記事一覧:Book Reviews 書林探索140

  • 経済停滞の真因を包括的に分析低成長を脱する処方箋を提示

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    経済停滞の真因を包括的に分析 低成長を脱する処方箋を提示

    2013年03月02日号  

    なぜ日本の成長率が低下したのか。多くの論争があるが、決着はついていない。本書は、低下の理由として、[1]通常、退出させられていたはずの「ゾンビ企業」を保護し、健全な競争相手の収益性を低下させた。[2]規制が生産性上昇を妨げた。[3]マクロ経済政策に大きな問題があった。すなわち、(1)金融緩和が不十分でデフレを終結できなかった。(2)公共投資は生産的でなく、民間投資を圧迫した。(3)銀行危機への対応は不十分で、銀行の資本不足は解決されなかった、ことを挙げる。以上の分析の上で、停滞から脱却するために、規制改革、対外開放、マクロ経済政策の改善を提案している。

  • 未知領域に踏み込んだ金融政策データに基づく議論のヒント

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    未知領域に踏み込んだ金融政策 データに基づく議論のヒント

    2013年02月23日号  

    本書は、最近の非伝統的金融政策のあり方を一般向けに解説した啓蒙書で、著者が2年前に上梓した『ポスト・マネタリズムの金融政策』(日本経済新聞出版社)の続編としての性格も持つ。2年前の本では伝統的な金融政策の歴史的変遷が展開されたのに対して、本書では、2007年に始まる世界的金融危機、とりわけ08年秋のリーマンショックによって、これまでの「平時」における金融政策の枠組みが、どのようになっていったのかがわかりやすく説明されている。

  • デフレの真の原因は何か?アベノミクスの原点を痛烈批判

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    デフレの真の原因は何か? アベノミクスの原点を痛烈批判

    2013年02月16日号  

    本書はいわゆる「アベノミクス」を直接論じたものではないが、そのよって立つ経済学的基礎に対して、痛烈な批判を含む内容になっている。これから行われようとしている経済政策の、発想の原点を知りたいと思う読者には、ぜひ通読してもらいたい一書である。

  • 一丁上がりのミドルに明日はなし自己変革の勇気を与える書

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    一丁上がりのミドルに明日はなし 自己変革の勇気を与える書

    2013年02月09日号  

    管理職になってまずは一丁上がり。その後は共同体的な日本企業の居心地のよさに浸って、日々を漫然と過ごし、情理の世界で「立派な課長」を目指すミドルに明日はない。またそうしたミドルを育てる会社、そういう会社で満たされる日本にも明日はない、という著者の強い思いがひしひしと伝わる。このようなミドルマネジメントではなく、「ミドルリーダー」になるためのマインドと日常の訓練を説くのが本書である。

  • 需給逼迫時に節電と発電を促す電力システム改革の具体策

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    需給逼迫時に節電と発電を促す 電力システム改革の具体策

    2013年02月02日号  

    東日本大震災後、夏場には、現在も各地で電力需給が逼迫する。ピーク時に、需要を抑える価格メカニズムは存在せず、電力会社以外からの追加供給も乏しい。本書は経済学の視点から、電力システム改革の具体策を論じる。現在、大口需要者向けの相対取引で確定するのは価格だけで、購入量は確定しない。大口需要者は固定価格で好きなだけ買えるため、節電は進まない。

  • 不況、家庭崩壊、精神疾患浮き彫りになる日本社会の深刻

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    不況、家庭崩壊、精神疾患 浮き彫りになる日本社会の深刻

    2013年01月26日号  

    これは画期的な本である。世界で2番目に古い職業といわれながら、今の日本では売春の実態調査は驚くほど少ない。風俗嬢の意識調査やルポルタージュの類いはあっても、属性や来歴や価格を意識したデータは見当たらない。

  • ミル、アリストテレスとサボる日常生活の意味を読み解く

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    ミル、アリストテレスとサボる 日常生活の意味を読み解く

    2013年01月19日号  

    「日常生活を哲学する」という副題で、目覚め、外出前の身支度、通勤など、現代人の日常的な行動の一コマ一コマについて、哲学・精神分析・心理学・政治学・社会学・文学など多様な立場からそれらの意味を問い直しながら各分野の代表的論者の概説をするという、野心的かつ知的なエンターテインメントである。

  • 経済大混乱をもたらす危険担保なき国家債務問題の行方

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    経済大混乱をもたらす危険 担保なき国家債務問題の行方

    2013年01月12日号  

    総選挙の結果は自民党の地滑り的圧勝に終わった。安倍晋三総裁による組閣を経て、これから選挙期間中に公約されていた、金融政策や財政政策によるデフレ脱却の方策やそれを強化するための日銀法改正などがどこまで実施されるのか、そして安倍総裁が実行できると公言していた政策の、ご祝儀ではなく実質的な効果がいつ出てくるのか、まずはお手並み拝見というところである。

