記事一覧:金融市場 異論百出417

  • FRBに注目する意外な面々市場の期待制御が難しい理由

    金融市場 異論百出
    FRBに注目する意外な面々 市場の期待制御が難しい理由

    2013年7月6日号  

    昨年の今ごろ、中国浙江省の寧波市でステンレスの生産に関わっている人から興味深い話を聞いた。中国におけるステンレス価格は江蘇省無錫市にある商品取引所でのニッケル価格が基準になる。それにステンレス工場別の品質差を考慮したプレミアムが上乗せされる。では、無錫でのニッケル価格はどうやって決まるかというと、英LME(ロンドン金属取引所)に大きな影響を受けている。

  • タッカー副総裁も退任のBOEカーニー新総裁の就任後を占う

    金融市場 異論百出
    タッカー副総裁も退任のBOE カーニー新総裁の就任後を占う

    2013年6月29日号  

    イングランド銀行(BOE)は、ポール・タッカー副総裁が今年秋に退任する予定と6月14日に発表した。1年前、「LIBORスキャンダル」が英国で大騒ぎになるまで、タッカー副総裁はキング総裁の最有力後継候補だったが、同問題でつまずいた。また、金融危機の責任はBOEにもあるとの批判が英国民の間で根強いこと、大胆な金融緩和策にBOEが消極的であることに英政府がいら立っていたことにより、オズボーン財務大臣は、BOE出身者ではなく、カナダ銀行総裁の若いマーク・カーニー氏(今年48歳)を選んだ。

  • 「ECBは混乱招いていない」ドラギが皮肉る異次元緩和策

    金融市場 異論百出
    「ECBは混乱招いていない」 ドラギが皮肉る異次元緩和策

    2013年6月22日号  

    日銀が4月に「異次元緩和策」を導入して以来、ドラギECB総裁はメディアから「日銀やFRBのような大胆な政策を行わないのか?」とプレッシャーをかけられてきた。6月6日の記者会見で彼は次のような反論を見せた。「率直に言って、ECBは市場のボラティリティを高めることはしていない」。日銀とFRBの政策は、金融市場に望ましくない変動をもたらしているではないか、という皮肉である。

  • 意外にも経常収支が大幅改善高失業率でも陽気なスペイン人

    金融市場 異論百出
    意外にも経常収支が大幅改善 高失業率でも陽気なスペイン人

    2013年6月15日号  

    先日スペインに行った。ある都市では筆者を見て「アジア人だ」と認識すると、韓国のラッパー、PSYの「江南スタイル」を踊り始めた。日本と韓国の違いは彼らにはわからず、サービス精神で喜ばせようとしてくれているのでむげにはできない。パブの外で大勢がビールを飲んでいる場所を通り過ぎようとしたときは、十数人が「江南スタイル」を踊り始め、脱出するのが大変だった。陽気なスペイン人だが、彼らの何割かは失業中だっただろう。5月31日にスペイン中央銀行は「失業率は許容できない水準に達している」と危機感を表明した。第1四半期の失業率は27.2%、25歳未満は57.2%だ。

  • QE3終了の“伝え方”に苦戦を強いられるFRB

    金融市場 異論百出
    QE3終了の“伝え方”に 苦戦を強いられるFRB

    2013年6月8日号  

    「日銀は景気回復を支援しようとしており、それは機能している。ECBは景気停滞を支援しようとしており、それは機能している」。米経済学者で元イングランド銀行(BOE)金融政策委員だったポーゼン氏はそう述べた。ECBは日銀やFRBに見習い、大胆な金融緩和を行うべき、との批判である。

  • 学生ローン金利の減免終了間近米大学授業料の高騰事情

    金融市場 異論百出
    学生ローン金利の減免終了間近 米大学授業料の高騰事情

    2013年6月1日号  

    米国で大学授業料が高騰している。大学生の子どもを持つ親と話すと異口同音にその話題になる。消費者物価指数の「大学授業料」の項目を見ると、現在は20年前に比べると3.2倍。インフレを考慮した実質で見ても1.9倍である。ニューヨーク郊外に住む知人の息子が昨年、ある有名大学に入学した。1年間の授業料と寮費は計5.8万ドルだった。高校時代の成績がよかったので、1万ドルの値引きがあったそうだが、それでも約500万円だ。

