記事一覧:連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』97

  • 第二章 運命の日[第17回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第17回]

    2016年03月05日号  

    鷲津はうっすらと夜が明け始めた太平洋上空にいた。眼下には海が広がっている。日本電力(Jエナジー)を買収しようとした際に米国政府の不穏な動きを知り、一年余りをかけて、もう一度身辺のガードを徹底した。その間、目立った動きも控えた。

  • 第一章 崩壊前夜[第16回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第16回]

    2016年02月27日号  

    タクシーがノイバイ国際空港に到着したと同時に、湯河の携帯電話が鳴った。またか。資源エネルギー庁次長の植田だ。無視してやろうかとも思ったが、そういう時に限って重大事であったりする。「湯河です」せめてもの抵抗で、留守電メッセージに切り換わる寸前に応対した。 「帰国は不要だ」 思わず、聞き返した。

  • 第一章 崩壊前夜[第15回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第15回]

    2016年02月20日号  

    経団連会館の廊下を歩きながら、鷲津は昨夜の電話について考えていた。どうやって調べたのか、濱尾本人が鷲津の携帯電話に直接かけてきて、「明日、お会いする時間を戴けないか」と言われた。何の用かと返すと「あなたが今、画策しておられる案件についてです」とだけ告げられた。しらばっくれても無駄だと判断して、濱尾と会うことにしたのだった。

  • 第一章 崩壊前夜[第14回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第14回]

    2016年02月13日号  

    次に見覚えのある記者を指名した。どこかで見た顔だが、誰かが思い出せない。「日本通信の八島です。日本電力(Jエナジー)を狙っているのは、あなたではないんですか、鷲津さん」今日の俺はどうかしている。よりによって、こんなくそったれを失念してたなんて。

  • 第一章 崩壊前夜[第13回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第13回]

    2016年02月06日号  

    「計器類のデジタル化は考えていないんですか」 気まずいムードを破りたくて、北村が尋ねた。「今のところはありませんね。念のために申し上げますが、デジタルが万能なわけではありません。たとえば、中央制御室の計器類は電気がなければ作動しませんが、原発内にあるバルブや圧力関係の計器の中には、最新鋭のデジタル装置を備えた六号機でさえも、停電時は手動で計測できるアナログタイプを使用しているところがあります。また、見た目は古めかしいかも知れませんが、たとえば、」

  • 第一章 崩壊前夜[第12回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第12回]

    2016年01月30日号  

    芝野の断言が、湯河には引っかかった。「鷲津氏の行動はすべてお見通しかのように聞こえますが」「まさか。それができれば、私は鷲津キラーとして大儲けできますよ。鷲津政彦という男と一戦を交えたことがあれば、誰でも知っていることを話したまでです」

  • 第一章 崩壊前夜[第11回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第11回]

    2016年01月23日号  

    「鷲津さん、気を悪くしないで戴きたいのですが、さすがにそれだけの額の増資を即決する権限は私にはありません」賀一華率いる上海プレミアムファンド(SPF)による日本電力(Jエナジー)株大量取得に対抗する措置について、社長の竹原は額に汗を滲ませながら言った。

  • 第一章 崩壊前夜[第10回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第10回]

    2016年01月16日号  

    「ニントゥアン第一原子力発電所については、ロシアにお願いすることが正式に決まりました」それを聞いた途端、湯河は思考停止に陥った。我々は、こんな残酷な通告を聞くために呼ばれたというのか。「逆転できる可能性はあるんですよね」芝野はやけに落ち着いている。

  • 第一章 崩壊前夜[第9回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第9回]

    2016年01月09日号  

    鷲津率いるサムライ・キャピタル一行は、社長室に案内された。電力会社のトップの部屋としては、地味で殺風景な部屋だ。迎え入れた竹原宗一郎社長も、地味で印象の薄い人物だった。もちろん、出先からもどったばかりというふうにも見えなかった。短身で恰幅の良い竹原は、黒縁めがねの奥で、鷲津を吟味してから名刺を差し出した。

  • 第一章 崩壊前夜[第8回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第8回]

    2015年12月26日号  

    大会議室(ウォールーム)には、日本電力(Jエナジー)買収チームのメンバー全員が顔を揃えていた。アンソニー一人が部屋の隅で携帯電話で通話中だった。話す声に苛立ちが滲んでいる。

  • 第一章 崩壊前夜[第7回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第7回]

