記事一覧:Book Reviews 書林探索140

  • 日本の農業にチャンスあり農政への合理的批判を提言

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    日本の農業にチャンスあり 農政への合理的批判を提言

    2013年12月21日号  

    TPPへの交渉参加が決定してから、農業政策が話題になることが多い。日本の農業はなぜうまくいっていないのか。本書はこれまでの農業政策の誤りとその背景、そして処方箋を説明する。

  • 漠たる不安を冷静に分析国民が握る暴落回避の道

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    漠たる不安を冷静に分析 国民が握る暴落回避の道

    2013年12月14日号  

    バブル崩壊後の「失われた20年」の間に残高が大きく膨れ上がってしまった日本国債。その暴落の可能性が昨今さまざまな形で懸念されている。主要国の中で突出した政府債務残高に対する危機意識は、今や誰もが少なからず抱くものだ。「政府の借金はどこまで拡大しても大丈夫なのか?」「国債価格が暴落したとき、その金融システムへの影響はどれほど大きいのか?」など、疑問はいくらでも湧いてくる。

  • 自然が奏でる「音」を読む新しい環境認識の道を示唆

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    自然が奏でる「音」を読む 新しい環境認識の道を示唆

    2013年12月7日号  

    自然環境というと、われわれはまず、広大な自然の風景をイメージする。われわれは暗黙のうちに、視覚によって捉えた自然を自然環境だと理解している。しかし、普段あまり意識はしていないが、われわれは実はもう一つ別の感覚を使って自然を捉えている。それは聴覚である。都会の騒音ですら、何か一つ「音」が欠けただけで、われわれはすぐさま異変を感じ取る。われわれは目で見る以上に自然を、あるいは環境を、「聴いて」いるのである。

  • ビジネスの成功確率がアップ科学マインドを養う入門書

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    ビジネスの成功確率がアップ 科学マインドを養う入門書

    2013年11月30日号  

    米国の「ハーバードビジネスレビュー」誌で「データサイエンティスト」が21世紀で最も魅力的な職業とされ、ビッグデータやアナリティクスなどの言葉が飛び交っている。ゼネラル・エレクトリックのジェフ・イメルトCEOは、「製造業はアナリティカルな存在になるべきだ」と言い、IBMはスマータープラネットをビジョンに掲げて、データを駆使してもっと賢い、無駄がなくスムーズな世の中を実現していこうと、ダイナミックに経営のかじを切っている。

  • 経済成長との両立の道を模索提示される平等政策の未来

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    経済成長との両立の道を模索 提示される平等政策の未来

    2013年11月23日号  

    内外を問わず再分配は論壇のホットイシューである。経済成長と再分配、あるいは効率性と平等性のトレードオフを強調する人々は、グローバル化の進んだ現在、ケインズ政策もベヴァレッジ型の福祉国家ももはや時代遅れとし、平等悲観主義を唱える。片や、かつての日本の民主党政権や左派の論客の間では、賃金引き上げが総需要を増やすといった平等至上主義が信奉されており、弱者を淘汰するとしてグローバル化には批判的である。

  • 現場のサービス品質を高める「優れたマニュアル」の効用

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    現場のサービス品質を高める 「優れたマニュアル」の効用

    2013年11月16日号  

    本書は、一時経営不振に陥った無印良品をV字回復に導いた松井忠三氏が、同社のマニュアルについて公開した本である。一般にわが国ではマニュアルの評判は芳しくなく、実際に形骸化して守られないマニュアルも多いし、実用の裏マニュアルなどというものが存在する組織も少なからずある。

  • 世界恐慌はなぜ起きたか中央銀行総裁の格闘とミス

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    世界恐慌はなぜ起きたか 中央銀行総裁の格闘とミス