  • あのとき、何ができたのか福島原発事故 決断の教訓

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    あのとき、何ができたのか 福島原発事故 決断の教訓

    2013年01月05日号  

    菅直人元総理を評価する人は多くないが、菅氏でなければ福島原発事故にもっとうまく対処できたとするなら、それは誤りだと思う。民主党政権が失敗したのは、官僚を使いこなせなかったからだという識者は多い。使いこなすとは、政治家が基本的方針を持って、実務に長けた官僚の意見を聞きつつ、官僚組織を動かすということだろう。確かに、自民党政権時には、そんな政治家もいた。

  • 中国経済 停滞と発展の歴史ダイナミックな過程を提示

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    中国経済 停滞と発展の歴史 ダイナミックな過程を提示

    2012年12月22日号  

    本書は、世界銀行上級副総裁を務めた著者が、北京大学で行った中国の経済発展と体制移行に関する講義ノートをまとめたものである。近代以前の中国は、世界で最も先進的な強国で、そのGDP(国内総生産)は世界の3分の1を占めていた。それが、産業革命を契機に衰退が始まり、戦前は西欧列強の半植民地ともなった。戦後の重工業化優先の計画経済も失敗した。しかし、1979年に改革開放戦略が実施されると、中国は奇跡的な成長を実現する。その後30年間の経済成長率は、実に年平均9.9%であった。いまや中国は日本を抜いて世界第2の経済大国である。

  • もの作り産業の大革新を予見始まった生産手段の民主化

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    もの作り産業の大革新を予見 始まった生産手段の民主化

    2012年12月15日号  

    本書で言う「メイカーズ」とは、いわゆる製造業者のことではない。メイカーズとはわれわれ一般市民、一般の消費者のことを言っている。世界的ベストセラー『ロングテール』『フリー』でネットビジネスの驚異的な可能性を喝破した著者アンダーソンは、この新著では一転、ネットビジネスに一見そぐわない「もの作り」産業こそ、これから最も革新的な舞台になると予見する。ただしその未来像は、新たなニッチ産業が云々といった、ありふれた話とは訳が違う。

  • 社会変革の精神が根付く米国イノベーションの物語集

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    社会変革の精神が根付く米国 イノベーションの物語集

    2012年12月08日号  

    「われわれはテクノロジーを人間化しなければならない──人間がテクノロジーから人間性を奪われる前に」というオリヴァー・サックス氏の引用から始まる本書は、マサチューセッツ工科大学(MIT)の先端技術研究所で繰り広げられているイノベーションの物語集だ。本書を読むと、MITメディアラボはまさに米国の夢と技術力と良心を象徴するような研究所であり、そこに集まる教授、学生、そしてスポンサー企業群が織り成す未来探索の場だということが手に取るようにわかる。

  • 基軸通貨ドルの行方を読み解くドル中心の多極化体制に移行

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    基軸通貨ドルの行方を読み解く ドル中心の多極化体制に移行

    2012年12月01日号  

    一時、米国の経常赤字はGDPの6%に達していた。ドルが基軸通貨であるため、海外から低利で借り入れし、稼いだ所得より6%も多く消費できた。世界金融危機の際には、震源地が米国であったにもかかわらず、世界中の投資家はドルに殺到した。それ故、米国の中央銀行はドル暴落を心配することなく、利下げを行ってドル安に誘導し、景気を刺激した。

  • 稀代の政治家・田中角栄伝政治ジャーナリストによる鎮魂歌

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    稀代の政治家・田中角栄伝 政治ジャーナリストによる鎮魂歌

    2012年11月24日号  

    戦後の日本政治史、いや日本近代政治史上に残る政治家は誰か。よかれあしかれ田中角栄の名前が上位に挙がることは間違いない。若い人はともかく、「あの時代」を少しでも経験した人にとって、田中角栄という名前を聞いて何か心の中にざわつくものを感じない人はいないだろう。本書は、この稀代の政治家、田中角栄に取材し寄り添ってきた手だれの政治ジャーナリストによる評伝であり、鎮魂歌でもある。まったく面識がなくとも角栄と呼びたくなる彼の業績と負債は何だったのか。著者はジャーナリストとしての長年の経験を生かして、多数の逸話を繰り出し、角栄の実像に迫らんとする。

  • コンピュータとの勝負の記録「人間とは何か」の問いに迫る

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    コンピュータとの勝負の記録 「人間とは何か」の問いに迫る

