記事一覧:大人のための最先端理科269件
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大人のための最先端理科
【生命科学】 DNAだけでは決まらない 遺伝情報のエピゲノム調節
2018年1月20日号日本人の死因で最も多いのはがんだ。部位別の死因では、現在は肺がんが最多だが、1980年代までは胃がんがトップだった。胃がんでの死亡率が近年減少傾向にあるのには、検診の普及や外科手術の手技の向上が影響しているが、ピロリ菌という細菌が胃がんの発症リスクだと分かってきたことも大きい。
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【数学】 偶然に支配される現象を 予測できる「確率論」の世界
2018年1月13日号ハイリスクな研究とは、リスクを解析できるということであり、不確実な研究とは異なる。成功の確率が小さいとしても、リスク要因とその成功確率、見返りを計算できれば、失敗時の損害を予測でき、成功時のインパクトと比較衡量して投資できる。企業の研究開発は主にこのようなものだろう。
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【地球】 地球の“CTスキャン”で分かる ダイナミックなマントル対流
2017年12月30日号小学校の入学祝いに、祖父からシリーズものの図鑑をもらった。さまざまな図鑑の中でも、私の一番のお気に入りは「地球」の図鑑だった。火山が火を噴き、大地を恐竜が闊歩する「白亜紀」や、巨大トンボが飛び回る「石炭紀」の異世界のような光景を今でも鮮明に覚えている。ただ、当時少年だった私には、地球の“輪切り”の絵が、どうしても解せなかった。地球の内部が地殻、マントル、核と色分けしてあったのだが、大部分を占めるマントルがオレンジ色でべったりと塗られていたからだ。
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【脳科学】 においを感じるメカニズム 緩さと複雑さの摩訶不思議
2017年12月23日号風邪をひいて鼻が詰まっているときに口にするコーヒーは、実に味気ない。また、料理が焦げるにおいに気付き、鍋を火にかけたままであることを思い出して慌てることがある。私たちは日々の生活で、においを感じることによってさまざまな恩恵にあずかっている。だが、多くの動物にとって、嗅覚は生きる上でさらに重要だ。食べ物を見つけたり、自分を狙う捕食者を避けたり、子孫を残すパートナー探しに利用したりもしている。
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【宇宙論】 太陽系内の探査機が広げる 地球外生命が存在する可能性
2017年12月16日号この連載第6回の「宇宙に知的生命体はいるか」では、太陽系外に惑星を持つ恒星が数多く発見されつつあることを受け、銀河系には生命に適した環境を持つ惑星がどのくらいあるのかを見積もった。しかし、私たちの太陽系の中にも、地球以外に生命が存在する天体があるかもしれない。
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【生命科学】 iPS細胞より実用化が近い? 再生医療先端走る間葉系幹細胞
2017年12月9日号12月10日はアルフレッド・ノーベルの命日であり、ノーベル賞授賞式の日だ。今年、日本人の受賞者はいなかったが、日系英国人のカズオ・イシグロ氏が文学賞を受賞したことがファンとしてうれしい。記憶の意味やそのはかなさへの問い掛けが通奏低音となっているイシグロ氏の長編小説の中で、筆者が最初に読んだ作品は『わたしを離さないで』だった。
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【数学】 コンピュータを使えば正しい? 数学の「真理」の高いハードル
2017年12月2日号箱の中にボールをなるべくたくさん詰め込むにはどうすればいいか。この一見素朴な問題は、21世紀になってようやく解決された。しかも、伝統的な数学の手法に、コンピュータによる解析を合わせた解法であったために、数学コミュニティに受け入れられるまでに長い時間を要した。
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【地球】 大噴火よりも恐ろしい 富士山山体崩壊の脅威
2017年11月25日号今年6月、日本の活火山が一つ増え、111となった。栃木県・日光男体山が加わったのだ。かつては、その時点で活動している、つまり噴火中の火山のことを活火山と呼んでいたが、2003年に火山噴火予知連絡会が「概ね1万年以内に噴火した火山」のことを活火山と定義し直した。
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【脳科学】 「脳の90%は使われていない」 迷信打ち砕く細胞数の推計法
2017年11月18日号「ヒトの脳は1000億個の神経細胞を持つ」とよく耳にする。神経科学の世界的な教科書にもそう書かれているが、根拠は示されておらず、とうの昔に確立した事実であるかのように扱われている。実を言えば、信頼に足る見積もりがなされたのはほんの8年前であり、その数は1000億ではなかった。
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【宇宙論】 中性子星の合体による 重力波初観測が大興奮を呼んだ理由
2017年11月11日号8月17日、米ワシントン州とルイジアナ州に設置されている2基の重力波望遠鏡LIGOで、またもや重力波が検出された。2週間前に運用が始まったばかりのイタリアの重力波望遠鏡Virgoも同時に重力波を受信した。この3カ所の重力波受信データを組み合わせることで、発信源は図1の天空図の緑の矢印の方向にあることが分かった。
