日本は「借金まみれの鈍くさい富裕層」だ
 

 『週刊ダイヤモンド』4月15日号の第一特集は「思わず誰かに話したくなる 速習!日本経済」です。

 日本は不思議な国です。長年にわたり財政危機が叫ばれ、破綻説がくすぶる一方、破綻なんてあり得ない、世界一豊かな国だという日本礼賛説も一部に根強く存在します。

 一体どっちが正しい日本経済の姿なのでしょうか? 結論から言ってしまえば、ある意味においてはどちらも正解です。

 破綻説の根拠になっているのが、その巨額の財政赤字だ。OECD(経済協力開発機構)によると、「政府債務残高の対GDP(国内総生産)比」は230%を超えて世界最悪レベル。財政破綻したギリシャより悪いというのだから、いかに悲惨かお分かりでしょう。

 また、人事コンサルティング会社世界大手のマーサーがまとめた「世界年金指数ランキング」では、27カ国中26位。日本より下だったのは2001年にデフォルト(債務不履行)に陥ったアルゼンチンだけという体たらくです。制度の持続性が問題視されたとそうです。社会保障の膨張はその国の財政を急速に追い詰めます。

 一方の日本礼賛説、もしくは破綻しない説の裏付けとしてよく挙げられるのが、日本の企業や政府、個人が海外に持つ資産から負債を引いた「対外純資産残高」です。

 財務省によると、15年末時点で前年末比6・6%減の339・2兆円となりました。5年ぶりに減少に転じたものの、25年連続で世界一だったそうです。

 しかも日本は経常黒字が続いており、おカネが国内に流入し続けています。つまり資産だけでなく、稼ぎもいいというわけです。

 また豊かさの論拠として「個人金融資産残高」もよく出てくる数字です。16年3月末時点で1706兆円に達し、米国に次ぐ世界2位の規模。ただし、資産の裏には必ず負債があるということを忘れてはいけません。「個人金融負債残高」でも日本は世界で2番目に多いとされます。

 借金まみれの超富裕層というのが、統計データから見える日本経済の一側面といえます。

 こうした側面は見方を変えれば、経済全体、特に民間企業は資産も収入も多く節約家なのに、国の方が超の付く浪費家の貧乏人ということになります。日本を一人の人間に見立てたら、まるで二面性を持つジキルとハイドのようです。

 ところで、これだけの対外資産があるのだからこのまま借金を膨らませても大丈夫かというと、決してそうではありません。その先にある日本経済の近未来については、本特集内で明らかにしていきます。