    2013年11月9日号  

    本書は第1次世界大戦後の世界金融再建について、先進国の中央銀行総裁たちがいかに努力をしたか。そして、1929年のウォール街での株式市場の大暴落とそれに続く世界恐慌がどのようにしてもたらされたかを、重層的に描いた名著だ。2010年にはピュリツァー賞(歴史書部門)を受賞している。

  • 財政再建を成し遂げる道筋予算制度の改革を提示

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    財政再建を成し遂げる道筋 予算制度の改革を提示

    2013年11月2日号  

    日本の財政再建は失敗の連続だ。唯一の成功例は1984年に導入された特例公債脱却目標だが、成功は80年代末のバブルで想定外に税収増が発生したためだった。それ故、バブルが崩壊した途端に赤字は大きく膨らんだ。近年は好不況にかかわらず、補正予算による追加財政が常態化している。来年4月の消費増税が最終決定されたが、悪影響を相殺するために大盤振る舞いの追加財政も決定された。いつになれば財政再建が進むのか。

  • 戦略論のロジックを道具に台頭する中国の今後を洞察

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    戦略論のロジックを道具に 台頭する中国の今後を洞察

    2013年10月26日号  

    中国がどうなるかは多くの人々の関心の的だが、本書は、これに戦略論の立場から答えを与えている。中国の経済力が強化され、それを背景に多大な軍事費を賄うことが可能になっている。これまでの中国の外交は、平和的台頭と自ら宣言し、インドやベトナムとの争いはあったが、全般的には国際的なルールに従って既存の国境を守るというものだった。ところが、その行動が2008年の世界金融危機以降、急激に変化したという。

  • 岐路に立たされたIMF国際通貨制度を俯瞰する

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    岐路に立たされたIMF 国際通貨制度を俯瞰する

    2013年10月19日号  

    グローバル化が進む世界経済では、ここ10年間、国際金融市場において新興国のプレゼンスが飛躍的に高まっている。それに伴い多国間主義に基づくIMF(国際通貨基金)等でも、新興国を含めた地球規模の政策協調の話し合いが重要性を増している。しかしながら、さまざまな利害関係を持つ国々の参加が増えれば増えるほど、話し合いは難しくなる。その結果、IMF等の国際機関でも、その果たすべき役割は大きな岐路に立たされている。本書は、このような問題意識の下、国際通貨制度のあり方を、その仕組みや成り立ち、思想にまで立ち返って包括的に論じた優れた啓蒙書である。

  • 電気料金引き上げのカラクリ原子力行政に鋭く切り込む書

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    電気料金引き上げのカラクリ 原子力行政に鋭く切り込む書

    2013年10月12日号  

    福島第1原発の事故以降、電気料金の引き上げが相次いでいる。電力会社は火力発電の燃料費増加を理由にしているが、これは本当なのか。本書は、朝日新聞経済部の独自の取材に基づき、電気料金引き上げのカラクリと、その背景でひそかに「復活」しつつある原子力行政の実態に、鋭く切り込んだ一書である。

  • 聴衆を魅了するプレゼンの秘密誰でもまねできるトークの技術

    Book Reviews 書林探索
    聴衆を魅了するプレゼンの秘密 誰でもまねできるトークの技術

    2013年10月5日号  

    TEDトークが人気になって久しい。多くの人々がすでにTEDトークを自宅のパソコンで見たことがあるだろう。NHKのスーパープレゼンテーションでも放映されている。TEDとはテクノロジー、エンターテインメント、デザインの三つの分野の頭文字だ。その三つの分野から感動やインパクトをもたらすアイデアや実践を、世の中をよくしていきたいという熱い思いを持ったオーディエンスに、アイデアの持ち主や実践の本人が直接語りかけ、インスピレーションを与える、そんなトークショーだ。

  • 生活保護をめぐる問題の憂鬱誤解を解く現状報告の書

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    生活保護をめぐる問題の憂鬱 誤解を解く現状報告の書