    2015年12月19日号  

    「よし、あかね! イケぇ~」フィールドを疾走する萩本あかねに向かって、郷浦秀樹は拳を振り回した。一〇月に開催された内定者の懇親会で、磐前県への女子サッカー応援旅行があると聞いて、秀樹はその場で参加を決めた。秀樹は高校までサッカー部で、大学に入ってからはサークルでサッカーを続けた。残念ながら、首都電力には男子サッカーチームがないのだが、女子はなかなかの活躍を見せている。

  • 第一章 崩壊前夜[第6回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第6回]

    2015年12月12日号  

    ベトナム原発プラント輸出日本交渉団は、ヒルトン・ハノイ・オペラに投宿している。同ホテルは、ハノイの商業地区の一つであるバディン区にあるが、市街地では珍しい閑静なエリアだった。フランス統治時代に建てられたオペラハウスと隣接していることにちなんで、その雰囲気をホテルも踏襲している。

  • 第一章 崩壊前夜[第5回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第5回]

    2015年12月05日号  

    ベトナムが暑いというのは、思い込みだった。朝、ホテルの周囲を散歩していた芝野は、薄着だったことを後悔した。ベトナムの国土は南北に細長く延びている。総延長は約一六五〇キロメートルで、その形は、どことなく日本列島にも似ている。地形の関係で温帯から熱帯まであるのだが、芝野でなくても「暑い」というイメージがある。

  • 第一章 崩壊前夜[第4回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第4回]

    2015年11月28日号  

    投資ファンド、サムライ・キャピタルの本社は、東京都千代田区大手町の大手町ファーストスクエア・イーストタワー二一階にある。M&A(企業の合併・買収)に特化した投資ファンドとしては、日本最大の投資額を誇るが、社員は一〇〇人に満たない。少数精鋭なのは、鷲津が「それ以上は、社員の顔や性格を把握できない」からだ。

  • プロローグ(承前)[第3回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    プロローグ(承前)[第3回]

    2015年11月21日号  

    退屈で死にそうだった。ハドソン川上流の古城風ホテル“鷲の巣城”に、鷲津政彦は既に二ケ月も滞在し、無聊な日々を送っている。この日も、昼近くに起きると遅い朝食を摂り、ポロシャツにジーパンという適当な服装で、敷地内の広大な庭を散歩した。

  • プロローグ(承前)[第2回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    プロローグ(承前)[第2回]

    2015年11月14日号  

    「加地さん、つまり私に、ベトナムへの原発プラント輸出交渉で要の役をやれと?」「その通り。政府代表として、日本チームを纏めるだけではなく、厄介なハードネゴシエーターであるベトナム政府とやり合って欲しいんです」とんでもないビッグプロジェクトだった。そもそもなんで、こんな国家プロジェクトに買収ファンドが絡むのかが解せなかった。

  • プロローグ[第1回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    プロローグ[第1回]

    2015年11月07日号  

    生きながら鬼といはれりゃ死んだ後 仏となりいてうめあはせせむ 郷浦秀樹(ごうのうら・ひでき)は、その歌に釘付けになった。「ヤバかぁー!」郷土の英雄と知られる人物の自伝の中の一語に、秀樹はつい方言(おさとことば)を漏らした。

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記者の目

  • 編集長 深澤 献

    電気自動車は欲しいけれど……

    もう20年以上前の話ですが、高速道路を運転中、急にエンジンが止まり、慌てて路肩に緊急停車したことがあります。原因はダイナモ(発電機)の故障。JAFの救援を受けました。  次の高速出口までけん引してもらったのですが、車って〝停電〟すると不便ですね。当時は珍しいデジタル表示だったスピードメーターは真っ暗なまま。ステアリングもブレーキもパワーアシストがないから重いのなんの、運転しにくいことこの上ない。  極め付きは料金所。けん引されていても料金を払うのは仕方ないとしても、電気がないとパワーウインドーが開かない。ドアを開け、一度外に出るしかありませんでした。電気自動車、欲しいけど壊れたときが心配です。

  • 副編集長 浅島亮子

    中国で説明できるEVシフト

    電気自動車(EV)シフトの波は3者がつくりました。①自国の自動車産業を世界一にしたい中国、②ディーゼル不正をEVで挽回したい独フォルクスワーゲン(VW)、③ベンチャーを卒業したい米テスラがそうです。  では次の展開はどうなるか。VWもテスラも照準を定めているのは中国です。ちなみに、テスラの筆頭株主は中国ITジャイアントのテンセント。自動運転や人工知能など新技術を持つベンチャーに多数投資している企業です。  結局、産業界で起きるゲームチェンジが中国で説明できてしまうことに、今更ながら恐れを覚えます。過去最悪販売を記録した3カ月前の「中国特集」をどう反省すれば興味を持っていただけるのか、悩みは深いです。

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