記事一覧:野口悠紀雄「超」整理日記 経済・メディア・情報を捌く376

  • 製造業においても「減反政策」が必要

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    製造業においても 「減反政策」が必要

    2013年2月2日号  

    政府は11日、事業規模20.2兆円の緊急経済対策を決定し、大型補正予算を編成することとした。この政策の最大の問題点は、対症療法的な需要追加によっては、日本経済が抱える構造問題を解決できないことだ。それだけではない。需要追加方式は、持続可能性がないのだ。以下では、まずこの点について論じよう。そして、本来必要とされるのは、需要追加ではなく、供給能力削減であることを主張する。

  • 安倍内閣の政策は右傾化でなく左傾化

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    安倍内閣の政策は 右傾化でなく左傾化

    2013年1月26日号  

    メディアは移り気である。変化には多大の興味を示すが、底に横たわる不変の事態には関心を持たない。「状況は昨日と同じです」ではニュースにならないからだ。株価も為替レートも、昨日と比べての変化が最大のニュースだ。政権交代も大きな変化だから、報道の注目は集まる。それによって株価や為替レートが動けば、売買によって利益を上げられるから、さらに注目が集まる。総選挙前後からの経済報道は、こうした側面に終始した感がある。

  • 幻の輸出立国を追い円安を求め続ける愚

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    幻の輸出立国を追い 円安を求め続ける愚

    2013年1月19日号  

    日本の貿易収支は、東日本大震災以来、若干の例外を除き月ベースで赤字になっている。2012年1~10月は5.3兆円の赤字だ。これは、前年同期の赤字1.7兆円の3倍を超える。11年の貿易統計ベースの赤字は2.6兆円だった。年中の1~10月の比重が変わらないとすると、12年の貿易収支は8.2兆円という巨額の赤字になる。サービス収支の赤字を加えると、10兆円程度になる。所得収支の黒字は14兆円程度あると考えられるので、経常収支の黒字は維持できるだろう。しかし、震災前に比べて状況が大きく変化したことは間違いない。したがって、貿易赤字拡大の要因を把握することが重要である。

  • 金融緩和で日本経済は海図なき航海に出る

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    金融緩和で日本経済は 海図なき航海に出る

    2013年1月12日号  

    総選挙は、自由民主党の圧勝に終わった。安倍晋三総裁が選挙前に金融緩和を標榜していたこともあり、これから大幅な金融緩和に向けての政策が取られるだろう。株式市場はこれを好感し、大幅に上昇した。しかし、日本経済の実情は極めて厳しい。対中輸出の減少などを原因として、景気が落ち込んでいる。巨額の赤字に直面する家庭電器産業の問題も、なんら解決されていない。また、エコポイントやエコカー購入補助などの支援策を再開するのも困難だ。そして、製造業の海外移転も続く。これまでのような大企業だけでなく、部品メーカーをはじめとして中小企業も海外移転するだろう。このため、2013年においては、企業城下町での工場閉鎖が相次ぎ、失業率が高まる可能性が高い。

  • 閉塞感は強まるがチャンスはいくらでも

    野口悠紀雄「超」整理日記 経済・メディア・情報を捌く
    閉塞感は強まるが チャンスはいくらでも

    2013年1月5日号  

    2013年の経済環境は、これまでの事業を継続しようとする人や企業にとっては、ますます厳しいものになるだろう。しかし、それは、チャンスがないことを意味するものではない。新しい事業を始めようとする人や企業にとっては、これまでにも増してチャンスに溢れた年になるだろう。私は、講演で地方都市に行く機会が多い。そこで地元企業の方々と話す場合がある。業種は、圧倒的に製造業の方々が多い。伝統的な地場産業というよりは、何らかの形で大企業の系列と関連している企業である。「昔からの地場産業が強いはず」と想像される地域においてもそうだ。

  • 日本経済立て直し第一歩は教育拡充

    野口悠紀雄「超」整理日記 経済・メディア・情報を捌く
    日本経済立て直し 第一歩は教育拡充

    2012年12月22日号  

    総選挙の結果は本稿執筆時点ではわからないが、新政権がいかなる政治勢力になったとしても、経済政策面での最大の課題は、日本経済の立て直しである。憂慮されるのは、「金融緩和をすれば景気が回復する」という類いの安易な考えが広がることだ。日本経済の不調は、景気循環的なものではない。だから、金融政策で対処できるものではない。1999年のゼロ金利政策、2001年以降の量的緩和、そして10年以降の包括的緩和政策と、次々に金融緩和政策が行われたにもかかわらず、日本経済の不調は、90年代以降継続している。

