ホテルの魅力は何も最先端の設備やデザインだけではない。それを表すのが4位の奈良ホテルだ。
1909年に「関西の迎賓館」として創業したこのホテルは奈良公園の高台に立つ。皇族が常宿にする他、宿帳にはアインシュタインやチャプリン、ヘレン・ケラーなどが名を残す。
本館は和風シャンデリアや鳥居付き暖炉など、明治時代の和洋折衷文化が見事に体現されている。
「年齢を重ねた大人にこそ、このホテルの歴史やその豊かさを体験してほしい」(著述家の富田昭次氏)という声の他、「建築自体に見る価値あり。館内の絵画も素晴らしく、タイムスリップしたような気分を楽しめる」など、プロからも高評価だ。
「3年以内に泊まった」東京のトップは帝国
大阪のトップはリッツ・カールトン
アンケートでは、ホテル通たちが、実際に「3年以内に泊まって満足したホテル」も聞いた。
東京の1位は老舗の帝国ホテル 東京だ。詳しくは後述するが、「スタッフのきびきびとした的確な対応は、世界の賓客をもてなしてきた誇りを感じさせる」(ホテルジャーナリストのせきねきょうこ氏)などと、安定した高品質なサービスで多くのプロから支持される。
2位のマンダリン オリエンタル 東京は、トレンドに合わせた大胆なレストラン改革が高評価を得た。そして新旧入り乱れ混戦する東京で注目は、建て替えが成功した3位のパレスホテル東京だ。
プロからは「皇居前という最高の立地を最大限に生かし、高級感溢れる空間に生まれ変わった」「外資系にも負けない充実した設備に、日本のホスピタリティが加わった」などと高く評価されている。
高齢化していた顧客層の転換を図るため、若い女性や外国人を意識し、量より質を追求。客室数は100室減、レストラン・バーの客席も半減させた。日本で初のエビアンスパを誘致し、プールも新設。女性客の大幅増につなげた。
大胆な建て替えは常連客をも満足させる。「伝統のメインダイニング『クラウン』の味は健在」(ホテルジャーナリストの小原康裕氏)。和食と中華レストランは個室を多く設け、会食にも使われる。
一方、大阪はザ・リッツ・カールトン大阪の独り勝ち。日本1号店として開業して18年間、ぶっちぎりの地位を築いている。
館内はヨーロピアンテイストでまとめられ、まるでテーマパークのよう。プロが明かすのは、そうした世界観を維持するスタッフの意識の高さ。館内全てを90日に1度ケアするプログラムが徹底され、「カーペンターズ」と呼ばれる職人を直接雇用している。
六つあるレストランやバーラウンジは、「美食のオアシス」と称される。特に6年連続ミシュランの星を獲得しているフレンチの「ラ・ベ」は「味、サービス、空間の三位一体が完璧」(グルメジャーナリストの東龍氏)。
そんなリッツの背中を追うのが2位のセントレジスホテル大阪だ。プロが薦める理由がバトラー(執事)サービスだ。シャツのアイロン掛けや靴磨きを頼めば、滞在時間を有効に使え、いつもと違ったホテルライフが楽しめる。
開業から5年たち、今年から反転攻勢に出る。女性ファンが多いリッツに対抗し、「男性ファンの獲得を狙うさまざまなプランを展開する」(福永健司総支配人)。
他方、老若男女をターゲットとするのが3位の大阪マリオット都ホテルだ。あべのハルカスの上層階から〝絶景〟が見渡せるレストランは「ZK」、ビュッフェレストランは「COOKA」(食うか)と駄じゃれのネーミングが親しみやすい。外資系ホテルでは珍しい、靴を脱ぐタイプの部屋はシニアもくつろげると評判だ。
今からでもまだ間に合う!
夏休みの旅行のご参考に
『週刊ダイヤモンド』8月1日号は、「プロが選ぶ ベストホテル」。ホテル通33人にアンケートを実施し、「一生に一度は泊まりたいホテルランキング」「3年以内に泊まって良かったホテルランキング」「オススメの旅館ランキング」などを作成しました。
合わせて、食事や娯楽、教養まで提供、今や「大人のテーマパーク」となっているホテルの使い方についても、写真をふんだんに使って詳細にレポート。仕事に遊びに使えるホテルが一目で分かります。
そのほか、旅館やアジアのホテルについても取り上げました。覆面で旅館に宿泊し続けた男のオススメ旅館、そして日本より格安に泊まれるアジアの一流ホテルについても掲載しています。
夏休みに入りましたが、まだ間に合います。特集をご覧いただき、ホテルや旅館を選んでみてはいかがでしょうか。
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週刊ダイヤモンド2015年8月1日号 「プロが選ぶ ベストホテル」
◆Part1 プロが認めるベストホテル
◆Part2 仕事に遊びに使えるホテル
◆Part3 都会生活忘れ 楽園でバカンス
◆Part4 個性あふれる旅館の新時代
◆Part5 地殻変動!ホテルバトル時代
◆Part6 最先端のホテルはアジアにあり