スルガ銀行の不正融資は1兆円規模になるのか──。今年2月、スマートデイズ(旧スマートライフ、以下SD)が運営する、投資用シェアハウス「かぼちゃの馬車」への融資をめぐり問題が発覚した。
SDのスキームは、地方から上京してくる女性をシェハウスに誘導(客付け)して家賃収入を得る。そして、その女性たちを企業にあっせんし、企業から紹介料を受け取る。それらの収入を、一括で物件を借り上げる家賃保証「サブリース」として投資家に提供する。安定した入居者の確保に加え、サブリースによる安定した家賃収入——。その“撒き餌”に投資家たちが飛びついた。
ところが実際は、元値の倍の値段にまでつり上げられた物件を買わされたり、実際の入居率は50%程度にまで下がっていたり、預金通帳や契約書類が改ざんされてオーバーローンを組まされていたりと、まさにぼったくりの構図。そこに深く絡んでいたのが、スルガ銀行の行員たちだった。
この構図が破綻するのは、時間の問題だった。昨年10月、保証額の減額を突如通知され、寝耳に水のオーナーたちは大混乱に陥った。事業が回らず、破産状態に陥ったオーナーが続出。被害総額は2000億円規模を超え、「スルガスキーム」として大きな社会問題となった。
今年5月、スルガ銀の米山明広社長が謝罪する事態に発展、外部の弁護士で構成される第三者委員会が全容の解明を急いでいる(調査報告書は8月末に発表予定で、本稿執筆の時点では未発表)。
そして8月下旬、約30年間にわたりトップに君臨してきた創業家出身の岡野光喜会長に加え、米山明広社長、白井稔彦専務が9月中にも引責辞任すると報じられている。
シェアハウス問題に収斂
表面化した不動産投資の罠
この問題はシェアハウスだけにとどまらない。地方の投資用物件でも同様の手口が使われた疑いが持たれている。融資審査の際に空室にカーテンを取り付け、さも入居者がいるかのように装う「カーテンスキーム」なども横行していたという。あらゆる改ざんの手を尽くした結果、融資総額は1兆円規模に膨らんだというわけだ。
昨年6月、本誌は「不動産投資の甘い罠」という特集を組んだ。サブリースの問題点や投資用物件の非現実的な提案を一刀両断し、反響を呼んだ。不幸にして、同特集で指摘したような問題がシェアハウス問題として収斂し表面化してしまった。不動産投資の罠はまだまだあった。
投資家は常にリスクと隣り合わせだ。本特集で詳述するスルガスキームの全貌をはじめ、その他の巧妙な手口、投資環境などの現実と仕組みを知り、勝ち組を目指すほか、自己を防衛する手段はない――。
不動産投資の“罠”に嵌らないために
勝ち組投資家の手法を学びつくそう
『週刊ダイヤモンド』9月8日号の第1特集は「まだまだあった不動産投資の罠」特集です。
ここ数年、不動産投資はブームに沸きました。中でも影響が大きかったのが、超低金利で苦しむ金融機関が不動産投資への融資姿勢を強めてきたことです。不動産投資の素人であっても、銀行が融資してくれるから大丈夫だろうという“根拠なき安心”の下、サラリーマンや主婦たちがこぞって、投資物件を買い漁りました。
そうした不動産融資に積極的な金融機関についても徹底調査しました。本誌に掲載しきれなかった金融機関を含めた、【全国版】「不動産向け融資比率データ」をダイヤモンド・オンラインにて9月3日(月)より公開します。(※ご覧いただくには無料会員登録が必要です)
何より、こうした不動産投資ブームには、「大事な点が抜け落ちている」と、勝ち組の不動産投資家たちは口々に言います。それは、不動産投資は投資ではなく、不動産賃貸事業であるということです。想定していた家賃で入居者が入らない、築古の物件を買ったら思ったより修繕費など経費がかかった……、そうした事例は枚挙にいとまがありません。
昨年6月に特集した「不動産投資の甘い罠」では、サブリースの問題点を大きく取り上げました。事象は異なりますが、全て賃貸業として取り組み、物件の実力や周辺相場などを調べ上げれば、かなりの部分を防げたことに違いはありません。
そこで本特集では、問題点を指摘するのみならず、不動産投資を行うに当たっての「基本のキ」にまで視点を広げました。また、勝ち組メガ大家座談会で司会を務めてくれた、コアプラス・アンド・アーキテクチャーズ代表の玉川陽介氏が実際に使っている「物件管理シート」についても、読者特典として提供していただきました。
玉川陽介式「細かすぎるけど役立つ不動産管理エクセルシート」
※9月3日(月)から提供します。
不動産投資は、手堅くやれば勝てない投資ではありません。ですが、手を抜き、海千山千の販売業者に言われるがまま物件を購入すれば、カモにされる世界です。そうならないために、本誌が少しでもお役に立てれば幸いです。
(『週刊ダイヤモンド』副編集長 藤田章夫)