    2012年11月17日号  

    最近はコンピュータがプロ棋士を破ったりするようになってきたが、コンピュータはどこまで人間に近づいたのだろうか? コンピュータの能力が人間並みになったかどうかの基準として「チューリングテスト」というものがある。これは、数学者のアラン・チューリングが1950年に考えた試験で、審判が壁の反対側に置いたコンピュータおよび人間(サクラと呼ばれる)と問答して、人間とコンピュータを区別できなければ「コンピュータは人間並みに考えることができる」とするものである。この試験の面白い点は、「人間とは何か」という哲学的な問題に直結することにある。

  • 日本の農業が生き残る道深い失望と渾身の提言

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    日本の農業が生き残る道 深い失望と渾身の提言

    2012年11月10日号  

    本書は日本の農業の実態に精通している著者が、日本農業への遺言として書いた渾身の一冊である。

  • 森林伐採と自然保護の両立日本林業再建に懸ける熱き思い

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    森林伐採と自然保護の両立 日本林業再建に懸ける熱き思い

    2012年11月03日号  

    著者は、9代続く林業家の後継ぎとして生まれ、1070ヘクタールの森林を経営し、1700ヘクタールの森林を管理している。

  • 累積する国家債務への警告破滅的な結末を迎える危険

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    累積する国家債務への警告 破滅的な結末を迎える危険

    2012年10月27日号  

    拡大の一途をたどる国家債務への警告が本書のテーマである。危機が既に顕在化した欧州に限らず、累積した国家債務が生み出す危機の連鎖は、いまや世界経済が潜在的に抱える大きなリスクとなっている。

  • 「理想」という言葉の原意に迫る経済論義が立つべき視座を提供

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    「理想」という言葉の原意に迫る 経済論義が立つべき視座を提供

    2012年10月20日号  

    会議に出ていて、次のようなせりふに出くわすことがある。例えば「それは理想論にすぎない」とか、「いまは理想主義に浸っている場合ではない」とか。今の時代、「理想」という言葉が、肯定的に使われることはめったにない。

  • 作り手の「強い思い」が生む世を変えるロングセラー商品

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    作り手の「強い思い」が生む 世を変えるロングセラー商品

    2012年10月13日号  

    われわれは日々懸命に、いいモノやサービスを生み出そうと努力している。しかし、得てしてその努力は、単なる「目新しさ」に向かって注がれるだけであり、「イノベーション」にはつながっていない。その結果、似たようなチューインガム(かんですぐに捨てられる)製品が山ほど市場に溢れ返るが、本当に欲しいと思えるものはなかなか見当たらない。

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記者の目

  • 編集部 野村聖子

    持ち場で黙々とベストを尽くす人こそ信頼できる専門家

     物事の正誤を判断するとき、いくら自分が〝科学的〟だと自負していても、人間である以上、必ず主観が入るものです。科学的な思考の第一歩とは、まずそれを自覚することから始まるのではないでしょうか。
    「自分は科学的な思考の持ち主である」と断言する〝専門家〟、個人的にこのような方は、発言の中身にかかわらず信用しないことをお勧めします。〝ニセ医学〟を批判して、「自分は正しい」と豪語する人もまた、科学を宗教化しているという意味では、ニセ科学の提唱者と変わりがないからです。
     何事も声高に主張せず、おのおのの持ち場で黙々とベストを尽くす人こそが、本当に信頼できる専門家といえるのかもしれません。

  • 編集長 山口圭介

    近視眼的な政策が優先されがちな今こそ池尾氏の言葉噛み締めて

     弊誌が大変お世話になった慶應大学名誉教授の池尾和人氏が2月21日、永眠されました。68歳でした。
     池尾氏の著作『現代の金融入門』は学生時代の必読の書であり、金融担当の記者になってからも金融危機の経験を盛り込んだ新版を幾度となく読み返しました。
     池尾氏はかつて「金融ビッグバン」の必要性を主張し、2015年には「コーポレートガバナンス・コード」の策定にも関与するなど、現実の政策にも貢献しようと尽力してきました。
     国家百年の計とは言わないまでも「国家25年の計」を訴えた池尾氏。近視眼的な政策が優先されがちな今こそ、経済報道の片隅を担う存在として池尾氏の言葉をかみ締めて仕事に臨みます。

先週号の案内2021年2月27日号

表紙

特集株・不動産・節税で 資産1億円

資産1億円──。一般人にとっては縁遠い金額だが、世の中には手元資金数十万円から、1億円を超える資産を築き上げた猛者たちがいる。本特集では、その“偉業”を成し遂げた名物投資家たちの投資手法を詳述し、かつインタビューを通して「億り人」となった背…

特集2事例で学ぶ (新)ビジネスモデル解剖

グローバル化による国際競争の激化やデジタル技術の台頭で、既存の業界が一瞬で破壊されることが多くなった。さらにコロナ禍で事業を取り巻く環境は一変した。不確実で変化の早い現代に求められるのは、過去の成功パターンの踏襲ではなく新たな勝ち筋の発見だ…