記事一覧:コラム2379件
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Book Reviews 知を磨く読書
テロ対策、特攻の現実
2015年9月12日号国際テロリズム対策の第一人者である警察庁外事情報部長の松本光弘氏による最新刊『イスラム聖戦テロの脅威』は、この分野の書籍で最も水準が高い。国際基準によるテロ対策について、松本氏は、〈ロンドン警視庁は、自爆テロ容疑者を警告なしで射殺する政策を採っている。起爆を防ぐため、最初から脳幹部を狙う。二〇〇五年七月、相次ぐテロへの対応に追われるロンドン警視庁は、無実の青年を誤認射殺してしまった。それでも依然、本政策を維持している。/暗殺を法的に正当化する試みの一つが「戦闘員」の法理である。戦争の一環だと捉えれば、正当な殺害対象になりうるとする。/犯行阻止に加え、将来的な抑止目的でも暗殺を行ってきたイスラエルは、暗殺を「焦点先制」と呼んで法的に正当化する。武器供給商人や科学者までも暗殺している〉と記す。
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From Readers From Editors
From Readers From Editors
2015年9月5日号世界中の市場で吹き荒れた、リスク回避の“大嵐”。投資家が株式市場から逃げ出し、安全資産とされる円に買いが殺到するなど、パニックに襲われました。
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Book Reviews オフタイムの楽しみ
【ミステリー】 日本を舞台としたスパイ小説 富士山噴火パニックの迫真
2015年9月5日号曽根圭介『工作名 カサンドラ』は現代日本を舞台にしたスパイ小説だ。奥多摩山中で発見された死体の謎を追う警察官・荻大二郎のパートと、自衛隊を追われた佐々岡啓志のパートが並行して描かれるが、当然これがうねるように絡み合っていく。こういうことが現実にあっても全然不思議ではない、というリアル感が全編を貫いているのがキモ。江戸川乱歩賞受賞作の『沈底魚』以来のスパイものだが、緊迫感たっぷりに読ませて飽きさせない。
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Book Reviews 目利きのお気に入り
魂を奮い起こしてくれる 大いに納得の営業本3冊
2015年9月5日号私事ですが、南池袋に東京天狼院書店を開店したとき、近所の理美容院に雑誌配達のローラー営業をかけました。しかし、理美容院向けに割引価格で雑誌を売る専門卸があることを知り、あえなく撤退。でもローラー営業で一つ賢くなったのは幸いでした。『トップセールスはお客さまの何を見ているのか?』は、書名通り、トップセールスマンが飛び込み営業の際に、瞬時に客の属性や営業をかけるべき会社かどうかを見抜く秘伝の数々を紹介します。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
昭和陸軍を戦略構想から読む “戦後70年”にふさわしい力作
2015年9月5日号日中戦争は、私の祖父も従軍した戦争である。彼は傷痍軍人となったが、幸いにして生還することができた。生前、戦争について多くを語ることはなかったが、一度だけ、中国の地図を広げて、孫たちに自分がどこで戦ったのかを語ってくれたことがある。ただ、なぜ自分たちが応召され、何を目的として戦ったのか、本人もどれほど理解していたか分からなかったし、こちらも聞く機会を逸してしまった。
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Book Reviews 知を磨く読書
集団的自衛権への欲念
2015年9月5日号新進気鋭の憲法学者として、首都大学東京法学系准教授の木村草太氏は、『集団的自衛権はなぜ違憲なのか』において、感情に流されず、この問題の経緯を理論的に丁寧に追究している。昨年7月1日の集団的自衛権を部分的に容認した閣議決定の性格についてこう分析する。
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From Readers From Editors
From Readers From Editors
2015年8月29日号どこかに先に書かれるんじゃないか──。特ダネをつかんだ瞬間、高揚感に酔いしれると同時に、えも言われぬ不安感に襲われるのが記者の常です。週1回の締め切りで勝負する経済誌ともなれば、不安感の方がどうしても勝ってしまいます。今号の特集は、担当記者がつかんだ、飲料業界の二つの大きな“ネタ”が起点です。詳細は誌面に譲りますが、辛抱強く長期間にわたって裏取りに注力。担当デスクが、ストレートニュースとしてではなく、経済誌ならではの視点と料理法でストーリーの中に組み込みました。
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This is.