  • 米西海岸の住宅市場は回復傾向それでもQE3終了は時期尚早

    金融市場 異論百出
    米西海岸の住宅市場は回復傾向 それでもQE3終了は時期尚早

    2013年5月25日号  

    FRBの調べによると、米国で住宅の評価額がモーゲージ設定時より上回っている部分(ホームエクイティ)の全米総額は昨年末で8.2兆ドルだった。2009年末の6.2兆ドルに比べ3割強増加した。ただし、ピーク時の06年の13.5兆ドルに比べればまだ大幅に低い。3月末の住宅価格前年比は過去7年見られなかった大幅上昇を示した。全米1位はアクロン(オハイオ)の+32.7%、2位はサンフランシスコ圏(カリフォルニア)の+32.6%、3位はレノ圏(ネバダ)の+32.1%。ただし、下落の街も依然としてあり、最下位はカンカキー圏(イリノイ)の▲18.8%である(NAR調べ)。

  • 「最も保守的」とみられ始めたドラギECB総裁の深い悩み

    金融市場 異論百出
    「最も保守的」とみられ始めた ドラギECB総裁の深い悩み

    2013年5月18日号  

    「われわれはヘリコプターで飛び回りながら、マネーをばらまくことはしていない。米国のような資本市場がここにはない」ECBのドラギ総裁は、0.25%の利下げを決めた5月2日の理事会後の記者会見でそう述べた。「米国では信用仲介の80%が資本市場を通じて行われている。欧州では金融仲介の80%が銀行システムを通じて行われている」からである。資本市場の価格形成に介入しても、欧州では効果は得にくいとECBは今は考えている。

  • 格差問題とは距離を取っていたFRBが直面する路線変更

    金融市場 異論百出
    格差問題とは距離を取っていた FRBが直面する路線変更

    2013年5月11日号  

    米ワシントンDC周辺の優良な住宅街は、全米でも有数の所得が高い地域である。豪邸が立ち並んでいる地区もある。一方、ホワイトハウスの最寄り駅であるマクファーソン・スクエアという地下鉄駅の入り口には大勢のホームレスの人々がいる。彼らは「ホワイトハウスはこちら」という案内板の下に横たわっている。世界の政治経済を動かす大統領官邸のすぐ近くにホームレスがいるという光景は極めて米国的だ。

  • 米国為替政策報告書に書かれたアベノミクスへの“真っ当な”提言

    金融市場 異論百出
    米国為替政策報告書に書かれた アベノミクスへの“真っ当な”提言

    2013年5月4日号  

    日本の当局による為替市場での円売り介入は、2011年11月初旬を最後に実施されていない。米財務省が強く批判したことが影響している。同年12月に米議会に提出された彼らの為替政策報告書には次のように書かれていた。「日本の単独介入は、為替市場のコンディションが秩序を保っていて、円・ドルの変動率がユーロ・ドルのそれよりも低いときに実行された。3月の地震後のG7による協調介入と異なり、合衆国はそれらを支持しなかった」

  • 日銀が事実上の資産バブル宣言次元が異なる金融緩和策の本質

    金融市場 異論百出
    日銀が事実上の資産バブル宣言 次元が異なる金融緩和策の本質

    2013年4月20日号  

    バブルを起こすと中央銀行が事実上宣言したという点で、日銀が4月4日に決定した金融政策は正に「次元が異なる」ものとなった。フィリップス曲線がフラットな日本においては、オーソドックスに需給ギャップを縮小させてもインフレ率は2年以内に2%には行かないと日銀は認識している。それ故、国債バブル、円安バブル、株式バブル、不動産バブルを発生させて、国民や企業のマインドを変化させるという壮大な実験に日銀は打って出た。

  • リスクテークを促す中央銀行海図なき国債買いオペの行方

    金融市場 異論百出
    リスクテークを促す中央銀行 海図なき国債買いオペの行方

    2013年4月13日号  

    本誌を書店で読者が手にしている頃には、黒田東彦総裁率いる日銀は国債買い入れ拡大を中心とする「量的・質的に大胆な緩和策」を開始しているだろう。合議制ゆえに4月4日の金融政策決定会合で合意に至らない政策があったとしても、今月26日の会合では導入が決定されるだろう。これまでの日銀もかなりの額の長期国債を購入してきた。年間購入額は、政府の新規国債発行額に匹敵する規模だった。日銀がさらに大規模に長期国債を購入すると、市場で国債が不足して、長期金利が一段と低下する可能性がある。そうなると、預金の多くを国債投資に振り向けていた日本の銀行は、深刻な利鞘縮小に直面する。

