経常利益は2.4倍増で、3期連続の過去最高益。昨年度の株価上昇率は440%を超え、上場企業中2番目の伸び率を記録した。
大人気の高級プライベートジム「ライザップ」を全国展開する健康コーポレーションが、まさにわが世の春を謳歌している。札幌の新興市場から一気に東証1部へとくら替えする準備も進めており、時価総額は1000億円に迫る勢いだ。
その原動力がライザップであることは疑う余地がない。では何がここまでこのジムを押し上げたのか。成功の秘訣は、芸能人が劇的な肉体改造を遂げると話題のCMのみならず、そのビジネスモデルの巧妙さに隠されている。
既存の大手ジムは「場所貸しをするだけで、痩せるというゴールに到達できなかった」と健康コーポレーションの瀬戸健社長は語る。換言すれば、「痩せない程度に運動してもらい、細く長くお金を落としてくれるのが上顧客だった」(フィットネスジム関係者)。
これに対し、ライザップの経営戦略は百八十度異なる。明確な目標数値を設定し、短期間で確実に痩せさせる。CMで流れた「結果にコミットする」というコンセプトが、高額でもすぐに減量したいという層から支持を集めたのだ。
こうした〝結果至上主義〟と表裏を成すのが、業界の常識を覆すコスト構造で、これこそが同社のCM戦略の屋台骨を支えていた。ライザップは実のところ、高コスト体質の大手フィットネスジムとは対照的に、驚異的な低コスト経営を実現している。
フィスコ客員アナリストの浅川裕之氏が解説する。
「完全予約制のライザップは、大手ジムのように駅前一等地で集客しなくてもいいため、立地にこだわる必要がなく、家賃の大幅引き下げに成功した」。実際、原宿のライザップ神宮前店は、最寄り駅から徒歩で10分以上離れ、大通りから一本入った目立たない雑居ビルの地下に入居している。
同社資料によれば、一般的なフィットネスジムの場合、地代家賃は売上高の20%に達するが、ライザップは4%にすぎないという。
しかも、「マンツーマンの筋トレが基本のライザップのジムにはプールも最新式の設備も要らないため、安上がり」と浅川氏。確かに、ライザップのトレーニング室に設置されているのは、ベンチプレスやバランスボールのような基本的な器具ばかりだ。それ故、売上高対比の水道光熱費の割合が、一般的なスポーツクラブの場合は10%を占めるのに対して、ライザップはわずかに1%。設備維持費も一般的なスポーツクラブが5〜8%のところ、ライザップは1%と、大幅に抑制できるのだ。
このように原価を抑えることで、高い粗利益率を実現。これを原資とした巨額の資金が宣伝広告活動へと大量投入され、あのCMがお茶の間に届くというわけだ。その結果、知名度と会員数はさらにうなぎ上り。それがさらなる業績の向上につながる好循環を生んでいる。