大和証券チーフ為替アナリストの亀岡裕次氏は、「リスクオフの逆のリスクオンから考えると分かりやすい」と教えてくれた。
日本の投資家がリスクを取る際、高利回りを求めて、低金利通貨の円を売り、高金利通貨を買う流れが加速する。それがリスクオフに転じると、まずは手元の流動性を確保しようとして、円に回帰して円が買われるというわけだ。
以前に比べて減少したとはいえ、円キャリー取引も忘れてはいけない。リスク回避局面で外国人投資家は、低金利の円を買い戻し、円を返済する流れが加速するという。
その流れを増幅するのが、投機筋だ。リスク回避で円高が進むと読んだヘッジファンドが円買いを仕掛けてくるのである。さらにドル円の相関などに着目して超短期で自動売買をするCTA(商品投資顧問)が円高のモメンタム(勢い)に乗って円を買い進める。
そして何より、「リスクオフ=円買い」と脳内にインプットされた多くの投資家による“条件反射”的な思惑買いが大きく作用する。
これこそが「リスクオフの円買い」の正体なのである。
そもそも、リスクオフ、リスクオンという言葉が相場に定着してきたのはそれほど昔ではない。
リーマンショック後の金融緩和で、投機マネーがジャブジャブに溢れたが、こうした投機マネーは少しでも高い利回りを求めて世界を徘徊。市場心理の変化によって、スイッチのオン、オフを切り替えるように、目まぐるしくリスク資産と安全資産の間を行き来するようになってからだ、とベテラン為替ティーラーは語る。
2月11日に1年3ヵ月ぶりに一時110円台を付けたドル円相場は、足元で若干円安に戻している。
ただ、「115円を超えて円高になると、テクニカル的にも心理的にも円安軌道に戻りにくい」(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサーの田中泰輔氏)。
今後、リスクオフの円買いはどんな展開を見せるのか。
2011年の欧州債務危機を受けた大リスクオフ相場では、同年10月、一時1ドル=75円台まで円高が進んだ。
今、それに匹敵するイベントがすぐに顕在化する状況ではないが、原油安、欧州発の金融不安、そして米国の景気後退など、複数のリスクが共振して、激烈なリスクオフ相場に転じる可能性は十分ある。