日本株への注目度が急浮上も
〝人気株〟の見極め方に要注意
「ジャパンには大いに期待できる」──。JPモルガン証券の西原里江チーフ株式ストラテジストは、最近会ったある海外ヘッジファンドがこのような見方を示し、日本株への関心を高めていたと明かす。
実際、世界で存在感を失っていた日本の株式市場に、ここにきて再び外国人投資家の目が向きつつある。大きな後押しとなったのが、あの伝説的投資家のウォーレン・バフェット氏が4月に来日し、日本株への追加投資を示唆するとともに、投資先の総合商社や日本市場への期待感を示したことだ。
さらに、東京証券取引所による「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」国内上場企業への改善要請も、グローバルな投資家の関心を集めている。
PBR1倍割れは「解散価値割れ」とも呼ばれ、ざっくり言えば、会社が解散した場合にもらえる金額より株価が低く評価されていることに他ならない。日本は欧米よりこうした企業が多く、資本効率改善や企業価値向上に向け、東証がいつになく本気の姿勢で上場企業改革に取り組んでいるのだ。
一方、世界の株式市場の本丸たる米国では、3月以降に米国内銀行の経営破綻が相次いで明らかとなり、金融不安が台頭。インフレ対策としてFRB(米連邦準備制度理事会)が続々と利上げを敢行してきた中、景気後退を巡る懸念がくすぶり続けている。
しかも、米国の主要株価指数はコロナ禍の中でも史上最高値を更新しながら上昇基調を続けてきただけに、なお割高感が残るとの声は根強い。日本株は世界の株式市場の中でも割安に放置されてきた存在として、にわかに脚光を浴びているのだ。
日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)はこの1年ほどもみ合いを続けてきたが、5月初旬には年初来高値を更新。海外マネーの買いが援軍となり、上放れへの芽も生じ始めた。
そんな期待の日本株には、さまざまな経済界の注目テーマに関連した事業を手掛ける企業が上場し、高い人気を誇る銘柄も数多い。
だが、安易に飛び付けば痛い目に遭いかねない。息の長い優良な投資テーマと、一時のブームにすぎない“バズワード”が混在しているからだ。
相場経験の長いみずほ証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジストは、株式投資において「その時々のはやり物に飛び付くのは避けた方がよいだろう」と指南する。
例えば、それに該当しそうなテーマの一つが「宇宙」だ。4月上旬には月面着陸を目指す宇宙開発スタートアップのispaceが上場したが、民間初を目指して同下旬に挑んだ月面着陸船の月への着陸が失敗したこともあり、上場後の株価は芳しくない。米国の宇宙ベンチャーなどを含め、国内外で宇宙関連の多くの銘柄で株価が苦戦の様相を呈しているのだ。
それぞれ夢のある意義深い事業を手掛けているのは間違いないが、投資家として手金を投じ、相応のリターンを得たければ、長期的に成長が見込めそうな勝ち馬に乗る方が賢明なのは言うまでもない。
時流に乗った〝人気株〟でも
その中で 二極化は必至
話題の「ChatGPT」で赤丸上昇中のAIについても、関連株だからとすぐさま投資を考えるのは危うい。時流のテーマに乗った“人気株”の中でも、各社の実力によって明暗が生じるのは必至であるからだ。
何しろ、一時の〝期待感〟だけで株高をつなぎ留めるには限界があり、収益力の多寡など銘柄ごとの真贋を見極める必要があるのだ。
そこで本特集では、市場でこのところ特に注目度の高い15テーマに焦点を当て、延べ330銘柄を大分析した。
注目テーマをメッタ斬り!
“人気株”の勝者・敗者
『週刊ダイヤモンド』5月20日号の第一特集は「人気株 勝者 敗者 15テーマ330銘柄 メッタ斬り!」です。株式市場には、経済界の注目トピックに関連する企業が上場し、高い人気を誇る銘柄も数多くあります。ただし、安易に飛びつけば痛い目に遭いかねません。関連株の中でも、各社の実力によって明暗が生じるのは必至です。
そこでパート1では、日本株への注目度が急浮上する中、優良テーマ株の見極め方を伝授。AIブームに踊らされ、ChatGPTの関連株に飛び付く危うさを投資のプロ3人が指南します。
パート2では、注目度の高い旬のテーマをピックアップし、関連銘柄を大分析。各社の実力に忖度なしで斬り込み、勝者・敗者を浮き彫りにしました。
さらに、パート3では、定量的なデータを基に難局を勝ち抜ける「強い株」を大開陳。真の“人気株”を見定めるための羅針盤として活用していただければ幸いです。