  • 総選挙で社会保障の負担の全体像を示せ

    野口悠紀雄「超」整理日記 経済・メディア・情報を捌く
    総選挙で社会保障の負担の 全体像を示せ

    2012年12月15日号  

    今回の総選挙で、TPPや脱原発は重要な争点とされている。しかし、社会保障制度の改革は重要な争点とは見なされていない。こうなるのは、いくつかの理由がある。第1は、緊急の問題ではないことだ。TPPのようにここ数カ月の間に基本的な態度を決めなければならないような問題ではない。第2は、社会保障制度の改革を真面目に考えれば負担増や給付削減を提案せざるを得ないが、それは確実に不人気な政策となるからだ。どの党も負担増には口をつぐむ。昔からそうだったが、今の日本では特にそうだ。他党が口をつぐんでいるなら、わざわざ言いだして批判されることはない。第3の理由は、脱原発などに比べて、わかりにくい問題であることだ。脱原発の是非を判断するにはさまざまな情報が必要だが、論点自体は極めて明瞭だ。それに比べて社会保障の問題は、「どこに問題があり、なぜそれが問題か」が明確に理解されていないのである。

  • 年金問題が総選挙の最大争点であるべき

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    年金問題が総選挙の 最大争点であるべき

    2012年12月8日号  

    日本の公的年金制度は、約550兆円の債務超過状態に陥っている。しかし、これが緊急の対処を要する重大な問題だとは、認識されていない。財政検証は、「100年間は大丈夫だ」とした。その再検討資料は、「賦課方式だから対処する必要はない」とした。一体改革では、受給資格期間の短縮化、パートの年金加入要件緩和、厚生年金と共済年金の一体化など、現行制度の微調整が行われただけで、550兆円の処理という年金財政の基本問題は、まったく閑却された。

  • 年金積立金不足は将来を映す水晶玉

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    年金積立金不足は 将来を映す水晶玉

    2012年12月1日号  

    企業年金について、現在次の二つが、問題になっている。第1点は、厚生年金基金の廃止問題だ。厚生年金基金は、厚生年金の一部を代行運用するもので、中小企業の加入が多い。しかし、多くの基金が積立金不足に陥っている。国に返上するには不足分を埋める必要があり、そのためには、企業が重い負担を負わなければならない。それを避けるために高い運用利回りを求めたことが、AIJ問題の原因になったと指摘された。

  • 公的年金積立金は550兆円も不足

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    公的年金積立金は 550兆円も不足

    2012年11月24日号  

    厚生年金を清算して解散することは可能だろうか? これに関するデータは、厚生労働省年金局数理課「平成21年財政検証結果レポート 国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し」(詳細版)2010年3月にある。それによると、厚生年金の場合、「過去期間に係る給付」が830兆円だ。これは、これまでの保険料負担に対応する給付だ。つまり、いま年金を受給しているか将来年金を受給できる人が、将来にわたって得る年金のうち、すでに支払った保険料に対応する分の割引現在値だ。給付に対しては、国庫負担金が一般会計から支出される。その現在値が「過去期間に係る国庫負担」であり、これは190兆円だ。

  • 巨額の積み立て不足を抱える厚生年金の惨状

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    巨額の積み立て不足を 抱える厚生年金の惨状

    2012年11月17日号  

    日本の公的年金は、将来どうなるのだろうか? 高齢化の進展に対応して、将来とも給付を続けることができるか?この問題に答えるため、政府は、少なくとも5年に1度は「財政の現況及び見通し(財政検証)」を作成し、公表することとされている。最新版は、2009年5月に発表された「平成21年財政検証結果」である。これによれば、厚生年金の場合、積立金が2105年まで持つ。このため、日本の年金は「100年安心年金」であるとされた。

  • 貿易赤字拡大をめぐるいくつかの誤った見方

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    貿易赤字拡大をめぐる いくつかの誤った見方

    2012年11月10日号  

    財務省が10月22日に発表した貿易統計によると、2012年度上半期(4~9月)の貿易収支は、3兆2190億円の赤字となった。これは、11年度の上半期に比べて約9割の増加だ。半期ごとの金額では、過去最大だ。

  • 革新力や競争力でなぜ小国が強いか

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    革新力や競争力で なぜ小国が強いか

    2012年11月3日号  

    世界知的所有権機関(WIPO)が今年の7月に発表した世界141カ国・地域の技術革新力に関する調査報告書によると、日本は25位だった。前年より5段階ランクが落ちた。1位はスイスで、スウェーデン、シンガポールがそれに続く(以上3国の順位は昨年と同じ)。香港が8位、アメリカが10位に入っている。韓国が21位、中国は34位だ。

  • 躍進するアジアの大学取り残される日本の大学

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    躍進するアジアの大学 取り残される日本の大学

    2012年10月27日号  

    山中伸弥教授のノーベル賞受賞は、停滞する日本に届いた久しぶりのうれしいニュースだった。日本の科学技術力を世界に知らしめた点で、2年前のはやぶさ帰還以来の快挙だ。しかし、喜んでばかりはいられない。前回述べたように、工学教育において、日本がアジアの大学に追い抜かれつつあるからだ。そこで言及したタイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)の2012~13年版大学ランキングについて、もう少し敷衍したい。

