記事一覧:コラム2379件
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
デジタル化がもたらす変化と 超実力主義社会の到来を説く
2015年2月14日号3年前、世界中で『大停滞』という本が話題になった。その続編『大格差』は、現在進行中の“仕事のデジタル化”が、労働、雇用、経済、社会などに対してどのような影響を及ぼすのかについて解説する。まず事実として、1970年代以来、米国企業の労働分配率は減少しており、家計の平均収入は低下する一方で、富の集中は進んでいる(このことは別の著者による『機械との競争』〈日経BP社〉でも指摘されている。2013年5月18日号の本誌の書評欄で紹介)。
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Book Reviews 知を磨く読書
日本の保守政治家のアジア観
2015年2月14日号『戦後70年 保守のアジア観』は朝日新聞元主筆の若宮啓文氏が、反省と歴史修正主義の間で揺れ動く日本の保守政治家のアジア観について掘り下げて考察した労作だ。例えば、田中角栄の中国観についてこう記す。〈「日米基軸」という基本路線はいささかも疑わない田中ではあったが、欧米という「表」に対する「裏」のアジアに、「越後」を重ねあわせたとしても不思議はない。国交正常化の前のこと、田中は細々と日中貿易をしていた人物に「中国を相手にあこぎなことをするな。あそこは貧乏だ。今夜の飯を食うのにも必死だ。金持ちから儲けろ」と忠告したことがあったという。ここにも「裏」の親近感が読みとれる。のちに安倍晋三が田中以来の「日中友好」のあり方に批判を向けるとき、そこには日本を脅かすほどの中国経済の急進展が背景にある。田中の見ることのなかった時代の到来である〉。国際社会の「裏」のプレーヤーでしかなかった中国が「表」に出てきて既存のルールを変更しようとするので、日中関係が緊張しているのだ。
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From Readers From Editors
From Readers From Editors
2015年2月7日号20世紀は石油の世紀といわれますが、21世紀に入ってもそれは続いています。世界の政治経済を振り回す陰の主役である“黒い水”。その正体に迫るべく、今回の特集を作りました。子供のころには、やがて石油は枯渇し、太陽光などのクリーンエネルギーに取って代わられると習ったはずですが、そんな気配はありません。それどころか、実需を超えた投機対象として巨額マネーが流れ込み存在感を増しています。
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Book Reviews オフタイムの楽しみ
【音楽・演劇・演芸】 インターネット時代の エンターテインメント
2015年2月7日号個人が作品を発表できるウェブサイトが増え、誰もがクリエーターになり得る時代が来た。その代表である「ニコニコ動画」というメディア、創作プラットフォームで貫かれる哲学について考えさせられたのが『ニコニコ哲学』。例えば、テクノロジーを駆使してエンターテインメントをつくるニコニコ動画は「仮面ライダーの世界観に近い」、つまり「テクノロジーを使って人間性を追求する」と説明する。こうした奥深くて面白い話が盛りだくさんだ。
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Book Reviews 目利きのお気に入り
ジョブズ以上の狂気を持つ アップル躍進の真の立役者
2015年2月7日号アップル製品の秀美さに異論を唱える人はいないでしょう。スティーブ・ジョブズの狂気的なこだわりと理解されていますが、その裏には1人のデザイナーがおり、彼こそがアップル躍進の真の立役者でした。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
幕末からアベノミクスまで 英国人が洞察した日本通史
2015年2月7日号本書は、英語圏の知識層に対して「日本は皆さんが思っているほどお先真っ暗ではないですよ。何はともあれ、実情を知ってからご判断ください」と、1853年の黒船来航以来の日本社会と経済の歩みをトレースし、分析した日本論である。著者は、日本に6年8カ月滞在してこの国をこよなく愛するようになった英国人のジャーナリストだ。精力的な取材に加え、大変な勉強と研究を重ねていることから、その通りとうなずく指摘が多い。
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Book Reviews 知を磨く読書
敵意を増大させる過剰な警戒
2015年2月7日号1月7日、フランスのパリで発生した連続テロは、今後の国際秩序を変容させる大事件だ。このテロにシリアとイラクの一部地域を実効支配しているイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が関与していることは間違いない。池内恵氏の『イスラーム国の衝撃』は、この「国」の起源、影響、今後の展望について知るための基本書だ。特にグローバル・ジハード論に関する分析に説得力がある。日本の地域研究者にありがちな研究対象となる国家、地域、宗教、文化などに対する過剰な共感から、特定の政治的立場を主張するというようなわなに池内氏は陥っていない。
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From Readers From Editors
From Readers From Editors
2015年1月31日号昔から数学が苦手で、ずっと文系の道を歩んできた私は、「統計学」など一生使わないだろうと思っていました。それが統計学の特集を作ることになるとは……。数式を駆使して難しい分析をするのが統計学だと思い込んでいた私は、統計家・西内啓さんの一言で目からうろこが落ちました。「統計学とは人間の行動の因果関係を洞察するものだ」。統計学が人間を相手にするのなら自分にもできる。そう思えた瞬間でした。
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Book Reviews オフタイムの楽しみ
【健康・医療】 健康管理の新ツール 七大疾患の“新厄年”
2015年1月31日号赤ワインは動脈硬化の予防に効果的である、と実証して世界にその名を轟かせた医学博士の板倉弘重氏が、“新厄年”を提唱するのが『63歳で健康な人は、なぜ100歳まで元気なのか』。健康寿命を縮めるがん、脳血管疾患、虚血性心疾患、糖尿病、変形性膝関節症、骨粗しょう症、認知症の七大疾患に着目。約75万人のレセプト(診療報酬明細書)データを分析し、七大疾患の性別・年齢別発症率の上昇する年齢を割り出した。それが新厄年である。
