【死亡リスク/3・7倍】

「気温が1度上がれば、確実に死者は増える」(環境省幹部)

 そういわれるほど、気温と死は直結している。このまま温暖化が進んでいくと、熱中症などによって、国内の死亡リスクが3.7倍に膨れ上がるとされている。

 海外に目を向ければ、熱波によって大量の死者が出た例は多い。03年に欧州を襲った熱波では、WHO(世界保健機関)によれば、欧州全体で2万人以上の死者が出た。今年5月に発生したインドの熱波では、なんと気温が42度にもなった。その結果2200人もの人が命を落とした。

 フランスではエアコンを持っていない人が多かったという事情もあるが、今後、温暖化によって日本でも同じような事態が起こる可能性は十分にあるだろう。

 国立環境研究所の小野雅司フェローによれば、温室効果ガスの濃度が最も高く推移するシナリオの場合、今世紀末ごろに日本での熱中症搬送者数は現状比で5倍に増加すると予測されている。

 最も危険性が高いのはお年寄り。高齢になれば心臓や肺等の機能が低下することは避けられない。お年寄りは高温が続くことで温熱中枢がまひすることも多い。

 ただ本田靖・筑波大学体育系教授は「健康な成人男性でも、熱ストレスによる死亡リスクはある」と解説する。

 例えば、工期が決まっていて、30度の炎天下で作業をしなければならない土木作業員や建設作業員。健康でも適切に水分を取るなどの対策を怠れば、熱中症で死亡することが考えられる。

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 こちらで紹介した気候変動がもたらすリスクはごく一部です。このたび、環境省は「気候変動の影響への適応計画」を策定しました。この計画は533本ものアカデミック文献が根拠になっています。自然災害、健康、農林水産業、自然生態系など7分野57項目にわたって、気候変動がわれわれにもたらす衝撃的なリスクについてまとめられています。