  • 「水は持ち帰ってください」中国の贅沢品消費・最新事情

    金融市場 異論百出
    「水は持ち帰ってください」 中国の贅沢品消費・最新事情

    2013年4月6日号  

    上海の川の上流で、豚の死骸が1万頭以上捨てられていたのが発見された。先日の上海出張で聞いたが、市民の間では「水道水飲んでる?」と聞く代わりに、「豚スープ飲んでる?」と聞くブラックジョークが流行っている。

  • 話題を呼ぶ米「ミシュキン論文」 白川前総裁も強調した財政従属

    金融市場 異論百出
    話題を呼ぶ米「ミシュキン論文」 白川前総裁も強調した財政従属

    2013年3月30日号  

    「フィスカル・ドミナンス」(財政による支配)と超金融緩和策の関係に関する議論が海外のエコノミストの間で活発になっている。白川方明・前日銀総裁も退任前の講演などで何度も言及していた。3月19日の退任記者会見でも、財政規律と通貨の信認の重要性について白川氏は語っていた。

  • 日本企業が注目する中南米ブラジルとメキシコの意外な差

    金融市場 異論百出
    日本企業が注目する中南米 ブラジルとメキシコの意外な差

    2013年3月23日号  

    中南米の成長力に関心を寄せる日本企業がここ数年急速に増加している。特に経済規模1位のブラジル、2位のメキシコの注目度は高い。両国は1970年代までに高度成長を経験し、80年代に所得水準上昇から生じる競争力低下という「中所得の罠」に陥り、一時マイナス成長になった。しかし、その後は、それぞれの政策で立ち直ってきた。ただし、成長戦略の方向性は180度異なっている。

  • 日銀の緩和姿勢にFRBも同調バブル懸念が表面化する米国

    金融市場 異論百出
    日銀の緩和姿勢にFRBも同調 バブル懸念が表面化する米国

    2013年3月16日号  

    新しい日本銀行総裁に黒田東彦氏、副総裁に岩田規久男氏、中曽宏氏が国会で同意される見通しだ。3月4~5日に行われた所信聴取では、「資産バブルや国債の信用低下など積極緩和がもたらす『副作用』の議論はほとんど出なかった」(「日本経済新聞」3月6日付)。しかし、それと極めて対照的だったのが、2月26~27日に行われたFRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長の議会証言である。多くの議員が、超緩和策の副作用やバブルに言及した。

  • 米国で興味強まる次期日銀総裁2%のインフレ達成には疑念も

    金融市場 異論百出
    米国で興味強まる次期日銀総裁 2%のインフレ達成には疑念も

    2013年3月9日号  

    ワシントン、ニューヨークと出張で回っているところだが、今回は当局者や市場関係者とのアポがとても取りやすかった。「アベノミクス」への関心が高いからである。しかも、米国滞在中に黒田東彦氏が次期日銀総裁に指名されるとの報道が相次いだため、金融政策に関する質問も多数受けた。ただし、日本に対して強い興味を抱いているのは金融関係者であって、一般の人はそうでもない。象徴的なのは2月23日の新聞である。安倍首相訪米の記事は、「ワシントンポスト」は9面、「ニューヨークタイムズ」は7面だった。

  • ハト派傾向の強いFOMCでも増加する緩和策の“出口”発言

    金融市場 異論百出
    ハト派傾向の強いFOMCでも 増加する緩和策の“出口”発言

    2013年3月2日号  

    「中央銀行が直面している最も困難な問題は、クレジット市場の過熱である」。スタインFRB理事は2月7日の講演で、FRBのいわゆるQE(量的緩和策)の影響によって一部の金融市場でバブル的な価格高騰が起きていることを強く懸念する発言を行った。REIT(不動産投資信託)の残高は2010年末の1520億ドルから、12年末は3980億ドルへと急成長している。しかし、REITの価格はFRBの金融引き締めで短期金利が上昇したり、FRBがQEで購入したMBS(住宅ローン担保証券)を市場に売却し始めたら、急落する恐れがある。逆に数年後の出口政策を慎重にやり過ぎると、今度は市場の過熱がさらに激しくなってしまう。