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Book Reviews 目利きのお気に入り
5500円の価値は十分! 『21世紀の資本』読破の喜び
2015年1月31日号700ページ超、5500円の経済書にもかかわらず売れ続けている『21世紀の資本』。まだ購入をためらわれている方には、私なりの読み方をご披露させていただき、あらためてお薦めします。本書の主張はたった一つです。「インフレ率が2%で、資産運用利回りが5~7%とすると、金持ちの資産は永続的に拡大し、資産格差が広がる」。これだけ。付箋を張った箇所を抜き書きしてみると、何度も同じことが繰り返されているのに気が付きます。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
『大国の興亡』の仮説に反駁 「制度的な停滞」の謎に迫る
2015年1月31日号本書の主著者であるグレン・ハバードは、ブッシュ・シニア政権で財務省副次官補、後のブッシュ・ジュニア政権では大統領経済諮問委員長を務めた人物だ。「ブッシュ減税」で知られる、史上最大の減税策の提唱者としても有名である。いわば“経済ネオコン”の代表格である。アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した「インサイド・ジョブ」(2010年)では、リーマン・ショックの片棒を担いだ経済学者の1人としても紹介されている。
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Book Reviews 知を磨く読書
国際情勢における石油の役割
2015年1月31日号石油に関しては、埋蔵量をどうやって推定するのか、価格はどう決定されるのかなど、謎が多い。それだから種々の陰謀論が幅を利かせることになる。石油開発のプロである岩瀬昇氏の『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?』は、国際情勢における石油が果たしている役割を理解するための好著だ。
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From Readers From Editors
From Readers From Editors
2015年1月24日号「孫(まご)のお買い物って何?」──。実は特集タイトルはギリギリになって決めることが少なくありません。ただし、社内の文書や編集部内では、コードネームもどきを付けて、共有していくことになります。孫社長には大変申し訳ないのですが、今回は語感が良かったので「孫のお買い物」。社内の他部署ではてっきり高齢者を対象にした特集だと勘違いした人が続出しました。
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Book Reviews 著者のホンネ
カリスマなんて必要ない MITで教える起業手法
2015年1月24日号私も15年前は、起業家として生まれついたかどうかがキーだと考えていました。しかし今は、手法として学ぶことで起業家になれると確信しています。マサチューセッツ工科大学(MIT)で、生徒たちが起業家として羽ばたいていくのを毎週見ているからです。つまり、起業は体系的に教えられるのです。著書では起業に必要な手法を24のステップに分けて説明しています。
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Book Reviews オフタイムの楽しみ
【旅行・乗り物】 「そうだ京都、行こう。」 古都の魅力を再認識する3冊
2015年1月24日号JR東海のCM「そうだ京都、行こう。」が始まって20年になる。毎シーズン、京都の有名無名の場所を取り上げ、印象的なキャッチコピーでさりげなくその魅力を伝えてきた。それらを1冊の本に凝縮したのが『「そうだ京都、行こう。」の20年』。
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Book Reviews 目利きのお気に入り
ブラックボックス解体に挑む 酒蔵の経営改革物語
2015年1月24日号1を100にするよりも、0を1にする方が難しい。だが、そこにこそやりがいがある。こんな思いで設立された出版社から、自らが学ぶためでもあるように刊行されたのが『ものづくりの理想郷』。和歌山にある酒蔵の後継者の経営改革物語。ベンチャー企業に勤め、実家に戻って10年。「杜氏という名のブラックボックスの解体」に挑みます。“最高製造責任者”である杜氏の自負とそれ故の内向きさ。社長といえども介入できない杜氏次第の経営リスク。後継者は、だからこそ外に目を向け、独自ブランドを確立しようと杜氏たちに新たなものづくりを提案します。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
世界が注視する天才投資家の 「頭の中」をのぞいてみよう
2015年1月24日号「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」 採用試験の時に、ピーター・ティールは、必ずそう聞くのだそうだ。評者など、いまさら米国のシリコンバレーで働いてみる意欲も能力もないが、伝説のベンチャー投資家の目の前に立ってみたいという気持ちなら、少しだけある。
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Book Reviews 知を磨く読書
増税なき成長路線は不可能
2015年1月24日号掛け声だけで成果が出ないアベノミクスの陰で、日本の財政危機が深刻化している。元財務官僚で法政大学准教授の小黒一正氏は『財政危機の深層』で、増税なき成長路線は不可能と断言する。
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From Readers From Editors
From Readers From Editors
2015年1月17日号新年早々、楽屋ネタで恐縮ですが、年末の企画会議では、いつも“神経戦”が繰り広げられます。テーマは、誰が年明け第1号の特集を担当するか。正月明けすぐの締め切りになるため、休みが吹っ飛ぶ可能性が大。そのため、会議では「私は去年担当した」「俺は○年連続でやったぞ」などというアピール合戦が繰り広げられるのです。
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Book Reviews 著者のホンネ
政治改革の断行なくして 李コノミクスは成功しない
2015年1月17日号以前から、日本で出版されている中国に関する本は、議論が少し偏っているものが多いと感じていました。また、仕事で政治家や官僚、企業の方々に講演をすることも多いのですが、意外と中国に関する基本的なことが知られていないということも感じていました。