“天国”へと続く階段が浮かび上がるかのような上げ相場が、株投資家の前に現れた。
今年1月25日、米国の株価指数であるダウ工業株30種平均は2万ドルの大台を突破。1896年に12銘柄で算出を開始したダウ平均120年の歴史上、初めての快挙だった。
その熱狂も冷めやらぬ半月後、われわれは再び歴史的な相場を目撃することになる。2月8日に2万54ドルだったダウ平均は、2月27日まで12営業日連続で終値としての最高値を更新。2万837ドルに達した。12連騰は実に30年ぶりの出来事だった。
さらに、その翌々日の3月1日には、ダウ平均は年初来最大の上げ幅を記録し、節目となる2万1000ドルを楽々と超えていった。
米国経済の堅調さに加えて、ドナルド・トランプ米大統領が掲げる減税・公共投資・規制緩和といった経済成長を後押しする政策に対する期待が先行しているのだ。
米国株市場に大きく左右される日本株市場がこれに反応しないはずがなかった。ダウ平均が2万1000ドルを超えた翌日の3月2日には、日経平均株価が昨年来の高値を上回る場面もあった。その日の日経平均株価の終値は前日比171円高の1万9564円を付け、1月4日以来の高値を記録した。
そして、世界経済の“エンジン”である米国が謳歌する歴史的な急騰相場と連動し、世界中の株式市場に上げ相場が波及している。
この世界的な“天国相場”をつくり出しているのは単なる期待だけではない。実は世界の主要国・地域全体で景気が上向いている。この傾向が続けば今後の日本株にも追い風だ。
日本株の好材料は他にもある。中でもにわかに影響が注目されているのが、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ観測だ。
2月までは、3月14〜15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げはないとみられていた。ところが、3月1、2日とFRB理事が連日3月の利上げに言及。翌3日にはジャネット・イエレンFRB議長も続き、市場は3月の利上げを急速に織り込んだ。
この流れは、市場関係者に日米の金利差拡大を意識させる。すると、低金利の円から高金利のドルへ資金が流れて円安ドル高を招き、「円安日本株高」相場となる展開を連想させるというわけだ。
また、詳細は後述するが、日米両国で財政拡大による景気刺激策への期待が高まっており、実現すれば短期的には日本株への追い風となることが予想される。
さらに、これから迎える4月という時期は、実は日本株の値動きに大きな影響を与える海外投資家が、10年以上連続で日本株を買い越している月でもあるのだ
世界を翻弄して地獄に落とす?
米国本家と仏蘭「第2のトランプ」
ところが、こうした“天国相場”到来の未来が、突如として地獄絵図に変わるリスクも潜んでいる。米国と欧州の政治リスクだ。
今や世界が一挙手一投足を注視するのが、ご存じトランプ大統領。議会演説でいつもの暴言を控え、行儀よく原稿を読み上げただけで「大統領らしかった」と称賛され、米国株高を呼んだ。かと思えば、その数日後には元通りで市場の不安を煽る。日本株も米国市場の一喜一憂に左右される。