競合ジム台頭の対抗策として
カギ握る会員3万人のビッグデータ活用

 ただ、この流れがいつまでも続くとは限らない。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングのチーフコンサルタント、高橋千枝子氏は、「ダイエット市場はブームの移り変わりが激しい。しかも国内は人口が減少し、市場自体も細分化しており、いずれライザップも伸び悩む」と警告する。さらにその上で、「それまでに、次の収益源を育てる下準備をする必要がある」とも指摘する。

 その意味で注目されるのが、ライザップの会員の世代別割合だ。他のジムは60歳以上会員数が20%台後半〜30%台後半に達しているのに対して、ライザップのそれはまだ3.4%にすぎず、まだまだ開拓余地が残っているのだ。

 布石も打っている。医療分野への進出だ。健康コーポレーションは、人間ドック機能のある大学病院などから提携の提案を複数受けているとされ、年内にも複数の医療機関と提携していく方針で、シニア層の取り込みに本腰を入れる。

 逆に、今後のボトルネックとして挙げられるのが、参入障壁の低さによる競合ジムの台頭だろう。

 一般的なフィットネスジムをオープンするには数億円規模の初期投資が必要となるが、プライベートジムなら40〜50平方㍍のマンションの一室さえあれば十分。初期投資も数百万円とハードルが低い。

 すでに、ライザップと同じ仕組みで、複数のプライベートジムが急拡大している。
「競合店に対する危機感は持っている」と瀬戸社長。対抗するには、質の高いトレーナーを確保、教育して、高級ジムとしてのブランドを確たるものにすることが急務だ。

 そこで鍵を握るのが、同社が保有する会員3万人の個人データだ。実は「入会して1カ月以上たつ会員なら、情報を入力すればどんな経緯で最終的に何キログラム痩せるか、90%以上の確率で予想できる」(瀬戸社長)。

 これらをビッグデータとして徹底分析し、独自のトレーナー育成プログラムを構築できれば、ライザップは業界全体の雄に躍り出るだろう。

本誌記者が体当たり取材で
究極のダイエット法を探った

 『週刊ダイヤモンド』5月30日号の第1特集は「究極のダイエット 燃焼!知られざる2兆円市場」です。

 痩せたいと願う人々の飽くなき欲望をカネに換えるダイエットビジネス──。

 実は2兆円を超す知られざる巨大市場なのだけれど、足元ではさらなる市場の膨張が見込まれ、大きな転換点を迎えています。新たなビジネスモデルを武器に、新規参入してくる企業も急増しています。

 その代表例、独特のCMで話題沸騰の高級プライベートジム「ライザップ」でしょう。

 2012年のオープン以来、3年余で海外を含む44店舗(4月末時点)に拡大し、会員数は右肩上がりで増え続ける。ライザップに追随して、マンツーマンの筋トレと徹底した食事指導で減量を図る競合ジムも次々に生まれ、既存の大手フィットネスジムを巻き込んだ会員の争奪戦が激化しています。

 アップルウォッチなどウエアラブル端末やアプリが登場し、体脂肪率や消費カロリーを個人が簡単に記録できるようになったことで、ITや健康管理システムの分野でも新たな市場が広がりつつあります。総合商社の豊田通商は5月、フィットネスジム会員のデータを一元管理するシステム「からだステーション」の本格運用を開始しました。ジムに通う中高年を主なターゲットに、5年後には500店舗25万人の会員数を目指しています。

 ダイエット医療も日々、進化を遂げています。足元では今まさに、遺伝子検査と減量を結び付けた「遺伝子ダイエット市場」が生まれようとしています。

 国が4月に始めた機能性表示制度にも注目が集まっています。健康食品ではこれまで、特定保健用食品(トクホ)と栄養機能食品しか効果や機能の表示が認められていませんでした。

 新制度では、食品の安全性や機能性の科学的根拠を消費者庁に届け出れば、例えば「脂肪の吸引を穏やかにします」などの機能性を商品に表示できるようになります。

 こうした規制緩和の裏には、高齢化で年々増大する国民医療費があります。国は医療費を抑えるため、公的保険外の予防市場を2兆円から20年には9兆円まで急拡大させるという壮大な計画を描いています。

 古くはぶら下がり健康器から「ビリーズブートキャンプ」まで、振り返れば、時の流行で数々のヒット商品が生まれては消えていったダイエット市場。欲をくみ取りながらより細分化し、膨張を始めた巨大市場を解剖します。

 また、同時に究極のダイエットについても探りました。本当に痩せるダイエットとは何なのか。本誌ダイエット取材班の記者たちが、遺伝子、IT、痩身医療など台頭する最新ダイエットを体当たり取材して、究極の減量法を解明しています。特集を読んで、お腹の出っ張りが目立つ夏までに、誰にも気付かれず、こっそり減量してみては?

週刊ダイヤモンド2015年5月30日号
「究極のダイエット 燃焼!知られざる2兆円市場」

◆究極のダイエットはどれだと思いますか?

◆Part1 人気爆謄!ライザップの秘密

Part2 脱ライザップの新潮流
    次にくるのはこれだ!

◆Part3 怪しくも気になる
    グレーゾーンダイエット

◆Part4 人生最後のダイエット

 

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