トップとなったのは前出のトヨタ自動車、2位はソフトバンクグループ(SBG)となった。SBG傘下のソフトバンクは昨年の社員大会で、技術部門1.4万人を2年で半減させると衝撃的な人員削減策を打ち出したばかりだ。

 その他、オーナーの支配力が高い企業が上位に来た。永守重信氏率いる日本電産や、ロボットホテルを展開するエイチ・アイ・エスなど、いずれもAI化が一気に進んでも何らおかしくない。AI革命によって、日本では2030年度までに最大2700万人が失職するとの試算もある。あなたは大丈夫? ぜひこのランキングを参考にしてもらいたい。

個人も企業も逃れられない
二つのAI格差

 世界で今、AI(人工知能)による革命が起ころうとしている。AIがあらゆる産業で激烈な生産性の向上を実現し、18世紀後半に始まった産業革命を超えるインパクトを経済に与えるといわれているのだ。

 AIでビジネスをしようとする者は、ばら色の未来を語りたがり、メディアはAIを組み込んだ機械に人間の仕事が奪われるとあおり立てる。

 革命の先にある世界は天国か地獄か──。

 一つ、言えることがある。あらがいようのないこの激流に対応できるか否かで、個人間そして企業間のそれぞれで「AI格差」が明確になるということだ。

 実はAI革命には産業革命よりも恐ろしい側面がある。歴史をひもときながら個人の格差について解説していこう。

 まずは下図を見てもらいたい。これは「クズネッツの逆U字カーブ」と称され、資本主義経済の発展で格差は拡大するが、ある時期から格差は縮小し、不平等が是正されるという説をグラフ化したものだ。

 実際、産業革命ではイノベーションで生まれた富が資本家らに集中し、格差が拡大した。

 BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎氏によれば、「英国でこの逆U字カーブの上昇(格差拡大)が止まったのは1860〜70年代。『ルイスの転換点』を迎えてからだった」という。

 ルイスの転換点とは、工業化の進展で農村から都市への低賃金な農民の移転が進んだ結果、農村の余剰労働力が底を突くことを指す。この人手不足によって労働者の賃金が大幅に上昇し、産業革命の恩恵が広く行き渡るようになったとされる。

 さらに大恐慌後の1930年代以降、累進的な税制や社会保障制度が整備されたこともあって、格差は縮小していくことになる。