FEST 2015 最新のビジネスとテクノロジーを体感・体験
2015年8月29日号日本マイクロソフトが年に1度開催する最大のフラッグシップイベントが、9月2日から9月4日までの3日間、ザ・プリンス パークタワー東京で行われる。従来のイベントを発展・統合し、イベントは新たに「FEST」と名付けられた。
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Book Reviews オフタイムの楽しみ
【映画(DVD)】 リアリティの裏に深い洞察 イーストウッド作と上質ドラマ
2015年8月29日号『アメリカン・スナイパー』──狙撃手(スナイパー)は特異な兵士だ。引き金を引くとき、彼は誰の命令も受けない。全て自己責任だ。冒頭、自爆テロの爆薬を隠し持っているらしい子供がスコープの中に現れる。本当に上着の下に爆弾があるのか。撃つべきかどうか。決断は……。
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Book Reviews 目利きのお気に入り
生産性が自然と上がる働き方 付箋が増える値決めの戦略本
2015年8月29日号今月は、いつにも増して自信を持ってお薦めできる3冊。まずは、『ワーク・ルールズ!』。グーグルの人事担当上級副社長が、同社の採用、育成、評価、福利厚生の全てを明らかにします。著者自身が、「あらゆる企業の人の扱いに影響を与えたい」と入社し、6000人から6万人に拡大する過程で構築した人事システムは、「心地よく働ければ生産性は自ずと向上する」の一点に集約されます。現場への権限委譲はイノベーションの源泉。課題となったテーマは徹底的に検証し、数値化する。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
意思決定で読み違いを減らし 妥当な判断を行うためのコツ
2015年8月29日号2014年11月18日に、翌15年10月から予定されていた“消費税の再増税”が延期された。その決定の前日に公表された7~9月のGDPは、前月比▲0.4%であった。しかし、GDPは公表から21日後の12月8日に▲0.5%に、さらに91日後の15年2月16日には▲0.6%へ下方修正された。一連の意思決定に影響を与えたのは、▲0.4%とする情報である。速報値と後に加工された確定値との間に潜むギャップが、しばしば意思決定の場で読み違いを引き起こす可能性があるとすれば、実務者もその対策が必須になるだろう。
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Book Reviews 知を磨く読書
日本政治を正しく理解する
2015年8月29日号『安倍政権を笑い倒す』で、佐高信氏は、安倍晋三首相の特徴について、〈自分の弱い部分をさらけ出せない人、隠して、虚飾のベールで覆って、自分を実像より大きく見せたがる人は、自分でも気づかないうちに、自意識をどんどん肥大化させていく。人からバカにされたくないから、虚勢を張り、威圧的な態度を取る〉と評する。安倍氏だけでなく、現政権を支える自民党の政治家や高級官僚にも共通する特徴だ。弱いが故に虚勢を張っているのだ。
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From Readers From Editors
From Readers From Editors
2015年8月22日号11年前、経済誌としては珍しく教育問題を取り上げました。特集タイトルは今号と同じく、「息子・娘を入れたい学校」。当時、トヨタ自動車などが中高一貫校の設立に動きだすなど、経済界ではあるべき人材育成に大きな関心が寄せられていた時期。受験雑誌ではできない視点を打ち出そうという意気込みがありました。
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Book Reviews オフタイムの楽しみ
【科学読み物】 昆虫採集は科学の始まり 自然の造形に感動し考える
2015年8月22日号日本の科学界の将来はどうなるのかと思ってしまう。何しろ昆虫の写真を表紙に使った学習ノートが敬遠されるご時世なのだ。虫を捕まえ、観察して得る感動は、少年少女の手で自然科学の扉を開ける行為に他ならない。多くの科学者は昆虫採集に親しんで成長している。
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Book Reviews 目利きのお気に入り
希望が持てる国の基礎固め 前向きに暮らすための心得
2015年8月22日号新進の社会学者・古市憲寿さんのこれまでの著作(例えば『誰も戦争を教えてくれなかった』等々)には、その切り口の良さ故に苦手さも感じていたのですが、『保育園義務教育化』では、見識の深さに心底驚かされました。
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Book Reviews 私の「イチオシ収穫本」
停滞の原因はデフレにあらず “経済体制の転換”が鍵を握る
2015年8月22日号戦後経済史というタイトルでありながら、戦前と戦後の断絶は大きなものではなかった、と本書はいう。総力戦に対応するための総動員体制は、戦後になっても継続していた。焼け跡からの復興にそれが見事に役立ったのが高度経済成長であり、過剰適応によって時代の転換に乗り遅れたのが「失われた20年」であった。その根本を変えないアベノミクスには、何一つ期待できない。むしろ、症状を和らげることで病因を深化させている。それが、著者の主張である。
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Book Reviews 知を磨く読書
ドイツとロシアの接近
2015年8月22日号「影のCIA」と呼ばれるジョージ・フリードマン氏の近未来分析は定評がある。『新・100年予測』では、ドイツ分析が重視されている。〈ドイツはEUの維持、発展に力を尽くしている。(中略)ドイツは深刻な問題を抱えている。EUが何らかの理由で失敗し、ヨーロッパ内に貿易の障壁が復活するようなことがあれば、輸出依存度の極めて高いドイツの経済は深刻な危機に直面する。ドイツにとってEUは決して失敗してはならないものということになるが、ドイツがどこまでEUを思いどおりに制御できるかはわからない。EUがもし失敗すれば、あるいは失敗しないまでも長期にわたる大きな問題を抱えることになれば、ドイツはEU諸国に代わる新たな相手と経済関係を築いていかねばならない〉。
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From Readers From Editors
From Readers From Editors
2015年8月8日号煩悩の数である108にするか、末広がりでめでたい88にするか。お盆の合併号となる今号の特集は、数で頭を悩ませました。せっかく家族が顔を合わせるときだからこそ、話し合っておいた方がいいテーマがあるはず。そう考えてまず浮かんだのが、幾つ項目を立てるかでした。
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Book Reviews オフタイムの楽しみ
【子育て・教育】 子どもたちに身に付けさせたい 時代をたくましく生き抜く力
2015年8月8日号これからの時代を生き抜く力を身に付けさせたいと考えるときに、佐藤優氏に、いつか学校を創ってほしいと願う人は多いのではないか。『超したたか勉強術』は、英国の歴史教科書に学ぶ形で、たくましい「思考の鋳型」を身に付ける具体策を示す。本書を読んで、私もすぐに英国の歴史教科書を注文した。これまでの日本の歴史教科書が、信頼できる知識と教養を与えてくれたのは確かだが、なるほど、こういう思考訓練は求めてこなかった。
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Book Reviews 目利きのお気に入り
闇の共鳴と日本文化への傾倒 2冊の「2人の物語」の迫真
2015年8月8日号『佐治敬三と開高健 最強のふたり』が売れています。寿屋宣伝部とトリスバーの時代を知る読者には、「何を今更」でしょう。しかし本書は、よく知られた事実の裏にある2人の「闇」の共鳴こそが夢の光芒を放ったことを明らかにします。