1987年のブラックマンデー、97年のアジア通貨危機、そして2008年のリーマンショック──。有為転変の相場の世界であまたの修羅場をくぐってきたメガバンク幹部をして、「あれは腰が抜けました」と言わしめたほど、8月半ば以降の暴落劇は苛烈を極めた。
株式市場は世界同時安の様相となった。日経平均株価は8月11日の高値から2週間で実に3000円近くも落ち込み、米ニューヨークダウは同21日までの1週間で1000ドル超も暴落してしまった。週間ではリーマンショック直後以来の下げ幅である。
上海総合指数が8年ぶりの下げ幅を記録した同24日、中国国営メディアの新華社は、今回の暴落を「黒色星期一(ブラックマンデー)」と評した。
異常事態は株だけにとどまらない。同じ日、為替でも「アルゴリズム取引のせいで、1ドル119円だったドル円がたった30秒で116円まで飛んだ」(同幹部)。
暴落の背景にあるのは、中国景気の想定以上の急減速と、米国で浮上している利上げ観測だ。
この米中二大リスクが〝共震〟することで、投資家の心理が急速に冷え込んだ。株式、商品、新興国通貨といった高リスク資産から、先進国の国債などの低リスク資産にマネーを移動させる「リスクオフ」が急加速して、金融市場を激しく揺さぶった構図が浮かぶ。
リーマンショック後、米国など先進国の相次ぐ金融緩和策を受け、大量の緩和マネーが財政基盤の脆弱な新興国へと流れ込んでバブル化していった。
こうした緩和マネーが米国の利上げ観測を契機にいよいよ逆流を始め、トルコやインドネシアの通貨安を招くなど、新興国を直撃しているのだ。
さらに、〝爆食〟によって世界の一大消費地として急台頭してきた中国経済も減速が鮮明となり、資源需要の急減という形で資源国に大打撃を与えている。中でも中国への輸出依存度の高かったオーストラリアや南アフリカ共和国などは青息吐息だ。原油などの商品市況にも波及して価格が急落している。
特に新興国は、中国の三大調整の余波で輸出減、観光客減、消費減の三重苦に陥っている。
震源地となった中国当局もすぐに対応策を打ち出した。
8月25日、中央銀行の中国人民銀行が追加利下げと預金準備率の引き下げという異例のダブル緩和に踏み切ったのだ。そのおかげで金融市場は急反転、落ち着きを取り戻し、暴落の危機は去ったかに見えた。
しかし、悪夢はこれで終わらなかった。
9月1日、中国の製造業の景況感の悪化が鮮明になったことで、日経平均株価が再度、急落したのだ。下落幅は今年3番目の大きさ。この株安の波はアジア、欧州、そして米国へと連鎖して、地球を何周もする勢いだ。