記事一覧:Book Reviews 知を磨く読書292件
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Book Reviews 知を磨く読書
子どもや孫の世代への重荷
2018年1月20日号新保祐司著『内村鑑三』を読むと、内村鑑三はキリスト教徒になることによって時間概念が変化したことがよく分かる。〈過去は単なる過去ではない、現在完了形である。或る決定的なことが、或る出来事が「すでに」起ったのである。鑑三にとって、時間とは過去・現在・未来ではない、現在完了・現在・前未来なのである。
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日本のレアルポリティーク
2018年1月13日号山内昌之著『歴史家の展望鏡』は、豊かな学識と現実感覚を併せ持った人にしか書けない優れた作品である。〈ロシアの持ち味は、特定の国に屈服を強いがちなアングロサクソン流のハードな交渉による解決ではなく、自国のグローバルな影響力と各国の自負心を満足させる妥協や調停を図る巧みさにある。
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巨大さを追求する近代的思考
2017年12月30日号齋藤孝著『齋藤孝の一気読み! 日本近現代史』を読み、戦争を阻止する知恵を歴史から学ばなくてはならないと痛感する。〈では、何が戦争の抑止力になるのか。/現実的な話をすれば、一つには国際協調や集団安全保障体制の維持が欠かせません。
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アナキズムという思考実験
2017年12月23日号柄谷行人著『坂口安吾論』を読むと、傑出した知識人である柄谷氏の独自の思考回路が見える。〈安吾はガンディの無抵抗主義をもっと徹底させている。ガンディは、影響を受けたトルストイと同様に、共同体(社稷)に依拠するアナキストであった。
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宗教と国体論の危険な関係
2017年12月16日号水野操著『AI時代を生き残る仕事の新ルール』は、AI(人工知能)との付き合い方を知るためのよい手引きだ。〈本書では、AI時代に本当に私たちの仕事は失われていくのか、あるいはそれは大げさな話なのかを考察してきた。
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伊藤博文の天皇観と合理主義
2017年12月9日号天皇の生前退位の意義を理解する上で、明治期に伊藤博文が日本国家の基礎をどのように構築したかについて、きちんと理解することが前提条件となる。飛鳥井雅道著『明治大帝』における〈依然として流動的な、基礎が確立していない日本近代社会の「機軸」として、宗教でも法でもない「天皇」の存在を流しこんでゼラチンのような役割をはたさせること、ここに伊藤の最大の課題がかけられていた。
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教育費の財源問題で政局化か
2017年12月2日号鯨岡仁著『日銀と政治』は、政治と日本銀行との相互関係を詳細に描いた傑作だ。大きな流れでは、日銀の専門家集団よりも政治の力が強くなっている。今後の政局にも影響を与え得るのは、子どもの教育のための財源の問題だ。
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ホワイトカラーの労働者化
2017年11月25日号ライアン・エイヴェント著『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか』は、優れた現状分析兼近未来予測の書だ。〈世界中の低スキル労働者を高学歴化するのは、おそらく低スキル労働者にとっては良いことだろう。
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指導者たちの内在的論理を知る
2017年11月18日号木村誠著『大学大倒産時代』は、国公立、私立、都会、地方などさまざまな大学の将来について詳細に論じた良書だ。〈現在大学教育は、総じてPBL(課題解決型授業)や反転授業(全員予習を前提に発表や討論する)などアクティブ・ラーニングを重視している。
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世界規模のポストモダン現象
2017年11月11日号亀山郁夫、沼野充義著『ロシア革命100年の謎』において亀山氏は、〈主として今の公式文化におけるポストモダンはイデオロギー的なものに規定されているけれども、非公式文化のほうはむしろ芸術手法的な側面で、それまでのモダン的なものを追求するというところから、過去にも意識が向かった。
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前科者に冷たい日本社会
