日本株がゆがんだ元凶は
長期視点の国内投資家の不在
そもそも昨年、世界最大の相場上昇を牽引したのも、年末の急騰を演出したのも、15兆円を買い越したヘッジファンドを軸にする外国人投資家たちだった。年明け以降、日本株が勢いを失ったのも、彼らが2兆円を売り越したからに他ならない。
実はホワイトデーの悪夢には、他にも〝共犯者〟がいた。
インデックス・アーブやスタティスカル・アーブと呼ばれる裁定業者だ。複雑なプログラムを駆使して短期でサヤを取るのが裁定業者の手口だが、いずれも運用しているのは大半が外国人だという。
裏を返せば、今の日本株市場がゆがんでしまった理由は「国内投資家の不在」の一言に尽きる。
国内の機関投資家は巨額の資金を持ちながら、バブル崩壊後に大損したトラウマから抜け出せず、動こうとしない。売買シェアで2割を握る個人投資家もいるにはいるが、短期売買に血眼になっており、まるでミニヘッジファンドのような動きばかりが目立つ。
「国内に、企業業績や経済のファンダメンタルズに着目し、長期的視点で投資する投資家が決定的に不足している」(広木隆・マネックス証券チーフ・ストラテジスト)。そのため、外国人投資家が主導する一方通行の相場になってしまうのだ。
結果として、日本株市場は世界でトップ3に入る規模の市場であるにもかかわらず、新興国よりもひどい株価の乱高下が横行しているわけだ。
男の同僚は、「日本市場を先進国マーケットと考えているのは、日本人くらいですよ」と鼻で笑った。
『週刊ダイヤモンド』4月12日号の特集は「暴走!日本株 ボロ儲けしたのは誰だ」です。
日本株は昨年、世界最大の上昇を成し遂げました。しかし、どうも様子がおかしい。株価の振幅は新興国よりもはるかに激しく、世界最悪の乱高下を記録する日も珍しくありません。
株価は国内要因には反応せずに、海外要因にばかり振り回されています。しかも、その裏でボロもうけしているのは外国人投資家ばかりです。今、日本の株式市場に何か起こっているのか。暴走して、いびつな変動を繰り返す日本株の深層に迫りました。
また、まばたきを1回する間に1万回もの発注を出すことができる超高速取引「HFT」の実態や、ネット上で「炎上」する企業をいち早く速報するサービスなど、最先端のアルゴリズムを駆使した取引を掘り下げています。
外国人投資家とテクノロジーの支配力が急速に強まる市場にあって、資金力に劣る個人投資家はますます不利な運用を迫られています。では、どんな投資をすべきなのか、彼らが生き残る道も模索しました。
(『週刊ダイヤモンド』副編集長 山口 圭介)