    2013年9月28日号  

    生活保護をめぐる議論は憂鬱になる。不正受給に人々が怒りを感じるのはよくわかる。だが不正受給そのものはどう多く見積もっても数パーセント程度。受給者数が急増している理由は、端的に言って長期不況が続いているからである。それと「働けるはずの人が働かない」ことへのねたみと怨嗟もすさまじい。

  • ライバル企業の登場は歓迎ヤマトが実践する新需要創出

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    ライバル企業の登場は歓迎 ヤマトが実践する新需要創出

    2013年9月21日号  

    企業経営者の連載記事にコラムやその他寄稿を合わせた「経営教室」シリーズの1冊。ヤマトホールディングス社長の著者が、同社の考え方を開陳している。そのユニークさは、業界外から来た著者が、小倉昌男という強烈な名経営者のDNAを受け継ぐだけでなく、業界の常識に縛られない視点をいわば接ぎ木して発展させていることにある。

  • 国論を二分する最重要課題リンカンに学ぶ合意形成の法

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    国論を二分する最重要課題 リンカンに学ぶ合意形成の法

    2013年9月14日号  

    本書は第16代米国大統領エイブラハム・リンカンが奴隷解放をいかに考え、政策として実施していったかを記録したものである。本書はピュリツァー賞、バンクロフト賞、リンカン賞という米国で出版された歴史書に与えられる主要な賞を総なめにした名著である。著者は米国歴史学界の重鎮であり、奴隷解放に至る経過を淡々と、しかもさまざまな角度から実に詳細に描くことで、歴史の複雑さを表現し、読み応えのある著作になっている。現代政治を考える上でも示唆に富んだ論点を多く含む。

  • デフレ脱却より高いハードル出口戦略のコストを冷静に分析

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    デフレ脱却より高いハードル 出口戦略のコストを冷静に分析

    2013年9月7日号  

    黒田東彦・日本銀行総裁は、ベースマネーや長期国債の保有を2倍にし、インフレ期待に働きかけてデフレ脱却を目指すという。バーナンキFRB議長は、中央銀行のバランスシートの規模がインフレ期待に与える影響は皆無だと明言する。どちらが正しいのか。かつて日銀の理論的支柱と呼ばれた著者が、各国の金融政策を平易に解説する。

  • キャリアチェンジを支えた勇気日本が停滞から脱するヒント

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    キャリアチェンジを支えた勇気 日本が停滞から脱するヒント

    2013年8月31日号  

    著者は、緑内障を引き起こす遺伝子ミオシリンを発見した後、白内障や緑内障の手術を極める眼科医となる。患者と直接向き合う中で、多くの人を救う薬を開発したいと、眼の新薬開発の支援を行うベンチャー企業の経営者になった。このようなキャリアチェンジができたのは、それまでのキャリアをスパッと捨てられたからだという。それまでの人生を捨てる勇気がないと、より大きな次の何かを極めることはできないという。

  • 緻密な調査と実証分析が明かす社会・経済問題としての自殺

    Book Reviews 書林探索
    緻密な調査と実証分析が明かす 社会・経済問題としての自殺

    2013年8月24日号  

    自殺は、私たちの暮らしの中で起きている最も深刻な社会問題の一つである。特に日本は、先進国の中でも自殺率が最も高い国の一つとなっている。本書は、そのような日本の自殺問題を、精神疾患などの直接的な原因だけでなく、社会・経済問題として捉え、緻密な調査と実証分析から「なぜ自殺に追い込まれてしまう人がいるのか」の要因を明らかにしようとする取り組みである。