2017年11月4日号本田晃一著『はしゃぎながら夢をかなえる世界一簡単な法』は、カネとの付き合い方の秘訣を記した優れた自己啓発書だ。本田氏は、〈お金を手に入れるのにものすごくストレスたっぷりだったり、人をだましたり、自分を苦しめたりしていると、そのお金はマイナスのエネルギーだらけでまっ黒になります。
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着目すべき北極海の重要性
2017年10月28日号ジェイムズ・スタヴリディス著『海の地政学』は、米海軍大将(退役)で前NATO(北大西洋条約機構)欧州連合軍最高司令官の著者による優れた地政学書だ。スタヴリディス氏は北極海の重要性を強調する。〈二〇四〇年には一年中通行が可能になり、さらに一〇年後には北極を覆う氷はなくなるだろう。
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刑務所暮らし経験者の本音
2017年10月21日号橋爪大三郎著『世界は四大文明でできている』は、組織でリーダーとなる人が知らなくてはならない文明観について、学術的水準を落とさずに注意しつつ、分かりやすく書いている。〈ビジネスも、政治や軍事や外交も、学術交流も、人間のやることです。
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地図から浮かぶ歴史のリアル
2017年10月14日号地図には多くの情報が埋め込まれている。外川淳著『地図から読み解く戦国合戦』は、地図を丹念に読み込むことによって、戦国合戦をリアルに再現した名著だ。関ヶ原の戦いで東軍(徳川方)が勝利する上で重要な役割を果たしたのが西軍(豊臣方)から寝返った小早川秀秋だ。外川氏は、秀秋の参謀だった稲葉正成の決断と行動について詳細に分析する。
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ケータイによる日本語の乱れ
2017年10月7日号サイモン・ホロビン著『スペリングの英語史』は、携帯メールの普及によるスペリングの変化についてこんな見方を示す。〈2006年のスコットランドのスタンダード・グレード(訳注:かつて行なわれていた中等教育課程)試験の試験官は、いくつかの問題が携帯メール使用に起因しうることを報告した。
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ルター宗教改革の根幹
2017年9月30日号おおたとしまさ著『名門校「武蔵」で教える東大合格より大事なこと』は、武蔵中高の教育を肯定的に書いた広報的性格が強い本だ。〈武蔵では中三で第二外国語が必修だ。ドイツ語、フランス語、中国語、韓国朝鮮語から選択する。これまた大学受験にはおよそ関係がない。
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社会に活力をもたらす対策
2017年9月23日号湯浅誠著『「なんとかする」子どもの貧困』は、観念論を排して現実的に思考し、実効性のある提案をしているところに特徴がある。湯浅氏は、格差を全面的に否定しているのではない。〈個人レベルでは、ある程度の格差は努力の源泉になる。「自分だって、やってやる」と。
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日本のフリーメイソン陰謀論
2017年9月16日号橋爪大三郎著『フリーメイソン』は、この秘密組織の歴史と現状を客観的にまとめている良書だ。〈冷戦が終わったあと、イスラム過激派が、陰謀の主役にとって代わった。それでもフリーメイソンの陰謀論は、やはり伏流している。/フリーメイソン陰謀論、ユダヤ陰謀論のたぐいの書籍が、堂々と売られているのは、日本ぐらいかもしれない。
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ハプスブルク帝国史の「もし」
2017年9月9日号岩﨑周一著『ハプスブルク帝国』を読むと、この帝国の面白さに引き付けられる。例えば1948年の革命だ。〈プラハでは知識人と小市民層が革命の担い手となり、チェコ諸邦の共通議会の設立、チェコ語とドイツ語の同権化などを認めさせた。その指導者となったのは、「チェコ民族を死から蘇らせる」ことを目指した歴史研究から出発し、徐々に政治への関与を深めていったフランティシェク・パラツキーである。
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知識を本当に身に付けるには
2017年9月2日号キャシー・ハーシュ=パセック、ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ著『科学が教える、子育て成功への道』は、子どもの教育について関心を持つ人にとっての必読書だ。〈デジタル技術は一人ひとりに合うような学び方、いわば学習のカスタマイズという恩恵をもたらした。