  • 絶好調の米企業と低迷する日本企業

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    絶好調の米企業と 低迷する日本企業

    2012年10月20日号  

    8月の鉱工業生産指数は、前月比マイナス1.3%と、2カ月連続の低下となった。前年同月比では4.3%の低下だ。この主たる原因は、対中国輸出が急減少していることだ。2010年10月にピークに達した後、ほぼ傾向的に減少してきた中国向け輸出は、今年8月には9662億円で、前年同月比で約1割の減少となった。

  • 強い産業を持つ国と古い産業のままの国

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    強い産業を持つ国と 古い産業のままの国

    2012年10月13日号  

    「アメリカが日本化する」としばしば言われる。雇用情勢がいつになっても改善しないのを見ていると、そう言いたくなる。しかし、アメリカ経済は、日本経済と大きく違う。それは、企業利益が増加し続けていることに明白に表れている。今年第2四半期には、全体の企業の4分の1が過去最高益を記録した(日本経済新聞、9月22日)。最高益企業が最も多いのは、金融業だ。アップルやグーグルの株価も史上最高値を更新し続けている。

  • 原発依存度だけの目標設定は無意味

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    原発依存度だけの 目標設定は無意味

    2012年10月6日号  

    「政策を評価するには、提案者に対して適切な質問をしなければならない」と前回述べた。政策提案者の側から見れば、「政策の策定に当たっては、問題を正しく設定しなければならない」ということだ。

  • 政策論議のやり方を考え直す必要がある

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    政策論議のやり方を 考え直す必要がある

    2012年9月29日号  

    総選挙が秋に行われるとの観測が強まっており、政治の季節になった。マスメディアは、政治家たちの離合集散を伝えるのに大わらわだ。そうした報道を否定するわけではないのだが、政策に関する報道が極めて不十分だ。以下では、政策に関する論議のあり方を再検討すべきことを主張したい。

  • 中国成長鈍化の原因は輸出でなく投資の減速

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    中国成長鈍化の原因は 輸出でなく投資の減速

    2012年9月22日号  

    中国経済の減速が目立つ。中国国家統計局が発表した2012年4~6月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は、前年同期比7.6%と、6四半期連続で鈍化し、リーマンショック後の09年以来、約3年ぶりに8%の大台を割り込んだ。

  • 消費税の地方税化は地方分権と矛盾する

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    消費税の地方税化は 地方分権と矛盾する

    2012年9月15日号  

    大阪維新の会は、8月31日にまとめた「維新八策最終版」において、消費税の地方税化を提言している。以下では、消費税の地方税化と地方分権は矛盾すること、地方分権に最も適した税は固定資産税であることを指摘する。

定期購読キャンペーン

記者の目

  • 編集委員 藤田章夫

    新NISAを追い風にする保険業界のしたたかさ

     新NISAが1月からスタートし、保険の販売には逆風かな?と思っていたら、「むしろ追い風になっていますよ」との声が多数。
     資産運用の相談に来た人に、「投資信託は資産が減ることもありますが、変額保険の死亡保険金額には最低保証があります」と言えば、「保険の方がいいか」となるようです。
     本来は、資産を運用したいのか保障が欲しいのか、目的に応じて使い分けたいところですが、これがかなり難しい。
     そこで、保険ジャーナリストの森田直子さんとファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんに、保険と運用それぞれの立場から対談を行っていただきました。面白過ぎて、対談時間はあっという間に過ぎました。ぜひご一読ください。

  • 副編集長 名古屋和希

    “予定調和”の買収は今後減少?

     第一生命ホールディングスが3月に福利厚生代行のベネフィット・ワンを買収しました。この買収劇は異例の展開をたどりました。
     先に買収を表明したのは医療情報サイト運営のエムスリーでした。そこに第一生命が参戦したのです。結局、エムスリーよりも好条件を提示した第一生命が買収戦を制しました。大企業による対抗的な買収は極めて珍しいものです。
     従来、事業会社はイメージ悪化などを恐れ、「敵対的」な買収を控えてきました。ただ、近年はルール整備などを背景に「同意なき買収」が広がる機運が出ています。買収が活発になれば、企業・業界の新陳代謝も促せます。今後、“予定調和”の買収は減っていくかもしれません。

最新号の案内24年4月27日・5月4日合併特大号

表紙

特集保険vs新NISA 今「契約したい保険」は? 生保商品ベスト&ワーストランキング

保険とNISA、どちらに資金を振り向けるべきか──。新NISAをきっかけに投資熱が高まる中、多くの人が抱える悩みだ。そこで保険とNISAで迷ったときの考え方や保険の見直し方、保険のプロ29人が辛口採点した生命保険商品ランキングを、業界の深部…

特集2変局 岐路に立つNHK

NHKが大きな岐路に立たされている。今国会で放送法改正案が可決されれば、ネット視聴も受信料徴収の対象となる。一方で、今後、NHKの受信料収入は人口減やテレビ離れを背景に先細る可能性が高い。職員数1万人を誇る巨大公共放送機関は、「みなさまのN…