ。

 もっとも、立ち上げ後にリーマンショックに見舞われるなど厳しい時期が続いたが、「毎年200億〜300億円の赤字が続いても構わない」(渡邉光一郎・第一社長)と割り切ってきた。

 さらに、第一は損保ジャパン(現損保ジャパン日本興亜)から損保ジャパンDIY生命保険を買収し、ネオファースト生命保険に衣替えした。システムも全て一新し、これまで手薄だった保険代理店チャネルに加え、第一フロンティアの成功を引っ提げ、銀行での平準払い(月払い)の保険販売に本腰を入れる構えだ。

 相互会社から株式会社に転じた後は、しばらく低迷が続いた第一だが、これまでまいてきた〝種〟が芽を出し始めた結果が、今回の逆転劇につながったとみることができる。「金利が上がれば、一気に資金が流出する可能性が高い一時払い終身保険を販売せずにあの業績だ」(渡邉社長)と胸を張る。

 一方の日生はといえば、相変わらず本体で銀行窓販を行っているのみ。その実、「第2ブランド構想」を水面下で走らせ、第一と同じく銀行窓販子会社の設立に動いており、現在、買収先を物色中だが、いまだ光は見えない。

 しかも、第一には昨年、買収した米プロテクティブ生命保険の売上高約4000億円も、じきに上乗せされてくる。そうなれば、年間を通して第一が日生を上回る可能性もあるわけで、これぞまさに看過できない事態となるだろう。