『週刊ダイヤモンド』6月25日号の第一特集は「決算書100本ノック!2022年夏版」です。シリーズ累計134万部を突破する人気企画がこの夏も帰ってきました!中でも人気なのが、ダイヤモンド編集部の業界担当記者が決算書を通してニュースを解説する事例集です。財務もニュースも分かる「決算書バイブル」をお届けします。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

トヨタ決算“三冠”達成でも2割減益の不可解
「決算書」で謎を解き明かそう

 まさしく、トヨタ自動車は絶頂期にある。2022年3月期決算では、売上高31兆3795億円、営業利益2兆9956億円、純利益2兆850億円とトリプルで過去最高を更新した。

 今期23年3月期の見通しでも、全上場企業を対象とする業績ランキング(決算期変更会社、期末で債務超過の会社、予想期が変速決算の会社は除く)で売上高、営業利益、純利益の“三冠”を達成。コロナショック後の増産効果に加え、円安による為替差益が利益を押し上げることになりそうだ。

 だが、そんな最強トヨタにもアキレス腱がある。

 今期の営業利益は水準こそ日本一だが、「前期比2割」の減益となる見込みなのだ。

 最強トヨタの業績の足を引っ張る理由はどこにあるのか。その理由は、決算書を見れば一目瞭然だ。

 ちなみに、決算書と一口にいうが、その中身はいろいろだ。決算短信や有価証券報告書、広義では企業の決算会見での説明会資料も含まれる。中でも重要なのは「財務3表」だ。損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書(C F)の3点セットである

 それでは、トヨタ大減益の理由を決算書で明かしていこう。

トヨタ最大の減益要因は資材高騰1兆4500億円
お家芸の原価低減ではカバーできない

 トヨタ減益の理由は、決算説明会資料を見ると一発で分かる。資料後半部分に「連結営業利益増減要因」のページがある。

 トヨタの営業利益は、22年3月期の2兆9956億円から23年3月期予想の2兆4000億円へ激減する見通しだ。説明会資料には、その約6000億円の「ギャップの理由」が詳しく記されている。

 もっとも足を引っ張る要因は「資材高騰」で、1兆4500億円もの減益要因となる見通しだ。世界的なインフレがトヨタを直撃しており、お家芸である年間3000億円の原価低減効果をもってしてもその減益額をカバーすることは難しい。

 また、トヨタがインフレの影響をまともに受ける原因はその業容の広さにもあるが、それだけでは説明できない。

 これまでトヨタは、自由貿易を前提に部材のサプライチェーンの海外シフトを積極的に進めてきた。そうすることで、強靭で安価な調達体制を築いてきたのだ。だが、米中対立が深刻になった18年頃から、その前提とされてきた国際ルールは激変した。

 自由貿易から保護主義へ。主要国は希少材料や基幹部品の囲い込みに走っており、トヨタが注力する電動車に不可欠な電池材料や半導体などの資材高騰は長期化の様相を見せている。トヨタが最適なサプライチェーンの構築にまい進してきたが故に高い壁にぶち当たっているともいえるのだ。

 表向きは盤石に見えても、実は潜在リスクを抱えている――。そうした企業の「課題」をいち早く発見する“手助け”となるのが決算書だ。決算書をじっくり読み解けば、日々流れている企業・産業のニュースの裏側を知ることができる。

全14業界のケーススタディーを掲載!
業界担当記者が解説する「決算書の裏側」

『週刊ダイヤモンド』6月25日号の第一特集は「決算書100本ノック!2022年夏版」です。ダイヤモンド編集部による決算書関連の特集は累計で134万部を発行している大ヒット企画です。

 その中でも人気なのが、ダイヤモンド編集部の業界担当記者が決算書でニュースの裏側を解説する「ケーススタディー」。2022年3月期通期決算から「最速」のタイミングでお届けします。

 中でも鍵になるのが「業績の見通し」。超円高、資源高、インフレの三大テーマが一気に押し寄せており、日本企業は正念場を迎えています。

 以下は、特集で取り上げたケーススタディーの一例です。

●ANA・JAL vs日本郵船・商船三井、ネット借金格差で明暗
●トヨタvsホンダvs日産「E V部門分社」切迫度
●三菱商事vs伊藤忠、決算舞台は純利益から資産効率へ
●SBIの買収拡大路線に暗雲!借金激増「負の連鎖」
●武田薬品、世界10指から転落「創薬投資力」に衰え
●日立・ソニーに劣るFCF、パナIT上場に続く奇策
●三菱UFJ vs三井住友、貸出金&経費率の軍配は?
●ゼネコン4社、工事損失引当金激増で減益ラッシュ
●NTT資金奪取のカラクリ、狙いはデータ子会社化

 特集では、初級編として、簿記や仕訳など難しい予備知識ゼロでも理解できるよう「財務3表」を大きな図で分かりやすく解説しています。

 応用編として、有事に横行しがちな「粉飾決算を見抜くコツ」という新コーナーも拡充しました。

 また、最新決算を反映させた7つのランキング・チャートから日本企業の「トレンド」を先読みしています。延べ440社が登場するデータから、日本企業の今を読み解きます。

 働く全ての人にとって、決算書への理解を深めることが“最強の武器”となることは間違いありません。財務もニュースも分かるようになる「決算書バイブル」。この一冊が、皆様のキャリアが豊かになるための一助となれば幸いです。