  • 欧米も学んだ「白川ドクトリン」 日銀の付利撤廃観測を検証する

    金融市場 異論百出
    欧米も学んだ「白川ドクトリン」 日銀の付利撤廃観測を検証する

    2013年2月23日号  

    日銀は超過準備に対して0.1%の利息を付与している。白川方明総裁はその金利(付利)を引き下げるつもりはないことを記者会見で再三主張してきた。理由は第一に、短期金利がほとんどゼロ%になると、お金は市場でかえって流れなくなる(利息がほとんど得られないなら、市場で資金を運用する人は激減する)。第二に、このように短期金融市場の機能が停止した状態が長期化すると、将来、金融政策を正常化させたいときに大きなトラブルが起きる恐れがある(金融機関の現場に短期金融市場での資金調達・運用の経験者がいなくなれば、元に戻すのは大変である)。第三に、付利を下げても、銀行が超過準備を貸出に回す可能性は限りなく低い(現代の銀行は自己資本比率など様々な規制を受けており、優良な借り手がいなければ貸出を増加させることはできない)。

  • 中国で忘年会が大量キャンセル習近平が目論むリバランス政策

    金融市場 異論百出
    中国で忘年会が大量キャンセル 習近平が目論むリバランス政策

    2013年2月16日号  

    2月上旬に上海にいた際、多くの日系の企業、金融機関の関係者から、「日本に頑なだった中国政府に雪解けムードが表れてきた」という話を聞いた。山口那津男・公明党代表の訪中が効いた面もある。「環球時報」2月4日付は「日本との戦争は、勝とうが負けようが、破滅につながる」という中国社会科学学院の識者の論文を掲載した。過激な反日報道で知られる同紙ですら、そのような論文を載せる空気に変わったと思った直後、5日に中国の艦船が日本の艦船にレーザー照射する事件が報道された。

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記者の目

  • 副編集長 千本木啓文

    農協から届いた「抗議文」を読んで、しばし感傷に浸る

     JA全中から毎年、抗議文をもらうのですが、今年は雑誌の発売前に届きました。特集の一部を「組合長165人が“辛口”評価 JA上部団体の通信簿」としてダイヤモンド・オンラインで先に配信したからです。
     抗議文は、「19万人の農協役職員の0.2%の意見で記事が構成されており、(中略)偏った先入観を植え付ける意図があった」として、続編の配信中止を求める内容でした。
     組合長ら幹部200人超を含む役職員434人の声には傾聴する価値があるはずです。抗議文を読み、自分は若いと思い込んでいる人が鏡に映った老いた姿を見て、こんなはずはないと怒っているような印象を持ちました。自戒を込めて、鏡のせいにしてはいけないと思いました。

  • 編集長 浅島亮子

    ロングセラー第9弾でも攻め続ける農業特集

     今年も人気企画「儲かる農業」特集の第9弾が刷り上がりました。身内ながら感心するのが、毎年新しいコンテンツを加えて特集構成を刷新していることです。今回の新ネタは農協役職員アンケート。ロングセラー企画の定番を変えるには勇気が必要ですが、果敢に新機軸を打ち出しているのです。
     昨年、千本木デスク率いる農協問題取材チームは、共済の自爆営業などJAグループの不正を暴いたことが評価され、報道実務家フォーラム「調査報道大賞」優秀賞を受賞しました。訴訟に屈することなく、問題の本質を突く取材活動を貫いた結果と受け止めています。今回の特集でも粘り強い取材は健在。取材チームの熱量を存分に感じていただければ幸いです。

最新号の案内2024年5月11日号

表紙

特集儲かる農業2024

いよいよ儲かる農業が実現するフェーズに入った。「台頭する豪農」と「欧米のテクノロジー」と「陰の仕掛け人」が”令和の農業維新”というムーブメントを起こしている。他方、農業を牛耳ってきた旧来勢力である農協と農水省は、存在意義を問われる”緊急事態…

特集2家計・住宅ローン・株が激変! 金利ある世界

日本銀行が17年ぶりの利上げで金融政策の正常化に踏み出した。”金利ゼロ”に慣れ切った家計や企業経営、財政はどうなるのか。日本は「成長期待が持てない経済」から抜け出せるのか。それとも低金利は続き、物や資本が余った経済への道を歩むのか。「金利あ…