では日本の富裕層は何をしているかというと、実は〝原点回帰〟を図っているとのこと。「リーマンショック前まで、富裕層は外資系プライベートバンカー(PB)などから複雑なスキームの仕組み債を買いまくった。仕組みは理解できていなかったが、低リスクで高リターンが獲得できるからと。実際はマイルドな口調に乗せられてハイレバレッジでハイリスクの商品を買っていただけで、結果、みんなが大損した」と元外資系PBは自戒を込めて語る。その反省から、理解できないものには投資しない。その答えが不動産だったというわけだ。

 また、詳細は本誌で語るとして、国税庁による富裕層包囲網も、富裕層に海外での投資、運用をちゅうちょさせ、国内へと軸足を移させている。さらに言えば、アベノミクスによる株高があれば、国内回帰は当然の流れでもある。

「日本は中短期的には世界を救うため、
投資妙味は大きい」と香港の富裕層が断言

 欧米の超富豪一族のマネーが日本株へと流れ、アジアの資産家のマネーが東京の不動産市場へと押し寄せています。さらに日本の富裕層も国内重視の姿勢を鮮明にしつつあります。『週刊ダイヤモンド』1月18日号では、日本に群がるこうした世界の富裕層マネーが、今、何を買っているか、徹底取材しました。

 国内でうごめく富裕層マネーは世界の緩和マネーと相まって、外資系不動産ファンドや海外大手ヘッジファンドを国内市場に呼び込んできています。その先には何が待っているのでしょうか。

 冒頭に登場した彼らと同じように日本株や不動産に興味を持つ超富裕層で、ファンドマネジャーのロナルド・チャン氏に、なぜ日本市場に投資するのか聞いてみました。

 「今後、米国は量的緩和の縮小に入って魅力的な案件が以前と比べて減ってしまう。欧州は引き続き厳しい環境が続く。となると、今後、日本が世界経済を引っ張っていくしかない。長期的には高齢化、人口減少といった問題もあるが、中短期的には世界を救う。そういう意味で、日本は投資妙味が大きいと判断した」

 彼の読みは当たるのでしょうか、それとも……。本特集では、世界の富裕層マネーの裏側に迫るとともに、IPOバブルの流れに乗って、億万長者が続出している新興市場を解剖し、さらには、お金持ちだけが知っている究極の節税・投資術を解明しており、「富裕層」というキーワードを軸にして、さまざまな形でマネーの流れを切り取りました。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 山口圭介)