ホークス・小久保監督もはまった
新マネジメント法「識学」って何?
「社会でも野球でも同じことなんですよ。なる早(なるべく早く)という抽象的な指示ではダメです。10キロを60分以内に走る、と完全結果で伝えないと、不完全結果が起こる」
2024年シーズンからプロ野球、福岡ソフトバンクホークスの監督に就任した小久保裕紀氏。ホークス二軍監督を務め、チームをファーム日本一に導いた23年に出版された『結果を出す二軍の教え』(KADOKAWA)の中で、小久保氏は、ファームでの指導法について、そう語る。
この聞き慣れない「完全結果」「不完全結果」という言葉は、小久保監督の造語ではない。いま、最も会社を成長させる独自のマネジメント論として注目の「識学」で使われる用語だ。
識学では、結果に対する評価が人によって分かれてしまうことを「不完全結果」と呼び、逆に誰が評価しても同じ結果になることを「完全結果」と呼ぶ。具体的な指示によって、「できた」「できなかった」を明確化し、組織の無駄を減らすことができるというわけだ。
同書の中で、小久保監督はこのほかにも「しくみづくり」「ルールの明文化」といった、識学のキーワードを交えながら指導法を熱弁。識学の理論に絶大な信頼を寄せているのだ。
この識学のメソッドを駆使して企業マネジメントコンサルティングを行うのが、15年に設立され、わずか3年11カ月後にマザーズ上場を果たした株式会社識学である。
設立9年に満たない若い会社だが、識学の導入企業は、有名企業からスタートアップまで4000社以上。その支持者は企業を超えて、医療・介護業界や小久保監督のようなスポーツ指導者の間でも広がっている。
識学がうたう導入の効果は、人的・組織的ロスのカットや業績向上、離職率の低減に管理職の育成と幅広い。だが、識学とはそもそもどんなマネジメント法なのか?
識学の中身を簡単にいえば、人間の「意識構造」に着目し、組織内に生じる数々の「誤解」と「錯覚」を最小化することで、経営目標を達成するための組織改革をするメソッドだ。
「経営者がうすうすと感じていることをうまく言語化している。識学の内容を知った、ほとんどの経営者は『確かにそうだよね』と、膝を打つだろう」
そう指摘するのは、スタートアップ転職を手掛けるキープレイヤーズの代表で、エンジェル投資家としても名高い高野秀敏氏だ。高野氏自身、識学に出資しており、顧問を務めていたこともある。
「例えば、結果主義の必要性はほぼ全ての経営者が思っているが、それをそのまま現場に落とすと、批判が生じたり社員とのあつれきが生じたりする。その際に、識学というメソッドが確立していることで、経営者としては実行しやすい環境になる」(高野氏)
また、近年のはやりの組織論に疑問を呈し、従来型組織や業務マニュアルを再評価しているのも識学の特徴だという。
「昨今は『フラット型組織』といった概念が広まっているが、その良しあしは別として、マネジメントに苦労している人が増えているのも事実。この点、識学は、改めて『ピラミッド型組織』の必要性を訴え、それを軸とした管理手法の実践で効果を上げている」と高野氏。
本特集では、この識学のエッセンスをミリオンセラー3部作のエッセンスと共に、書籍にはない図解と実例を併せて紹介。悩める全てビジネスマン必携だ。
3部作の著者・安藤広大氏が
次回作の中身も初公開
『週刊ダイヤモンド』2月17日号の第1特集は、シリーズ122万部突破(2024年1月現在)の新ビジネス書3部作のエッセンスを凝縮した「識学大全」です。今、話題の独自マネジメント法「識学」を、『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』(ダイヤモンド社)の3部作のエッセンスと、書籍未掲載の図解や導入企業の具体例を交えてまとめて伝授します。さらに、著者の安藤広大・識学代表取締役社長が「3部作で語り尽くせなかったこと」を特別インタビューで明らかにします。