『週刊ダイヤモンド』1月9日号の第一特集は「創価学会 90年目の9大危機」です。昨年11月18日、会員世帯数827万(公称)を誇る巨大宗教団体、創価学会が創立90周年の節目を迎えました。ですが、“勝利”への道は決して平たんではありません。「100年目の学会は、今とは全く違う姿になっているだろう」と嘆く学会員は少なくないのです。90年目を迎えた学会が直面する危機を明らかにします。

創立90周年の節目を迎えた
創価学会に迫りくる弱体化

 2020年は、会員世帯数827万(公称)を誇る巨大宗教団体、創価学会にとって極めて特別な年であった。5月3日に池田大作名誉会長の会長就任60周年、そして11月18日には創立90周年という大きな節目を迎えたからだ。

 学会の機関紙「聖教新聞」は創立記念日の翌日の1面で、「2030年の創立100周年へ、共に励まし、勝利の行進!」と高らかに宣言した。だが、〝勝利〟への道は決して平たんではない。20年は同時に、コロナ禍によって対面を主としてきた学会員の活動が大幅に制限され、また、当の聖教新聞からして自力配達を断念するなど、教勢の衰えが露呈した一年でもあったからだ。実際、「次の節目となる100周年での学会は、今と全く違う姿になっているだろう」と嘆く学会員は少なくない。

創価学会の池田大作名誉会長。21年1月2日に93歳の誕生日を迎えた

 世間の目は、希代のカリスマである池田氏が存命なのか否かに注がれがちだが、それはもはや現在の学会を見る上で本質ではない。

 池田氏が表舞台から姿を消したのは2010年までさかのぼる。これまで、学会執行部はカリスマ頼みから脱却すべく、極めて官僚的な「集団指導体制」への移行を着々と進めてきた。実際、19年に再任された現会長(4期目)の原田稔氏を池田氏と同様に考える学会員は皆無に近い。

 この池田氏の神格化の集大成ともいえるのが、17年11月に制定された学会の新たな最高規約「会憲」だ。その中で、故牧口常三郎初代会長、故戸田城聖第2代会長、そして、存命する第3代会長、池田氏の3人を「広宣流布の永遠の会長」と位置付け、その敬称を「先生」で統一。さらに、翌18年9月8日には、聖教新聞紙上で四半世紀にわたって連載された池田氏の小説『新・人間革命』が完結を迎え、「カリスマ時代の終わり」を学会員に印象付けた。

 つまり、池田氏の〝神格化〟は、とうに完了したとみるべきなのだ。その意味で、卒寿を迎えた学会が現在直面している危機は、ポストXデー、池田氏の死による求心力の低下などではなく、より根深い構造的な問題である。

 ダイヤモンド編集部は学会を襲う危機を九つに分類してその内実を追ったが、それらは個別に独立した問題ではなく、その根底にほぼ共通の原因がある。すなわち、少子高齢化に核家族化、世代間の価値観の断絶といった、日本社会全体が直面している危機だ。

 大阪商業大学が例年実施している「生活と意識についての国際比較調査」に、「信仰する宗教(本人)」という質問項目がある。その質問で「創価学会」を選んだ人の割合は、2000年以降、ほぼ2%台前半で安定推移してきた。ところが、最新の18年調査ではその割合が1.4%へと急落した。

実際の学会員数は 177万人?
有識者が衝撃の試算

 著名な宗教学者、島田裕巳氏は20年に上梓した著書『捨てられる宗教』(SB新書)の中で、先の調査に基づいて日本の総人口に占める実際の学会員数を177万人と算出した。この数字はそれ以前と比べると、一気に100万人ほど学会員が減ったことを示す。

 島田氏はダイヤモンド編集部の取材に、「18年調査の1.4%という数字は単年の結果で、より正確な分析には今後の調査を待つ必要がある」としつつ、こう続けた。

「それまで2%台前半という数値で安定していた理由は、信仰2世、3世など世代交代に成功したためとみられるが、学会入会者は、半世紀以上前の1960年代が特に多い。それ故、当時の入会者の死亡や高齢化により、ある時を境に急減しても不思議ではない」

 そして、20年9月、その学会に〝神風〟が吹いた。菅義偉政権の発足である。菅首相と学会の佐藤浩副会長には、菅氏の官房長官時代から〝盟友〟と称されるほど太いパイプがあることはよく知られている。

「菅政権の発足で、安倍晋三前首相時代以上に、自公連立は強固になるだろう」と、複数の学会幹部や学会に詳しいジャーナリストは口をそろえる。だが、その言葉にはただし書きがある。それは「学会の集票力が維持される限りにおいて」だ。前出の島田氏は言う。

「19年の参院選では、(学会の支持団体である)公明党の得票数は16年の参院選と比べて100万票以上減らしており、学会員数の減少と関係している可能性が高い。信仰2世や3世は、価値観もかつての学会員とは大きく異なる。21年の衆院選は、公明党の〝歴史的大敗〟となりかねない」

 最強といわれてきた集票力に陰りが見えれば、20年以上にわたる自公連立の土台が崩れる。そして、もしそうなれば、Xデー以上に学会の教勢に致命的なダメージとなるだろう。学会に残された猶予はおそらく想像以上に少ない。学会が直面する9つの危機を具体的に明らかにする。

創価学会への理解なしには
日本の政治・社会は分析不可能

 『週刊ダイヤモンド』1月9日号の第一特集は「創価学会 90年目の9大危機」です。

 特集では、数兆円規模と言われる「S(創価)経済圏」に迫る危機や、コロナで急ブレーキがかかった学会活動の苦境、混迷の度を深めるカリスマ不在の後継者争いの行方、配達の外部委託に踏み切った聖教新聞の裏事情、さらには「歴史的大敗」も懸念される次期衆院選のゆくえなど、盛りだくさんのテーマに迫ります。

 そのほか、学会本部も存在を知らないであろう往年の池田氏や大幹部、第2代会長の戸田城聖氏の縁者などの秘蔵写真を発掘、学会のキーマンを網羅した内部文書なども大公開します。

 そして、インタビューには、昨年10月、600ページに及ぶ大著『池田大作研究』を上梓した作家、佐藤優氏が登場。「学会が世界宗教化する理由」を語ってもらいました。

 その佐藤氏は「学会を知り、理解しなければ、日本の政治や社会を分析することはできない」と断言します。学会員もそうでない人も必読です。

(ダイヤモンド編集部「創価学会取材班」)