  • 書斎でひそかに味わいたい「500冊」に巡り合う醍醐味

    Book Reviews 書林探索
    書斎でひそかに味わいたい 「500冊」に巡り合う醍醐味

    2013年8月17日号  

    書名を見て思わず手が出た(というか、手が飛び出した)。評者も常々この同じ「苦しみ」を誰かと分かち合いたいと思って生きてきたので、何か渇望にも近い気持ちで一気に読んだ。そして身につまされて面白かった。だいたい「蔵書の楽しみ」などと言っていられるのは、よほど本の数が少ない場合であって、ある閾値を超えたらもう、戸惑いと挫折の連続なのだ。「それなら借りて読めばいいでしょう」と見事なことを言う人もいるが、それができないから苦労しているのであって、およそ世の本好きなるものにとって、本とはなぜか買って読むものと決まっており、一度読みかけたが最後、それがいかに「つまらん本」であっても捨てるということだけはできないのだ。

  • 米国でも根強い女性への偏見前へ踏み出すためのアドバイス

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    米国でも根強い女性への偏見 前へ踏み出すためのアドバイス

    2013年8月3日号  

    リーン・インとは、「一歩前へ踏み出す」という意味だ。多くの女性たちに社会でもっと活躍してもらいたいという思いを込めて、もう一歩前へ踏み出そう、と呼びかけている。著者はフェイスブックの女性COO(最高執行責任者)であり、2児の母で多忙な日々を送っている(もっとも女性○○という言葉の使い方自体が、「珍しい女性○○」という含意があり気に入らないとしているが)。本書では自身の人生を失敗談も含めて赤裸々に振り返りながら、世の多くの女性ももっと自信を持って前へ踏み出せるという根拠とアドバイスを丁寧に語っている。そして徐々にではあるが、これまでの男女間の役割のステレオタイプと男尊女卑の偏見を取り払うことで、男女が協力し合う社会や企業ができつつあることを事例で紹介している。

定期購読キャンペーン

記者の目

  • 編集委員 藤田章夫

    新NISAを追い風にする保険業界のしたたかさ

     新NISAが1月からスタートし、保険の販売には逆風かな?と思っていたら、「むしろ追い風になっていますよ」との声が多数。
     資産運用の相談に来た人に、「投資信託は資産が減ることもありますが、変額保険の死亡保険金額には最低保証があります」と言えば、「保険の方がいいか」となるようです。
     本来は、資産を運用したいのか保障が欲しいのか、目的に応じて使い分けたいところですが、これがかなり難しい。
     そこで、保険ジャーナリストの森田直子さんとファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんに、保険と運用それぞれの立場から対談を行っていただきました。面白過ぎて、対談時間はあっという間に過ぎました。ぜひご一読ください。

  • 副編集長 名古屋和希

    “予定調和”の買収は今後減少?

     第一生命ホールディングスが3月に福利厚生代行のベネフィット・ワンを買収しました。この買収劇は異例の展開をたどりました。
     先に買収を表明したのは医療情報サイト運営のエムスリーでした。そこに第一生命が参戦したのです。結局、エムスリーよりも好条件を提示した第一生命が買収戦を制しました。大企業による対抗的な買収は極めて珍しいものです。
     従来、事業会社はイメージ悪化などを恐れ、「敵対的」な買収を控えてきました。ただ、近年はルール整備などを背景に「同意なき買収」が広がる機運が出ています。買収が活発になれば、企業・業界の新陳代謝も促せます。今後、“予定調和”の買収は減っていくかもしれません。

最新号の案内24年4月27日・5月4日合併特大号

表紙

特集保険vs新NISA 今「契約したい保険」は? 生保商品ベスト&ワーストランキング

保険とNISA、どちらに資金を振り向けるべきか──。新NISAをきっかけに投資熱が高まる中、多くの人が抱える悩みだ。そこで保険とNISAで迷ったときの考え方や保険の見直し方、保険のプロ29人が辛口採点した生命保険商品ランキングを、業界の深部…

特集2変局 岐路に立つNHK

NHKが大きな岐路に立たされている。今国会で放送法改正案が可決されれば、ネット視聴も受信料徴収の対象となる。一方で、今後、NHKの受信料収入は人口減やテレビ離れを背景に先細る可能性が高い。職員数1万人を誇る巨大公共放送機関は、「みなさまのN…