エヌビディア時価総額は一時500兆円超え
半導体のけん引役は自動車ではなかった!
生成AIの普及とともに時代の寵児となったエヌビディア。6月には時価総額が3兆3400億ドル(約527兆円。当時)となり、米マイクロソフトや米アップルを抜いて世界首位に躍り出た。
“AI相場”の陰りから現下の株価は調整局面にあるが、快進撃は止まらない。AIの計算に使う高性能半導体市場で、エヌビディア製GPU(画像処理半導体)は、米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)と米インテルといった半導体の競合を寄せ付けず、独占状態だ。
2022年秋に「ChatGPT」が登場したのをきっかけに、米ビッグテック企業は、生成AIの開発競争を激化させ、エヌビディアのGPUを奪い合っている。
エヌビディアの驚異的な売上高をけん引するのは、データセンター向け事業だ。ビッグテック4社は株価が下がってもデータセンターへの投資を減らしているわけではない。むしろ24年後半も投資を上積みしており、巨額資金がエヌビディアに流れ込む見通しだ。
エヌビディアのGPUは17年頃から自動運転向けの半導体として期待を集め、トヨタ自動車など大手自動車メーカーが次々とエヌビディアと提携した。
だが足元では、エヌビディアの自動車向け事業の売上高は11億ドルと伸び悩む。米テスラもGPUの大量調達に乗り出しているが、その用途は自動運転向けではなく、自社のデータセンター向けだ。
産業構造を激変させる「生成AI革命」
トヨタはGPUの巨額投資に乗り出すか
ChatGPTとともにはじまった生成AIの爆発的拡大で好機を掴んだ米エヌビディアは、半導体業界だけでなく、米ビッグテックを含めたAI業界全体でも“1人勝ち”の情勢だ。
だが、この「生成AI革命」は一過性のブームで終わるのではなく、世界の産業構造を激変させるほどのインパクトを持つ。その衝撃は、インターネットやスマートフォンが誕生して以来のものと言っても過言ではないだろう。
GPUの需給逼迫を受けて「エヌビディア経済圏」は急成長を遂げている。そこでは、GPUの顧客であるビッグテックは投資を急ぎ、GPUのサプライヤーである台湾積体電路製造(TSMC)や韓国SKハイニックスが増産体制を敷く。すでに世界のテック企業にとって、エヌビディア経済圏を攻略できるかどうかが生命線になってきた。
翻って、自動車世界首位のトヨタはどうか。トヨタが提唱する自動車会社からモビリティカンパニーへの変革は、言い換えればソフトウエア改革である。トヨタはGPUを使って自動運転システムの開発を続けているが、SDV(ソフトウエアが車の価値を決める車)の実現に向けてGPUの巨額投資に乗り出す動きは見えてこない。
トヨタグループの認証不正問題が尾を引き、企業統治のあり方にも疑問符がついている。
果たして、トヨタが引っ張る日本企業は、生成AI革命の荒波を乗り越えられるのだろうか。
半導体 の覇権争いと日本企業
エヌビディアVSトヨタの頂上決戦で解剖
『週刊ダイヤモンド』8月24日号の第1特集は「半導体 エヌビディアVSトヨタ 頂上決戦」です。
「生成AIの普及により半導体大手のエヌビディアが“1人勝ち」
今年に入ってからメディアを賑わすようになったこの言葉は、産業史上、どのような意味を持つことになるのでしょうか。
ChatGPTのユーザーとして生成AIを使いこなすだけではなく、生成AI産業における覇権争いの構造を知らなければ、深く理解するのは難しいかもしれません。
特集では、エヌビディアの半導体を中心に、米ビッグテック企業が争奪戦を繰り広げ、台湾TSMCなどサプライチェーンが増産対応に追われる「エヌビディア経済圏」の構造を大解剖します。エヌビディアの半導体に群がる世界中のプレーヤーの覇権争いの深層構造を明かしました。
さらに、エヌビディアが独走する生成AI革命にキャッチアップするべく、日本政府と日本企業が動き始めています。トヨタもソフトウエア変革を完遂するためにはGPUの調達は欠かせません。また、生成AIがもたらす産業構造の変化への対応も迫られます。
米ビッグテックを翻弄する半導体大手のエヌビディア、自動車産業世界一のトヨタ、生成AI革命に立ち向かう日本企業――。膨張するエヌビディア経済圏の最深部の動向に迫りました。
また本号では、緊急特集『株・為替乱高下 日銀利上げパニック』と第2特集『伊藤忠商事 三菱・三井超えの試練』という二つの巨弾特集を組みました。世界経済の動乱期に、日本企業の勝ち筋はどこにあるのか。ダイヤモンド編集部が総力を挙げて、激動期を迎えた産業界の最前線を追いました。