新薬が生まれない。候補品は相次ぎ開発中止。M&Aでは振られっ放し。買収後にマネジメントし切れない。13年度業績は4年ぶりの営業増益となったが、利益額は業績がピークだった06年度の3分の1以下だ。
そんな中で、大型4製品の一つ、アクトスに異常事態が発生した。発がんリスクがあることを隠していたとして、米連邦地裁が4月に武田に60億㌦の賠償を命じる陪審評決を出したのだ。武田の成長を支えてきた製品が一転、大きなリスク材料に転じた。評決は判決ではなく、賠償が決まったわけではない。長谷川社長は「あらゆる法的手段をもって争う」としている。
負のスパイラルにはまる中で長谷川社長が下す経営判断は、外から見て過激だったり、異様なものに映った。批判を浴びる「孤独な社長」の脇を固める主要幹部は外国人や外資系出身者たち。グローバルの市場と経営を知る彼らは、理解者でいてくれた。
5月中旬、兵庫の地に長谷川社長とウェバー氏の姿があった。武田の創業家の本家筋を訪ね、13年度の業績を報告してウェバー氏を紹介するためだ。
お家騒動にしたくない本家は表だって現体制を批判せず、静観してきた。訪ねてきた長谷川社長に対して、言葉を選びながらやんわりと経営への注意を促した。
もっとも、創業家一族で唯一、経営上層部に残っている武田直久常勤監査役は、長谷川社長の持ち込む案件に何度も反対し、ナイコメッド買収にも猛反対していた。
そしてついに、OBと一部の創業家一族から反乱の狼煙が上がった。27日の株主総会は大荒れが予想される。
創業家・OBの反乱から
国内リストラの全貌まで
武田薬品の内実に迫る!
『週刊ダイヤモンド』6月28日号の巻頭特集は「病める製薬 王者タケダの暗雲」。国内製薬最大手である武田薬品工業の内実に迫りました。
武田が6月27日に開催する定時株主総会に向け、OBや創業家一族112人が連名で事前質問状を提出しました。その内容は海外企業のM&A、外国人幹部の登用で急速なグローバル化を推し進める現経営を糾弾するもの。外国人社長の就任にも反対しています。
「武田がどうもおかしい」。最近、業界人同士が会えば話題になるのが武田の異変。主要幹部が外国人で埋まり、新社長も外国人。すっかりグローバル企業へ変貌したようにも見えますが、業績は急降下。巨額買収した海外企業からの成果が見えず、世界で売ろうにも自社から新薬が出てこない。そして会社を去る社員、“ヤメ武田”が増えている――。
本特集では製薬会社の肝である研究所で密かに断行された首切りの全貌から、「第2のノバルティス」にも発展しかねない高血圧症薬にまつわる疑惑まで、「どうもおかしい」と囁かれる武田の真実に切り込みました。
アステラス製薬と第一三共の統合が次の有力候補とされる業界再編の最新動向もレポート。ヘルスケア産業は将来性が高いと言われますが、製薬会社、製薬産業が置かれている状況は決して甘いものではありません。