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【生命科学】 時差ボケ特効薬も夢じゃない? 「体内時計」解明にノーベル賞
2017年11月4日号地球の反対側に出掛けることは憂鬱である。今回の原稿は米フロリダ州の学会に行く機上で書いているが、特に日本からの米国出張時の「時差ボケ」は、逆方向の欧州出張時よりもつらい。時差ボケは、私たちの体内に“時計”が備わっていて、現地時間に合わせることが難しいために生じる。睡眠・覚醒のみならず、血圧や体温、ホルモンの分泌などさまざまな生理現象が、昼夜リズムに伴って変動しているのだ(図1)。この「体内時計」のメカニズム解明が、今年のノーベル生理学・医学賞の受賞対象となった。歴史的な背景から説明しよう。
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【数学】 自然界の「形」が美しい理由 シャボン玉が教える普遍法則
2017年10月28日号「自然は無駄なことはしない。もっと少しで済むのに多過ぎるのは無駄である。自然は単純を好み、余計な原因でいたずらに飾り立てるのを好まないからだ」(アイザック・ニュートン『プリンキピア』)。自然界には美しい形が満ち溢れている。天体、雪の結晶、水滴、波紋、ハチの巣など、全く異なる材料、サイズ、形成過程であるにもかかわらず、いずれにおいても対称性が高く調和の取れた幾何学的な模様を生み出す自然の造形技には感嘆する。
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【地球】 人類未踏のマントルへの挑戦 地球の成り立ちを探る掘削計画
2017年10月21日号人類が初めて月面へと降り立ったのは1969年、もう半世紀近く前のことだ。宇宙への挑戦はその後も続き、太陽系の誕生や宇宙の始まりの謎に迫る発見が相次いだ。米国は61年から月を目指す「アポロ計画」をスタートさせた。一方で同時期、正確にはその5年前から、地底を目指す「人類未踏のマントルへの挑戦」を始めていたことはあまり知られていない。
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【脳科学】 森と木のどちらが優先か? 全体と部分の知覚システム
2017年10月14日号「木を見て森を見ず」という。小さなことにとらわれて物事の全体に広く考えが及ばないことを戒める言葉だが、逆に、考慮すべきディテールを無視した大局観というのも危ういものだ。全体とそれを構成する細部の両方に、適切に注意を振り分けなくてはならない。
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【宇宙論】 アインシュタインが指摘した 「ワームホール」の現実味
2017年10月7日号SF小説や映画にしばしば登場するアイデアに、「ワームホール」がある。空間のある場所から、離れた別の場所に直結するトンネルのような抜け道のことである。例えば、1997年公開の映画「コンタクト」では、こと座の星ベガの方向から届いたメッセージを解読し、そこに含まれていた設計図を基に建設された巨大装置で、地球からベガにつながるワームホールを作る。また、2014年に公開された映画「インターステラー」では、土星の近くに現れたワームホールの入り口が、ガルガンチュアと呼ばれるブラックホールとつながっていた。
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【生命科学】 3年連続ノーベル賞なるか? 細胞をくっつける“糊”分子
2017年9月30日号10月2日から今年のノーベル賞の発表が始まる。中でも生理学・医学賞は大村智先生、大隅良典先生と日本人が2年連続で受賞している。もし、二度あることが三度あるならば、有力な候補は誰だろうか。筆者のイチオシは、細胞接着分子「カドヘリン」の発見者である理化学研究所の竹市雅俊先生だ。
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【数学】 データの法則を見出す「曲率」 素朴な発想で開かれた新次元
2017年9月23日号「自然科学」を辞書で引いてみると、「自然現象に対して、観測や実験によって得たデータから帰納的に法則を見出だす学問」とある。数学はこの意味では自然科学ではない。数学は演繹的に論理によって真理を見出す学問だ。自然科学とは逆の方向から人間の知識の境界を押し広げることに貢献している。一方、自然科学との関係においての数学の大切な役割は、科学が法則を見出すために必要な言葉(概念)や手法を提供することにある。
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【地球】 東日本大震災の原因に「新説」 フィリピン海プレートが関与?
2017年9月16日号46億年前に誕生して以来、ダイナミックな変化を続ける地球。中でも日本列島は最も活動的な「変動帯」に位置しており、この狭い領域に、世界中のマグニチュード5以上の地震の約1割が集中する。
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【脳科学】 光を浴びれば近視は防げる!? 網膜ドーパミンの意外な役割
2017年9月9日号遠くの人の顔がよく見えない、行き先表示板に書かれた字やテレビのテロップが見づらいなど、近視(近眼)になると不便なことが多い。さらに、近視は、不便では済まされない深刻な事態に至ることがある。
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【宇宙論】 世界の電波望遠鏡が目を凝らす巨大ブラックホールの影
2017年9月2日号観測技術の発達は、これまで私たちの知らなかった宇宙の姿を明らかにしつつある。今回は、全世界の電波望遠鏡のネットワークで、地球サイズの仮想的な望遠鏡を作り、私たちの天の川銀河の中心にある巨大ブラックホールを観測しようという試みについて話そう。