働き者は虚像?
日本の労働生産性はG7中で最下位

 もちろん日本経済がすぐに危機に陥る可能性は低いです。一方で気になるのが日本経済の地力の低下です。このままでは衰退の流れが加速しそうな情勢です。

 例えば、経済的な豊かさを表す「1人当たり名目GDP(米ドル)」の世界ランキング。失われた20年と呼ばれる長期低迷期に、日本の国際的地位は凋落してしまいました。為替の影響があったとはいえ3位をキープしていた1990年代半ばから、足元では20位台にまで大きく順位を落としています。

 しかも日本はこれから人口減少が本格化してくるため、さらなる低下も予想されます。

 経済成長は労働人口と労働生産性の掛け算であり、「人口減少が避けられないなら、働き者の日本人の高い生産性で補えばいい」との意見も出てきそうです。

 しかし実のところ、日本の「1人当たり労働生産性」は意外と低く、OECD加盟35カ国中22位、G7(主要7カ国)では最下位に甘んじています。数字だけを見れば、働き者どころか鈍くさい労働者といった方がピッタリきます。

 実際、G7で最も労働生産性の高い米国と比較すると、日本の製造業の生産性は米国の7割、サービス業は5割にとどまります。日本人は勤勉で働き者というイメージは、日本人自身がつくり上げた虚像なのかもしれません。

 国の経済発展には人材育成も欠かせません。しかし、日本は未来に向けた投資には無関心のようです。OECDによれば、日本は「GDPに占める教育機関への公的支出割合」が3・2%で、これは比較可能な33カ国中、なんと最下位のハンガリーに次ぐ32位。教育に投資をしない国に未来はありません。

 日本経済はこれからどこに向かうのでしょうか。デフレ脱却に向けた日本銀行による異例の金融緩和は、思うような成果を挙げられずにいます。企業に目を向けると、働き方改革の真っただ中ですが、AI(人工知能)の劇的な進化もあって、日本人の仕事が奪われるとの危機感も広がっています。

 本特集ではマクロの世界からミクロの世界まで、日本経済に関するさまざまな疑問に対し、例え話を交えながら解説します。思わず誰かに話したくなる日本経済の速習講座、スタートです。