家は住んでいるうちに老朽化し、ライフスタイルや時代のニーズに合わなくなってくる。空き家にしておけば、劣化はさらに速く進む。きちんと手入れしていかなければ、“あばら家”になるのは確実だ。住みつぶす発想から、資産価値のある“カネになる家”に変え、もうける発想へ。資産価値を向上させるリフォームと中古物件選びの秘訣に迫る。 

 田村仁さん(仮名・55歳)は、長年勤めた会社を早期退職し、妻と2人で田舎暮らしを始める決意をした。評判のいい大工に建ててもらった都内にある築25年の自宅は頑丈で、「内装をリフォームすれば中古住宅としていい値段がつくはず」と不動産業者を呼んだ。 ところが建物検査の結果、とんでもない事態が発覚した。屋根裏にシロアリがすみ着き、構造上重要な柱がすべて劣化していたのだ。急遽、屋根や柱の補修をしたところ、650万円もかかり、田舎暮らしは棚上げになってしまった。

 田村さんの例は決して特殊なケースではない。自宅のメンテナンスを怠ったために、築20年以上たって想定外の修繕費用に悩まされる人は多い。

 中古の戸建てやマンションの価値を維持していくには、定期的な住宅診断やリフォームが不可欠だ。

 もっとも、どこまでリフォームすればいいかは難しい。

 築30年のマンションを売りに出したある高齢者は、不動産業者から、「これじゃあ、とてもじゃないが売れませんよ」と高度成長期の古い間取りを指摘され、100万円近くをかけリフォームした。

 しかし、半年たっても売れる気配がなく、中古物件を買い取りリフォームして売却する、いわゆるリノベーション業者に物件の買い取りを依頼したところ、「ここから再度、リフォームすれば高くなり過ぎる」と断られた。安易にリフォームに踏み切ってしまったことを後悔している。

1981年以前の戸建ては
耐震性能に懸念

 持ち家の資産価値を失わない適切な維持・管理を行うためには、何に注意すればいいのだろうか。

 一般的な木造住宅の場合、まずは漏水に気をつけたい。屋根やベランダからの雨漏りは柱を劣化させるだけでなく、湿気が大好きなシロアリが繁殖する原因になる。

 配水管からの水漏れも要注意だ。築20年以上たつと、高い確率で起こる。漏水は、実際に屋根裏や床下を見てみないとわからない。そこで大切なのが家の定期点検だ。人間の健康診断と一緒で、早期に不具合が見つかればダメージは少なく、かかる費用も最小限で済む。