特別対談
僕らが考える、おカネの本質
藤野英人
投資家、ファンドマネジャー
堀江貴文
ライブドア元CEO、SNSファウンダー
──今日は、お金に対するお二人の考え方をお伺いしたく……。
堀江 お金に対する考え方っていうものが、そもそもないんだよね。そんなに考えてないし(笑)。だいたい、「お金に困る」っていうんだけど、そうやってお金というものにとらわれてること自体、いわば洗脳されてるってことだから。
藤野 そうそう。実は日本人って知らずしらずのうちに、ものすごくお金が大好き。あいつは金の亡者だとか、金持ち批判だとか、あるいは格差だ!って叫ぶのも、全てお金の話。そういう批判をしている人こそ、お金のことばかり考えているわけです。皆、いつもお金のことで頭がいっぱい。
堀江 みんな割と感情で動いてますよね。政治家って、そういう国民の感情をすごく大事にしてるんですよ。こういった、ふわっとした民意を利用して。でも「こうなるべき」っていう思想はなくて。
藤野 お金がそんなに好きなら正直にその気持ちに向き合って、まずはお金持ちになろうよ、と思いますね。そうすれば、お金をどうやって得たらよいのか、お金や経済の仕組みはどうなっているのか、そういう基本的なことをまず知ろうってことになるはず。
そこを放棄しながら、お金が欲しい、でも努力はしないというようなことだと、「お金がない→格差批判」……という負のスパイラルだけが残る。結局、そういう感情的な批判を利用しようとする政治家や扇動家に、知らないうちに消費されるだけなんです。
ソフトバンクと
ドコモのCMに見る
人々の「普通願望」
堀江 でも現実には、みんな洗脳されちゃってることなので、解決は難しいですよね。やっぱり普通の暮らしをしなきゃとか、周りと合わせなきゃっていう強迫観念が根付いてる。これはもう小学校の教育がそうなってるんで、恐らくそこに帰着していて。
日本の場合は明治以来、国家のための国民、つまり兵隊を養成するための教育をしていて、等しく平等に国を守る義務があると。兵隊っていうのは皆と同じ行動を取るのが基本なので、人と違うことをしちゃダメ。いまだに学校でそう教えてるから。
だから、社会人になったらスーツをビシッと着て、ネクタイ締めて、結婚して子供を2人くらいつくって、家と車を買って、子供たちを食べさせていかなければいけない、みたいな強迫観念にとらわれてしまう。それをやるためにはお金に困らないように……となるし、これをやってないやつは落ちこぼれだ、みたいな。
藤野 実はお金の話は全て、「僕らがどう生きるか」「どう生きたいか」という話が裏にある。格差の話も、何が幸せかって話ですよね。本来は、幸せの形っていろいろあって、お金があったら幸せかというと、必ずしもそうじゃない。
NTTドコモとソフトバンクのCMを比較して見ると面白くて。ドコモの「ドコモダケ」の家族って、おじいさんとおばあさんと、お父さんお母さんも日本人で、子供がいて、全員五体満足で、全員普通。そこに何の疑問もないのは、これが普通なのか?っていうことに対する疑いが何もなかったんだと思うんですね。でも実際には、日本人同士じゃない夫婦もあれば、親が1人のこともあるし、子供がいない家庭だってある。
一方ですごいなと思ったのは、ソフトバンクの「白戸家」のCM。お父さんが犬で、お兄さんは黒人で、イルカの親戚もいる。あれは孫(正義・ソフトバンク社長)さんの在日韓国人という出生も多分あって、「家族とは何か」「普通とは何か」っていう考えがあったんじゃないか。家族の形っていろいろあっていいでしょう?ってことだと思うから。
堀江 それは面白い視点ですね。