富裕層マインドの根底には
「投資的な思考」が根付いている
「富裕層には、価値が下がりそうなものは買わない、という発想がベースにある」。ライフプランのFP相談サービス「マネーセージ」の佐藤健太執行役員はそう話す。
同氏は仕事柄、いわゆる“お金持ち”の経営者などと接する機会を多く持つ中、資産を着実に積み上げる富裕層の間に、冒頭のような共通点を見いだしているという。
言い換えれば、中古品として売りに出しても、購入時から価格が維持されやすかったり、むしろ値段が上がったりしそうなものを買おうとする発想が強い。
物価高が続く中でも給与がさほど上がらず、一国の首相が「増税メガネ」と形容されるほど税負担へ不安が広がる日本では、「安いほど善」という価値観に縛られるのも無理はないかもしれない。だが、「安かろう悪かろう」に甘んじてしまっては、富裕層マインドには程遠いといえる。
購入額が高価な不動産などでは、一般人も資産価値を意識するだろうが、富裕層はそうした考え方が、とにかく徹底しているのだ。
一方で佐藤氏は、一般の相談客から「資産を殖やそうにも、そのための“種(原資)”に乏しい」との悩みを聞くことも多いという。
「そうはいっても、多くの人が車や腕時計を買って持っているはず」と同氏。いわく、富裕層にはこのような身近な買い物一つとっても、その資産性について吟味する習慣が根付いているのだ。
だから使い捨ての日用品はともかく、さまざまなものの購入に際して、価値が維持/上がる可能性があるか見定めることが、〝種〟を築く一歩ではないかと指南する。要は、購入の意思決定に「投資の思考法」を交える、ともいえよう。
本特集では、普段からそんな考えを突き詰める富裕層が、実際にどんな資産運用に取り組むのか、究明を試みた。すると、運用先や手法は多岐に及び、各地を駆け巡る富裕層マネーの動乱が浮かび上がってきた。
少額であっても
富裕層をまねできる!
「富裕層の運用術」などと聞けば、もしかすると一般のビジネスパーソンとは無縁の世界で、多額のお金がないとできないのでは?と、不安に思うかもしれない。
しかし、安心してほしい。最近では、投資サービスが広がりを見せ、これまで富裕層でないと手掛けられなかった運用先が、ぐっと身近になっている場合も数多い。しかも、そのほとんどは、比較的少額でもまねできるものだ。
例えば、楽天証券では今夏、従来の債券の販売サービスを一新した「債券マルシェ」を立ち上げた。下図の通り、米国の金利が歴史的水準に上昇する中、米国債や社債の投資ニーズが高まっているが、従来は機関投資家や富裕層でないと手が出しづらかった債券に、一般の個人投資家もアクセスしやすくなった。
一般的に債券の利回りは、債券価格と逆相関の関係にある。価格が下がっても、利息と償還金額が確定しているので、その分投資額に対するトータルのリターンを表す利回りは上昇するからだ。
つまり、現状は激しい「債券安」の局面でもある。これから投資する投資家にとっては、「価格が下がってお買い得」という捉え方もできるのだ。
日本株以外も続々と新サービス!
富裕層仕込みの運用術を開陳
『週刊ダイヤモンド』11月11日号の第一特集は「富裕層が明かす マル秘狙い目&穴場 運用術」です。日本株は今春に急騰劇を演じて以降、伸び悩む展開。やや厳しい局面を迎えていますが、最近は投資サービスが広がりを見せ、日本株以外にも選択肢が増えています。また、富裕層たちは、一般の人が投資と考えずに買うような物からも値上がりで利益を得るなど、抜け目ありません。その考え方や手法から、学べることも多いのです。
そこで本特集のPART1では、金利が上昇局面を迎える中、投資妙味が高まる米国債や社債、節税スキームに至るまで、資産を「守る」運用術を指南。あなたを狙い撃つ「SNS投資詐欺」や、安定利回りが見込める「高配当株10選」と併せて解説しました。
PART2では、日本で新たに産声を上げた海外ユニコーン株投資やオプション取引から、高級車や高級腕時計、ポケモンカードなどの変わり種まで、富裕層仕込みの「攻め」のマル秘運用術を直伝。それぞれ、リターンをたたきだすための勘所をひもときました。